110.賑やかな参加者
時刻は夜になり、店を閉める時間になった。
あれから人狼と飛竜たちがまた来てジュースを買って行ったり、騎士団長が若手をひきつれて注文してきたりで、かなりの量が売れた。
……というか、売れ過ぎだ。あいつら、調子よく買い過ぎだろ……。
多めに作って置いたジュースの在庫が全部はけてしまった。
実際、とてもありがたいことではあるし、喜ばしいのだけどさ、
「この金の在庫、どうしよ」
背後を振り向くと、金の袋で埋まった小部屋が見えた。
これはちょっと困りものだ。
「今日作ったばかりの小部屋が一つ埋まるとはなあ……」
ある意味、増築を先にやっておいてよかったよ。
あとで金は何かに使えばいいんだけどさ。
……何に使えば良いんだろう。
またアンネの商品を適当に摘まめばいいんだろうか。
そう思いながら、店のシャッターを閉めていると、
「おーい、旦那ァー。仕事上がったんで、酒持ってきましたぜー」
シャイニングヘッドの連中が酒瓶をもって集まってきた。
また大所帯だ。
「時間有るなら一緒に飲みましょうや。以前から奢る奢る言っているのに、ぜんぜん飲めてませんでしたし」
「そうか。まあいい機会だな」
騒ぐのはあまり好きではないが、祭りだ。
……偶には良いか。
とはいえ、この人数を居住スペースに入れるとは出来ないので、店の前に木製のシートを引いて酒盛りすることにした。
周りを見れば他の商店も似たようなことをやっているので、まあ、大丈夫だろう。
そのままシャイニングヘッドの連中が持ってきた酒と料理が並んでいく。
そして、そのまま宴会になだれ込もうとしたのだが、
「あ、恩人様ー。お久しぶりです」
更に追加人員が来た。
町外れに店を持つ戦闘ウサギたちだ。
祭りということもあるが、いつにもまして際どい衣装をしている。
「人狼さんたちから聞きましたよ。ここに店を出したとのことで」
「ああ、だけど今日はもう店じまいをして、適当に酒盛り中だよ」
そう言うと戦闘ウサギたちは目をきらめかせた。
「そうでしたか。……では、給仕できる人はいりませんか? 私たちの得意分野なんですけれど。私たちの店を作って頂いた恩人さまにはあんまり味わってもらえなかったので、それくらいはさせていただきたいのですけれども」
きわどい衣装を強調して、戦闘ウサギたちはアピールしてくる。
まあ、彼女たちも接客においてはプロなんだし頼んでもいいかな。
シャイニングヘッドの男連中が鼻の下を伸ばしまくっているくらいで、問題はなさそうだし。
「んじゃ頼むわ。だけど、街の風紀を乱さない程度で、ほどほどにな?」
「かしこまりました。皆、恩人さまに一杯恩返しするわよ」
「はーい」
そうして戦闘ウサギたちは家の前のシートの上に座って、俺や冒険者たちに酒を注いでいく。
男連中は色々な意味で嬉しそうにしており、女冒険者も楽しそうに話しているようだ。
頼んで正解だったかもな、と頷いていると、
「だ、旦那……」
アッシュの奴が鼻の下を伸ばしながら、俺の顔を見て驚きの表情を浮かべていた。
すごい器用な事をやっているけど、なんなんだ?
「あ、あの、ダイチの旦那ってもしかして、あの店の元締めだったんですかい!?」
「いや、元締めっていうか、なんというかな。関係者ではある」
「マジか!? だ、旦那はいい趣味をしててすげえなあ。俺、本当に旦那に憧れていて良かったよ!」
そんな変な方向の憧れはいらないんだけども。
ともあれ、祭り二日目の終わり際。
俺に関わりのある街の住人との宴会がスタートした。





