88.パワーアップと、利用法の拡大
ダンジョンから魔石を持ちかえってきた、俺はヘスティと共にゴーレムに魔石を押しこんでいた。
手足に込めたらどうなるか、とか、体の内部に押しこみまくったらどうなるか、とか何度かの実験を経て、
「よっし、とりあえず小型ゴーレムは完成、だな」
「ん」
どうにか、スリムで小さめなゴーレム五体ほど、作成することに成功した。
普通に作れば三メートルくらいあるゴーレムだが、この小型ゴーレムは一メートルそこそこ。体格も大分、細くなっている。
外見は後回しにしたので少し格好悪いが、とりあえずは完成だ。
「外見は時間のある時に調整するとして、うん、なかなか良いんじゃないか? ゴーレム、庭石を運んでくれ」
命令もしっかり聞いて、最初は持ち上げることすらやっとだった庭石をいくつも担げている。
「ん、構成の三割くらい、魔石になった、ね」
「おう、これがベストっぽいからな」
樹のゴーレムはぬくもりがあるというか、動きが柔らかなのだが、魔石の割合を多くすると動きがカクカクするようになる。
「……あまり入れ過ぎるとゴーレムが堅くなりすぎて、触れるだけで人体を傷つけそうな動きになるわ、スムーズに動かず自壊を始めるわ、危なかったからなあ」
だから、今のところの最適の割合が、三割だ。
これなら樹木の柔軟性と魔石のパワーが上手く合わせられる。
庭石を担いだまま、小走りすることも可能だしな。
「――って、ストップだ、ゴーレム」
小走りしていたゴーレムの行先に、
「くかー」
ゴロンと寝転んでいるラミュロスがいた。
涎を垂らして完全に寝ている。
「……なんでラミュロスはこんな所で寝てるんだ?」
昨夜はヘスティの小屋に運んだ筈だが。
「寝相、悪い。昼寝して、ここまで転がってきたんだと、思う」
ああ、寝相で小屋の外に出てきたのかよ。というか、ここで寝られると邪魔だな。
「ゴーレム、庭石置いて、その寝転んでる奴を庭のベンチに運んでおけー」
小型ゴーレムは俺の命令に従って、ラミュロスを持ちあげた。
瞬間、ゴーレムの足元が地面にめり込んだ。
「なあ、ヘスティ。……あいつ、岩よりも重いっぽいんだけど、どうなってるんだ」
どうやら見た目通りの質量じゃなさそうだぞ。
「変化が未熟なだけ。……でも、普通に竜王の体を持ち上げられてるあたり、そのゴーレム、おかしい性能になってる」
「そうなのか? でもまあ、そんなに重い物を持ちあげられれば、パワー方面においては、合格だろうな」
小型化しても、これなら力仕事も楽々出来る筈だ。
そう思っていると、
「……んあー、揺れるー」
「お、起きたか、ラミュロス」
小型ゴーレムがベンチまで運ぶと同時、ラミュロスが目を覚まして首をこちらに向けた。
「ここあったかい。ありがとうダイチさんー」
「いや、別にそれは良いんだけどよ。お前、いつまでここで寝てるつもりなんだ?」
魔力不足はもう大分治ったと聞いたが、空に戻らなくていいんだろうか。
「うーん、ヘスティの部屋の居心地が良くてねー。あと、鱗が全回復しないと、ボク、空の環境に耐えられないからね」
別にくつろぐのは構わないんだけどさ。
一応、ヘスティに貸している場所だから、彼女の意見も聞いておこう。
「どうするんだ、ヘスティ」
「とりあえず、……そろそろ追い出そうと思う。アンネの家とかに押しこめば、そこそこ働くだろうし」
「そ、そんなー。酷いよー」
「酷くない。猶予は上げている。というか、話をするときは、体を起こせ」
二人の竜王は顔を突き合わせて話し合っている。その辺りは後々、竜王同士で決めてもらうとしようかな。
そう思いながら、俺は自分の元に戻ってきたゴーレムを見やる。
岩よりも重いラミュロスを運んでも、ひび割れ一つない。
……利用してみて分かったが、魔石というのは本当に有用だな。
組み込むだけでパワーが上がる。
それこそ、魔石で構築した腕とか作ったら、かなりの威力が出そうだ。
「ウッドアーマーとかに外付け出来れば、硬い岩盤とかも簡単に打ち抜けるようになるかねえ……」
そうなれば、庭造りやダンジョン探索はより簡単になる。
同期すればいい話だが、自分一人でも出来るようになるのは有難いし。
……でも、その腕を作るには、魔石が足りないか。
小型ゴーレムを五体ほど作ったら、もう魔石が空になってしまった。
新しいモノを作るにせよ、小型ゴーレムを量産するにせよ、まだまだ数が必要だ。だから、
「よっし、材料足りなくなったから、昼飯食った後、もう一度行くか」
そして、俺は腹を膨らませた後、二度目のダンジョン探索をすることにした。





