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俺の家が魔力スポットだった件~住んでいるだけで世界最強~  作者: あまうい白一


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―side ディアネイア― 一触即発×2

 ディアネイアは、執務室でテレポートの準備をしていた。


「王女とのやり取りが終わったら彼の元にいくだけだからな。セッティングしておかねば……」


 どうせ王女のことだから祭りは好きに見て回ると言うだろうし、自分は自分で動かせてもらう。そのつもりで、ディアネイアはテレポートの場所をダイチの店にセットする。

 そして、それが終わった頃に、


「姫様。王女様をお連れいたしました」


 と、騎士団長が執務室の戸をあけて入ってきた。そして、


「お姉様ー。こんばんはー」


 王女が騎士団長を追い越して、執務室に飛び込んできた。

 綺麗なドレスを大きく翻しながら、ディアネイアに抱きついてくる。


「うむ、こんばんはだ、アテナ。だが入室の仕方は考えような。王女たるもの礼儀が大事だ」

「あ、はい! 次から気をつけるよ」


 アテナは素直に頷いた。


「なら、よしだ。元気していたか?」

「うん! すごく元気だから、強い人を集めたりしたし、日程を早めてこのお祭りに来たんだよ!」


 むふー、とアテナは薄い胸を張る。

 そんな彼女の頭を撫でていると、


「はしたないですよ、アテナ王女」


 新たに一人、女性が入ってきた。

 姿勢正しく、すらっとした女性だ。


「ええと、貴方は?」

「これは失礼をしましたディアネイア姫。私はカレンといいます。そこのアテナ王女に拾われたものです」


 と、彼女は丁寧に礼をしてくる。

 その体からは、強い力を感じさせた。

 この女性が、アテナの言っていた私兵か。確かに強そうだ、と思いつつ、


「ああ、よろしく頼むよ、カレン」


 軽く返礼をした。

 

「あのねお姉様、カレンは凄いんだよ。私の戦いの先生でもあるんだから!」

「へえ、そうなのか」

「いえいえ、私が教えていることなんて基本中の基本ですよ」


 ふふ、とカレンは笑った。その笑みからも余裕を感じさせてくる。

 王女の私兵だ。相当な強者でなければ王も認めないはずだが、


 ……彼女はその、強者だったんだろうな。

 

 一体どこで彼女を拾ったんだろうか。カレンに聞こうと、声を出そうとしたときだ。


「お話中にすみません、ディアネイア様。ちょっとよろしいでしょうか? 新たな竜王が起こしになられたのですが――」


 そう言いながらアンネが、肉付きのいい女性と執務室に入ってきた瞬間、


「……竜王?」


 一瞬で、カレンがまとう空気が変わった。

 彼女を中心に莫大な魔力が放出され、ビリビリと大気が震える。

 それは、命の危機を感じるほどに。


「君たちは……空の竜王ラミュロスと、地の竜王アンネか」


 さらにカレンは一発で、彼女たちの正体を見抜いた。

 ただ、その事実にアンネやラミュロスは驚かない。


「そういう君は、力の竜王カレン、だね」

「ですね。もう、お越しになられていたのですか」


 そして、アンネとラミュロスも、同じく魔力を放出する。

 莫大な力がぶつかり合い、室内の空気が歪む。


「あ、ああ……」


 騎士団長はその力の本流に飛びのき、執務室付近の兵士たちは既に腰を抜かしていた。

 だが、ディアネイアは違った。


 ……この空気は不味い……。せめて、アテナだけでも……。


 誰もが動かない中で、ディアネイアだけが前に出た。

 一触即発の空気を感じ取り、アテナの安全を守るための行動を起こす。


「ひゃっ、お姉様……?」

「《テレポート》……!」


 どこでもいい。とりあえず、王女だけでもこの場から離さねば。

 その思いで、後先考えずにテレポートで吹っ飛ばした。

 

 ……これで、少なくともアテナだけは守れた。


 この部屋が一瞬の内に破壊されても、彼女だけは助けられる。

 そう思いつつも冷や汗を流すディアネイアは再び、目の前を見る。


 ラミュロスたちと、カレンは互いに近づきあい、そして、


 ――パアン。


 と大きな音を立てるほど勢いよく握手をした。


「久しぶりだな、ラミュロス! 元気だったか!」

「うん、元気だよ、カレンー」

「……え?」


 そこから、二人は握り合った手を振る。

 その姿はとても仲がよさそうだった。


「それにアンネも! 元気そうな姿が見れて嬉しいぞ」

「はい、ありがとうございますカレン姉さま」

「……何が起きているんだ?」


 ディアネイアは現状を上手く認識できなった。

 先ほどまで一触即発の状態だったのに、どうしてこうなったんだろうか。

 分からず唖然とした目でいると、アンネが申し訳なさそうにこちらに頭を下げてきた。


「すみません。カレン姉さまは同族の挨拶をする時、魔力をぶつけ合うのを好んでいまして。物凄く体育会系なんです……」

「……な、なるほどな」


 つまり、自分は挨拶を剣呑な雰囲気と勘違いしてしまったというわけなのか。

 なんとも恥ずかしい、とディアネイアは頬を赤くした。


「本当に、すみません。事前にお伝えするまもなく始まってしまって。……でも、よく動けましたね」

「え? 何がだ?」

「カレン姉様の魔力放出ですよ。あれだけのを食らったら普通の人間は、ああなるのが当然です」


 と、アンネは執務室の外にいる、未だに立つ事すら出来ない兵士たちを見た。


「ま、まあな。ダイチ殿に比べたら、この程度、まだまだ平気だ」


 これ以上に酷い魔力の本流を何度も見ているし、なんども味わっている。

 

 ……その分だけ、耐性が出来ている。


 竜王では漏らす事もなくなった。

 本当にダイチには感謝しても仕切れない。


「ほら、カレン姉様も謝ってください。部屋がひび割れてしまったでしょうに」

「うむ、ええと……すまない。誤解させてしまいました。この弁償はいずれさせてもらうので許して頂けますか」


 と、カレンは丁寧に頭を下げてきた。

 こういう所は礼儀正しい竜王らしいな。


「ま、まあ、弁償してもらえるなら構わないさ」

「ありがたいです。……ところで、アテナ王女はどこですかね? 挨拶の時に目を離してしまって、いつの間にか消えていたのですが」

「あ」

 

 ディアネイアは今さら思い返していた。

 アテナをテレポートをしてしまったことに。

 しかも、さっきまで設定していた場所に、だ。


「だ、ダイチ殿のところに、無許可で送ってしまった、か……?」


 ディアネイアの背筋に冷汗が流れていく。


「これは、やってしまったかもしれない……」


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