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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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109.大人買い

 カウンターでゴーレムに接客をするように設定していると、客が来た。


「ダイチ様、こんにちわ」

「昨日ぶりに来たよ、ダイチさんー」


 アンネとラミュロスだ。

 午前に引き続き本当にヒトが来ないな。

 客は来るから良いんだけどさ。


「いらっしゃい。つっても、ちょっと待ってくれ。今はゴーレムを設定中だ」

「分かったよ。それにしても、ここがダイチさんのお店なんだねー。はじめてきたよー」

「実際は一度、来てるんだけどな。落下した時に」


 店に生えている樹木の上に乗っかったのは記憶に新しいぞ。


「あはは……あれは上空だったからね。その節はどうも、ご迷惑をおかけしました。……ところでダイチさん、ここってジュース屋さんでいいの?」

「おう、そうだぞ」

「じゃあ、五十杯くらい貰っていいかな?」


 ラミュロスも大人買いかよ。

 まあ、売れる分には構わないんだけどさ。


「でも、そんなに大量に買ってどうするんだ。お土産にする奴がいるのか?」

「え? ボクが飲むんだよ?」

「一人で、五十杯を?」

「うん、一人で」


 そういえば、ラミュロスは最大の竜王だった。

 それだけに大食感なんだろう。

 まあ、リンゴのエキスもかなり薄めているし、そもそも竜王だから五十杯くらい飲んでも大丈夫なんだろうけどさ。


「んじゃ、はい。五十杯分」

「わーい」


 ジュースの入ったタンクを渡すと、そのまま直にごくごく飲み始めた。

 この見た目はすごいな。


「あ、あのダイチさん、お支払いが私がしますので……ええと一杯千ゴルド!?」


 午後の営業に当たって値段の書いた看板を置いたのだが、それを見てアンネに驚かれた。


「い、良いんですか、こんなに安くて!?」

「相場の事は良く分からないからこれでいいよ」


 五十杯も飲めば相当な値段になるしな。


「うっ……そうでした。五万……手痛い出費です。今日の稼ぎが吹っ飛んで行ってしまう……」

「稼ぎ? そういやラミュロスと、アンネは二人して何しているんだ?」

「ええと、ちょっと薬やマジックアイテムの歩き売りをしているんです」


 アンネは金の入った袋を俺に渡すついでに、腰に取りつけていた薬箱を見せてきた。


「ラミュロス様は、荷物を持って下さるお手伝いをしてくれています。売上金とかも、結構かさばりますしね」


 アンネの後ろでゴクゴクやってるラミュロスの背中には、リュックのようなものがあった。

 あそこに売上金が詰まっているのか膨らんでいる。


「中々繁盛しているようだな」

「はい。今日は水の日ということで、あちらこちらでお酒をふるまっている場所が多いんですよ。ですから酔い覚ましや回復ポーションが売れるんです」

「へー」


 火の日がたき火ならば、水の日は酒飲みなのか。

 確かに、店の前で酒盛りしている所もある。


 というか、俺の店から少し離れた所にある雑貨屋がやっていた。


「あれはいいのか?」

「はい。このお祭りの定例だそうです」


 なるほどなあ。一日ごとに、街ぐるみでイベントが変わるのか。面白いな。


「それで、勢いに任せて飲み過ぎる人は出ちゃいますからね。お薬やアイテムはよく出るんですよ」

「商売上手だな」

「あはは、そんなに上手ではないんですけれどね……」


 アンネは頬を掻いて苦笑した。

 何か問題でもあったんだろうか。


「いえ、店の奥にしまっていた高級スクロールや上級ポーションを持ってきて、お酒の勢いで売れないかなあ、と思ったんですが、流石に値段を聞くと皆さん酔いがさめてしまいまして」


 おいおい、中々すごい商売の仕方だな。


「二万ゴルドとか十万ゴルドって言うと、みんな飛び上がって目をぱっちり開けたもんねえ」


 ジュースを飲み終えたラミュロスは楽しげに言ってくる。


「そうなんですよ。泥酔していても皆さんお財布のひもは固いですから。本来の目的である、酔いざましと初級ポーションは売れているので最初の目的は達成できているんですけれども……」

「アンネの商品は良いものなんだけどねえ」

「最上級は無理でも、上級や高級なら売れると思ったんですが、なかなか難しいものです」


 対してアンネはちょっと肩を落としていた。

 商売にも色々あるんだなあ。


 ただ、いい機会だ。


「アンネ、売れ残っている物はどれくらいある?」

「え?」

「出来ればかさばらなくて値段の高いものが良いんだけど。件の高級ポーションとかはいくつだ?」


 聞くと、アンネは薬箱の中身を確認し始めた。


「ええと、振りかけるだけで回復する上級ポーションが四つと、あらゆる魔を追い出し体を清める《浄化》スクロールが一枚ですね。ポーションは二万、スクロールは十万です。これと、これですね」


 そう言って、箱から取り出した瓶と巻物を見て、俺は頷いた。


「よし、全部くれ」

「え……っと、全部、ですか?」

「おう、全部だ」


 そう言ったら、アンネは口をあんぐりと開けて、言葉を詰まらせた。


「そ、その、結構、凄い額になりますが……十八万ゴルドとか……」

「いや、大丈夫だ。ここに積んである奴、全部持っていっていい」


 俺はカウンター裏から、金の入った袋をどんどん積んでいく。


「ひゃあっ、ど、どうしたんですか、こんな額」

「まあ、色々あってな……」


 午前中の分の金を合わせれば丁度だ。


「一袋三万で仕分けしてあるから、十八万ちょうど。これでいいだろ?」

「えと、ええと……た、確かに受け取りました。その、毎度ありがとうございます! ダイチ様のお陰で助かりました!」


 戸惑いながらも会釈をしてくるアンネの肩に俺は手を置く。


「気にするな。こちらこそありがとうと言わせて貰いたいくらいだからな」

「?」 


 というわけで、午前の稼ぎを物品に交換した。

 硬貨の袋よりも、薬瓶とかのほうが嵩張らなくて、管理が楽だからな。

 本当に有難かったよ。


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