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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第8章「恋愛模様編」
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第49話「お泊りデート 前編」

「宗ちゃん!やったよ!」

そう言ってある紙を見せてくる佳音。そこに書かれていたのは85位の文字。

「良かったな。まさか、本当に取るとは思ってなかったが…。」

その紙にはあるテストの結果が書かれていた。


きっかけは少し前にした佳音との約束だった。

「宗ちゃん、前に勉強とか頑張って欲しいって言ってたよね?」

「ああ。確かに言ったな。」

「私、この模試で100位以内とるから、取ったらなにかご褒美が欲しいな。」

「100位か…それおまえでも取れるのか?」

宗自身の体感ではどれだけいい教科でも精々2万番台程度。その中で100位以内というのは雲の上のような話に思えた。

「うーん…ちょっと辛いかも。前の模試だと300位台ぐらいだったし。」

その順位だけでも驚異といえるレベルだが、ここからさらに200位上げるというのは、それまでの比にならないほど最難関に思えた。

だからだろう、ご褒美を許可したのは。

「まあ、いいよ。もし、次の模試で100位以内がとれたらだよ。」

「うん!ありがとう。ご褒美…何にしようかな。」

そう言って考えこむ佳音。その時はまさかそのご褒美が実際に実現するとは夢にも思ってなかった。


しかし、現実としてご褒美を与えるという約束をしている以上、その約束を守るのは最低限のルールだろう。

「おまえが考えてるご褒美ってなんだ?」

いくつか予測されるものはあったが、佳音は更にその上の要望を出してきた。

「一度…宗ちゃんと2人で旅行行きたいな。土日使って一泊でいいから。」

宗にとって予想外ではあったものの、存外反対するようなものでもなかった。

確かに佳音と2人で宿泊を含む旅行にいったことはないし、この前言った合宿だって4人だった。

「いいんじゃないか。じゃあ、プランでもたてるか。」

こうして、宗と佳音の婚前前旅行(佳音談)は実行される運びとなった。


相談の結果、ほとんどのプランを佳音に任せるという算段になった。

場所は宗のバイクを使って1時間ほどにある温泉地。よって、バイクを使うことになったがさすがに荷物を乗せる場所がないということでサイドカーを借りることになった。

その選ぶ途中で、せっかくなら佳音はサイドカーの方に乗るか?という話が出たが、案の定佳音は宗に抱きつけないからという理由で却下した。

(1時間の長距離運転はまだ慣れてないが…まあ、なんとかなるか。)

結局、宗の方が折れる形で準備は整って言った。


休憩も含めて2時間弱のツーリングをして着いたのはチェーン展開している観光ホテルだった。

しかし、宗は部屋に入った途端脱力をせずには居られなかった。

(ダブルベッドとは…)

そこにおいてあったのは、大きなベッドが1つ。明らかに佳音の深い意図を感じる構成だった。

「…本気か?」

一応、確認を取ってみる。

「もちろん!宗ちゃんと一緒に寝るの…すごく夢だったんだよ。それにいかがわしいことをするわけじゃないでしょ?」

強気で言ったり、少々恥ずかしそうに言ったりとコロコロと表情が変わったが、確かに最後の意見に関しては宗も完全に同意だった。

とりあえず、ベッドのことは諦めて部屋の方を見て回る宗。すると、外に小さな露天風呂が見つかった。

「これって、僕達専用のやつか?」

「うん。自由に使っていいって。」

そうか、と言ってとりあえず、露天風呂のことは考えないようにしてベッドに座る宗。

「宗ちゃん、このあとどうする?」

「そうだな…まあ、佳音に任せるよ。おまえのご褒美なんだからさ。」

「本当?うーん、外に出かけるのもいいけどとりあえずはここで宗ちゃんと2人で過ごしてたいかな。」

そう言って、宗に抱きついてくる佳音。だが、いつものベッドのつもりで抱きついたからか宗に膝枕してもらうような形になった。

甘えてくる佳音の紙を撫でながら、宗は考えないようにしていたあることに気づき、ふとため息をついた。

「宗ちゃん、どうしたの?」

そのため息をついて不思議そうに聞く佳音。どうやら、佳音にとっては大した問題では内容だった。

その問題とは…佳音の服装だった。

今日の佳音の服装はミニスカートを中心とした妙に露出が多い服装。その傾向は上着を脱いだ部屋の中で更にあがる傾向があった。

「どうして…そんな格好をしてるんだ?」

この悩みは今日に限らない。夜這い(と佳音は呼んでる)である夜の訪問で服装に気合が入っているのはまだ許容範囲である。仮にも彼氏の家に行くという名目があるからだ。

しかし、佳音の服装は明らかに宗がそばにいる時に露出が多くなる傾向があった。

「どう?可愛い?」

「可愛いとは思うが…最近の佳音の服装はちょっと変わったなと思っただけだよ。」

それでも、一応褒める宗。決して嘘を言ってるわけじゃないので罪悪感はないが。

「良かった~!うーん、ちょっと大人になったってことで。」

それはなにか違うと思ったが、大人の宗はあえてそこに触れなかった。

「このまま、夜ご飯まで部屋にいるか?」

「うーん、その前にお風呂に入っておきたいかな。やっぱり、温泉に来たわけだし。」

「そうだな。」

そう言って、立ち上がる宗。佳音も渋々ながら起き上がる。

そしていきなり服を脱ぎだした。

「え!?…っておい!何やってるんだよ…。」

寸でのところで慌てて止める宗。きっとタオルはどこかなと思って振り向いていなかったら間に合っていないレベルの時間だった。

「何って、一緒にお風呂入るんじゃないの?」

「いや、何の疑問もなく言ってるがその言葉には疑問しかないぞ。」

先ほどの露天風呂の件からなんとなく予測はしていたが、さすがの宗でもまさかここまで積極的に来るとは思っていなかった。

「何で?だって、ダブルベッドに個人露天風呂、対象はカップルとなったら、答えは1つでしょ?」

「おまえの言葉を聞いてると違和感なく頷きそうだが…その理論はどこかおかしい。」

主に答えが1つしかないところとか。その答えが僕達にも適用されるところとか。

「えー。…私は…宗ちゃんなら混浴でもいいよ…?」

「おまえが良くても、僕は嫌だ。さあ、さっさと用意して普通の温泉に行くぞ。」

「なら…水着ならいい?」

「まあ、水着なら一応…って、僕は持ってきてないぞ。」

「大丈夫、私が持ってきてるから。」

そう言ってカバンから2人分の水着を取り出す佳音。どこまでも準備がいい奴だった。

「何で持ってるんだよ…いきなり今入るのか?」

「うん、入ろ!」

笑顔で水着を差し出す佳音。一応譲歩している手前、断るのは辛そうだった。

宗は佳音から水着を受けとる。そして…その場で佳音は水着に着替えだした。

「結局意味ねぇ!」

とりあえず、一目散で反対を向く宗。そして、そのまま洗面所の中へ向かった。


「気持ちいいね。」

「ああ、そうだな。」

少し大きめの樽風呂に入る宗と佳音。

やはり体格の差もあるからか、結局いつものベッドと同じく宗の前に佳音が座るような形をとっていた。

佳音の水着はあえて露出の多いビキニ。さすがにヒモといったレベルの暴挙はしなかったものの、とてもじゃないが泳ぎに行くのは無理がある水着である。

少し残念といえば身長と体型から、傍から見ると子供が頑張ってビキニを着て、お父さんかお兄さんと一緒に入っているようにしか見えないところか。

最も、そういった事情を考えなければ何の文句もない幸せな時間であることは確かだった。

一方、佳音はこの成果に宗とは比べ物にならないほどの嬉しさを感じていた。

(結果的に水着を着ることになっちゃったけど…それでも、宗ちゃんと一緒にお風呂に入れてるなんて…夢の様)

ちなみに、一応中学の頃の修学旅行や野外学習でも一緒にお風呂に入っているものの、今とは事情が大きく異なるため完全に別カウントである。

こうして宗の妥協によって佳音の夢の1つがかなった瞬間だった。


佳音の暴走も、もう終わり。

(そう思っていた時があったなぁ…)

さすがにもう無いだろうと思っていた宗だったが、そんな過去の自分に対してちょっと注意をしておきたいというのが本音だった。

(このプランを誰が組んでいるのかをもう一度考えておくべきだったな…。)

部屋は同じ階にある小さな和室。

そこに並ぶ料理は2人前。ただし、お箸は1つ。

「宗ちゃん。」

ちょっと恥ずかしそうに料理を宗の口元に運ぶ佳音。宗はもう諦めた表情で口を開けた。

「美味しい?」

いかにも自分が作ったかのような表情で聞く佳音。

「たしかに美味しいな。ここの料理長にお礼を言っておくか。」

一応、反抗を試みてみる宗。けれども、その僅かばかりの反抗が今の佳音に通じるわけがなかった。

「宗ちゃん、私にも食べさせて。」

上目づかいでお願いする佳音。頭痛を抑えながら、宗は佳音の口に先ほど食べさせてもらった料理と同じ料理を運んだ。

「本当だ、美味しいね。」

その表情は笑顔であるが、その理由が果たして料理の美味しさだけかどうかは限りなく白に近いグレーだろう。

そして、この甘い空気はこの食事が終わるまで消えてくれそうになかった。

一応、新章扱いになります。


SSでもいいのですが、まあこの章自体の内容がそんなに多くないのもあり、一応メインの恋愛話という意味で含めてしまおうかなと。



少し前に書いてあったものなので、すごく佳音が吹っ飛んでます。

まあ、宗と2人ならこんなものかなとも思ったりしているのですが。


後編は最後少し調整が終わっていないのでそれが終わり次第投稿します。

きっと明日には…

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