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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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113.縁の下にいるモノ

 昨日は飲酒の効果もあってか、早めに寝てしまった。だからか、今日は少しだけ早めに起きることが出来て、朝からジュースの仕込みに入ることが出来た。


 リンゴは二日目で大分消費したと思っていたのだが、思った以上に減りは少なく、まだまだ千個以上は残っていた。


 ……これは今日だけじゃ捌ききれんなあ。


 なんて思っていると、


「こんにちわー。ダイチお兄さん」

 

 アテナとカレンが来た。

 二日目と比べると早い到着だが、起きているので問題ない。

 そのまま二人を居住スペースに入れると、


「本当にたびたび訪問してしまってすみません。ひとまず、昨日に用意できた分の賞金があるので、受け取ってください」


 なんて言いながら、カレンは懐から革袋を渡してきた。

 中には金ではなく、色とりどりの石が入っていた。


「これは……?」

「魔力のこもった宝石……魔石の一種ですね。精霊を集める過程で色々回った時に採取したものなのです。金銭に変換する事も出来ますので、ひと先ずはこれを、と。すみません、粗雑なもので」

「ああ、いや、大丈夫だ」


 というか、元々報酬を求める気は無かったんだしな。貰えるものだから貰ってしまったけれどもさ。


「それで、カレンもアテナも水の精霊を取りに来たってことでいいんだよな?」

「はい。お話が早くて助かります。どちらにいますか?」

「キッチンの流しだ」


 言いながら、キッチンの方を見ると、


「すいー」


 水の精霊は流しの蛇口部分に半分同化していた。

 今朝、精霊が爆睡から目覚めてからずっと、あの位置にいる。


 あんな状態でも水は流せるし、むしろめちゃくちゃ綺麗な水が出てくるので、浄水器か何かだと思っているけれど。


「み、水の精霊が自発的かつ、献身的に動くなんて。……ダイチの力に完全に従属したのですね」

「そういうものなのか?」

「ええ、まあ。水の精霊は風の精霊の次に気まぐれで、奔放なので」


 奔放な部分は分かる気がする。

 普通に酒盛りしていたら紛れ込んでくるくらいの奴だし。


「と、ともあれ、ペンダントに戻ってもらっても大丈夫でしょうかね」

「その辺は好きにやってくれ」

「あ、ありがとうございます。では、少し近づかせて貰って、と」


 カレンは蛇口の方に向かいながら胸元のペンダントを取りだした。

 水の精霊はそのペンダントを見ると、しばらく何かを考えるかのように目を瞑り、そして、


「すいー」


 自分の体を水に同化させてから、半分に分けた。

 そして、半分だけがペンダントに触れて取りこまれていった。


「また、分霊を作ったようですよ、ダイチ」

「みたいだな」


 まあ、ウチの店に害がないんならそれでいいさ。

 それよりも気になるのは、


「そのペンダント、昨日は火の精霊を入れていたのに、水の精霊も入るんだな」

「ああ、はい。このペンダントは精霊を一つの力に纏める仕組みなので。四大精霊は全て入るのです」


 なるほど。便利な仕組みだな。


「力がひとつにまとまっているからこそ、一度逃げられると危険ですし。回収も今のように大変なことになるのですが……ダイチのお陰でここまで早く解決できるのは有難い限りです」

「うん、本当にありがとう、ダイチお兄さん」


 二人して礼を言ってくるけれども、俺は精霊の問題を解決する為に祭りにきている訳じゃないんだけどな。まあ、いいか。


「これで今日の要件は終わりか?」

「あ、はい。この後は土の精霊と風の精霊を見つけるために動こうかと」

「そうか。頑張れよ。俺はここでジュース売ってるから、気になったら飲みに来てくれ」

「うん、分かったよ、ダイチお兄さ……え?」


 言葉の途中で、アテナはこちらを見て、目を丸くしていた。


「どうした?」

「い、いや、あの、ダイチお兄さんの足元にいる、それは?」

「足元……?」


 俺が視線を落とすと、俺の足首にしがみついている半透明の人型精霊がいた。

 茶色っぽい色をした、これには見覚えがある。


 俺の家の地下で捉えて、そのあとリリースした精霊だが、


「いつの間にか、ついてきていたのか?」

「……しゃー」


 目を凝らしてみれば、床に同化している。

 今まで、気付かなかったのはそのせいか。

 精霊というのはモノに混じると良く見えなくなるから、結構困りものだが、それはともかく、


 ……半透明に、茶色か。


 これまで見てきた四大精霊の姿と見比べてみると、どことなく似ている気もする。

 そして、目の前のアテナとカレンは目を見開いて、俺の足元を見ている。


 この流れは、もしかすると、あれか。


「なあ、アテナ。こいつって、見覚えあるのか?」

「う、うん! だ、だって、それ、土の精霊だもん!」

「ああ、やっぱり」


 どうやら俺は、土の精霊も既にとらえていたようである。


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