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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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117.進みだす力

 俺は店の前で、自分の作成した物を見上げていた。


「……このアーマー、デカくしすぎたな」

「そ、そうですね。主様の魔力が予想以上に強かったようで……」


 それは右腕に魔石の杵を取りつけた、大きなアーマーだった。

 どうせ作ったものだから、と載せられるものを全部載せしたら、


 ……まさか、三階建の家くらいにまでデカくなるとはなあ。

 

 元々でかかった《金剛》よりも五割増しくらいの大きさだよ。

 《金剛・カイ》と名付けるべきかね。というか、ちゃんと動くのか、これ。


「……一応、動作確認はしておくか」

「は、はい。お伴します」


 俺はサクラと共にアーマーに取り込まれ、一体化する。

 そして軽く手足を動かして、右腕に取りつけた杵を動かして、自分の動作を理解する。


「あー、意外と俊敏だな、これ」


 全くと言っていいほど、動きづらくはなかった。

 かなりの精密動作性があるんじゃないかな。


「まだまだ、主様の強化状態が続いているからだと思います」


 なるほどなあ。まあ、動きにくくないという事が分かっただけいいだろう。

 それでも、格納する時に大変なので、もっと小さく圧縮した方が良さそうな気がする。


 ……運用出来る場所も限られるしなあ。


 と、首をこきこき回していると、


「何あれー? お祭りの出しもの?」

「すげー! でけー!!」


 近場で、子供たちが目をキラキラさせて、見ていた。


「……」


 なんとなく、手足をもう一度動かして見せると、


「おー、これ動くの!」

「かっこいい!」


 見物人は物凄く絶賛しているようだ。

 というか、子供たちだけではなく、街の住人も目を大きく開けて、楽しそうに見ているし。


「……なんでこんな人気が出てるんだ?」

「いや、主様の造形が、かなり素晴らしいからだと思いますよ?」


 確かに、でっぷりアーマーが嫌だったので、所々に気を使ったけどさ。

 なんでこんなことで注目を浴びているんだか。


 ……まあ、敵意を感じる視線でもないし、数回動かしてから、店の中に格納してしまおうか。


 なんて思っていると、


「うん?」


 足元をくいっと引っ張る感触があった。

 見下ろすとそこには、火と水と土の三体の精霊たちがいた。


「なんだ、どうした?」


 店にいた筈なのに、いつの間に出てきたんだ。

 俺が首を傾げると、精霊たちはアーマーの足を引っ張りながら、


「しゃー」「ふうー」「すいー」


 もう片方の手で反対方向を指していた。

 そして、その方向に歩き始めた。


「えっと、付いてきてほしい、んですかね?」

「あれ? サクラは精霊たちが何を言ってるのか分かるのか?」

「いやまあ、なんとなくは理解できます。似たような存在ですので」


 そういや、サクラも精霊なんだよな。

 この頃は忘れていたけれどもさ。


「あはは、本当になんとなく、ですけれどね。それで、どうします?」


 そうだなあ。花火が上がる時間まで、もうちょっと時間を潰さなきゃいけないのは確かだ。


「ま、暇だし、ついていくか。動作確認ついでにちょっと歩くくらい良いだろ」

「はい。それじゃ、進みますね」


 そして、俺は精霊たちに引っ張られるようにして、彼らの後をついていくことにした。



 ディアネイアは執務室で、ヘスティと出会っていた。


「どうしたんだ、ヘスティ殿。急にここに来るなんて」

「ん……なんだか、街の外で、カレンの魔力がブレているのを感じた。何か知ってる?」

「む? カレン殿なら、アテナと共に、精霊を確保しに行ったっきりだが……」

「そう。念のため、アンネの付き添いを切り上げて、きた。けど、大丈夫だったかな」


 と、ヘスティと小さく呟くと同時、、


「お姉さま!」


 執務室の中央に、アテナが光と共に現れた。

 そして彼女は、ディアネイアの体に抱きついてくる。


「アテナ? というか、この光は緊急テレポート……?」


 非常事態でなければ使うなと教え込んでいた筈の魔法だ。

 それが使われたという事は、


「……アテナ。何かあったのか?!」


 ディアネイアは緊急だと判断するなり、直球で聞いた。

 すると、彼女は泣きそうな顔でディアネイアを見つめると、


「あ、あのね、お姉さま。た、助けて、欲しいことが」

「ああ、まずは落ち着いてくれ、アテナ。助けが欲しいのであれば、まずは冷静に事態を把握させてくれ。カレンや、王都の教育役にもそう教えてもらっただろう?」

 

 その言葉に、アテナはハッとして、深呼吸を一度した。そして、 


「か、カレンが、カレンが、精霊に乗っ取られそうになってて、暴走して、るの」


 アテナは息を乱して声を詰まらせながらも、必死に情報を伝えようとしてくる。


「暴走とは? どういう状態だ?」

「し、四大精霊が、ひとつになって、暴走してて。このままだと、街が危なくて。だから、その前に、精霊と戦って力を減らさなきゃいけないの……」

「四大精霊の暴走だと!?」


 ディアネイアは姫として、四大精霊の威力を記録で知っている。

 あれは都市数個を丸々覆える結界を張れるほどの魔力を持っている。

 それを攻撃に転用すれば、都市のひとつを破壊できるほどの力があるとも。


「ん、結構、不味い状況、になっているね……」


 話を聞いていたヘスティですらも、顔をしかめる。


「精霊の力を、抑える事は竜王でも出来る。だから、カレンの魔力が、ブレていたんだと、思う。でも、四大精霊がひとつにまとまっては……カレンだけじゃ、抑えきれないし、逆に取り込まれる」


 ヘスティは淡々と告げてくる。彼女は、カレンと付き合いの長い竜王だから、その辺りの事も分かるのだろう。

 

「早く、止めないと、カレンの体を使って、四大精霊は大暴れする。……ディアネイア、我、さっきの貸し、今返すよ」

「ああ、ありがとうへスティ殿! 今すぐ、止めに行くぞ」


 ディアネイアは即決すると、すぐさま隣室に控えていた騎士団長を呼んだ。


「騎士団長。事情は聞いていたな!?」

「はっ、盗み聞く形になってしまってすみません」

「いや、わざと声を大きくしていたのだから気にするな。……今から私たちは平原に出る。騎士団長は場内のものに連絡し、住民の避難誘導を頼む! 力が足りないようならアンネ殿に協力をして貰うように」

「はっ!」


 一息で指示をしながら、ディアネイアは装備を整えた。


「アテナ、座標を教えてくれ」

「う、うん」

「ヘスティ殿は私につかまってくれ」

「分かった」


「――行くぞ、《テレポート》」


 ディアネイアは一気に、現場に飛び込んだ。

 そして、テレポートした先にいたのは、


「グウウ……」


 理性など感じさせない瞳をして、全身から魔力を噴き出しながら歩く、カレンの姿だった。


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