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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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114.成長した精霊の力

 土の精霊は俺の店の床から、浮かびあがるように立ち上がった。そして、


「きしゃー」


 俺の脚にガッツリしがみついていた。その光景を見て、アテナはあんぐりと口を開けていた。


「あ、あの、ダイチお兄さん。どうやったら、そんなふうに精霊に従えられるの?」

「どうやったらって……特にどうもした覚えはないぞ。家の傍で襲ってきたから押さえつけただけだし」


 そこから、勝手に付いてきていただけだ。


「そ、そうだったんですか。で、ですが、明らかに他の四大精霊とはケタの違う魔力を感じるのですが……」

「か、カレンも感じていたんだね。この土の精霊、成長し過ぎだよ」


 アテナもカレンも二人して土の精霊に注目している。

 成長しているとかは、前の土の精霊を知らない俺からすると分からないんだけれど、


「とりあえず、こいつも連れていくのか?」

「あ、はい。このペンダントに納めさせてもらおうかと……」


 と、カレンが、ペンダントを手に土の精霊に近づこうとした瞬間、


「シャー……!」


 土の精霊の態度が変わった。

 なにやら警戒しているようで、カレンの手を払って逃れる。


「むう、成長したことで大分気性が荒くなっているようですね。力を認めたダイチ以外に触られたくないようです」

「そういうこともあるんだな」


 カレンの言葉の通り、土の精霊の体はとげとげしく変化していた。


「ただ、私たちも引くわけにはいかないから。土の精霊さんには悪いけど、力を貰わないと……」


 アテナはじりじりと近づいていく。

 その距離が縮まるごとに、土の精霊はトゲトゲしさを増していく。

 更に、土の精霊が同化していた俺の店の床もトゲのように変化しそうになるが、流石にそれはやり過ぎだ。


「おい。一応言っておくが、……俺の店で暴れて、中を壊そうとするなよ?」


 念のため、強めに声を出して釘を刺した。瞬間、


「し、しゃー!?」

「ひっ、ひゃい!」


 土の精霊のそのとげとげしい状態を解除し、アテナはその場でへたりこんでしまった。

 変な争いの空気は無くなったようだけど、


「あれ、アテナ? どうした?」


 まさか声をかけただけで、尻もちをつくとは思わなかったんだが。


「う、うん、なんだか、ダイチお兄さんから出る魔力の波動に押し潰されちゃっただけだから。気を抜いていた私が悪いんだし、へ、平気。そ、そうだよね、カレン」

「だ……大丈夫です」


 見れば、カレンですら、警戒の姿勢を取って室内の壁に張り付いていた。

 

 そういえば強く声を出してしまうと魔力の渦か何かが出るんだっけか。

 久々過ぎて忘れていた。


「まあいいか。精霊も大人しくなったし、カレン、さっさとやっちまってくれ」

「は、はい」


 カレンはペンダントを取りだして、もう一度土の精霊に近づいた。

 今度は土の精霊も敵意を見せることなく、自分の体を分裂させながら待っていた。

 分霊を作っているのだろう。


 そして土の精霊はペンダントの中に戻っていった……のだが、

 

「……なんか、火とか水とかと比べて、分霊のサイズがでかいんだけど」


 土の精霊が作った分霊は、元の体の半分以上の大きさがあった。

 むしろこっちが本体なんじゃないかと思うくらいだ。


「これで、いいのか?」

「ええと、大丈夫……です。というか土の精霊の力が強すぎて、ペンダントに入りきらなかったんです。だから、大部分を分霊として残して貰っている感じですね」


 強すぎて入りきらないとか、そんな事があるのか。

 土の精霊を見ると、言葉を理解しているのか、うんうん頷いているし。


「ペンダントにも許容量みたい数値が設定されているのか?」

「ええ、一応、容量はかなり多い筈なんですけれどね。この土の精霊が成長しすぎているようで。どこかで魔力を大量の取り込んだのでしょうけれども……」


 もしかしたらウチの地下にいた時の影響だろうか。

 あそこで成長しまくったのかもしれない。


「それでペンダントの機能の方に、問題は無いのか?」

「そこに関しては全く問題ないです。ダイチが土の精霊を従えてくれているお陰で、気遣いつつ力を注いでくれたので」

「しゃー」


 カレンの言葉に、土の精霊が頷きながら手を振った。

 意外と言葉が通じるらしいな。


「ともあれ、今回も本当にありがとうございます。お陰さまであっという間に精霊が集まりました」

「俺のは、殆んど偶然だけどな」

「ううん、それでも、ダイチお兄さんがいてくれた幸運と、ダイチお兄さんには感謝してもし足りないから。……あとで、私も頑張ってお礼するから、待っててね」


 そう言って、アテナとカレンは店を去っていった。

 朝から忙しい二人だったが、良い眠気覚ましにはなったな。


「さて、俺も最終日の準備を始めるかね」


 もう祭りも三日目だ。最後の一日を楽しむことにしよう。


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