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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第5章「留学生編」
42/63

SS7「憧れのお兄様」

「今日は久しぶりに2人でお出かけだね。」

「久しぶりとかいいながら、結構な頻度で出かけてる気がするけどな。

そうじゃなくても、僕とお前じゃ入り浸りっていうレベルじゃないぐらいの時間一緒にいるぞ。」

文化祭の準備もかなり進み、元々佳音1人でやる予定だったものが、ケントというイレギュラーな戦力の追加により、予想以上に余裕が出来た宗と佳音は、部活に行かず、そのまま家への帰路を歩いていた。

一応、あかりと翔也を2人きりにしてあげようという佳音の提案だが(そもそも、ケントの存在を考えればそれもまた難しいだろう)、単純に宗と2人で出かけたかっただけなんじゃないかというのはもちろん本人以外はみんな気づいていた。

そうして、宗の部屋に上がる2人。

何故佳音がついてくるのかということに関して疑問は数多く残るが、そこについては宗自身も説得を諦めていた。

普段ならば、ここで荷物を持ち替えて出かけるところ。

だが、今日はその普段とはちょっと違った、宗にとっては非日常的な出来事が目の前に広がっていた。

ドアを開けた部屋には大きな変化はない。机の上も、今日の朝やっていた勉強のノートがひろがったままだ。

そこではなく、普段佳音が宗と一緒に座るベッド。

「紗季?」

「お久しぶりです、お兄様。」

そこには1人の少女が座って、宗の帰りを待っていた。


紗季。

宗のいとこにして、中学2年生の女子であり、宗を「お兄様」と呼ぶ少女である。

小学生の頃は、向こうの親の仕事柄もあり、部活がない時は宗の家で待っていた紗季と遊ぶのが日常であった。

そういう意味では佳音よりも一緒にいた時間は長いかもしれない。最も、それも宗が中学生になるまでだ。

そうでなくても、佳音とあうきっかけとなった部活が始まった4年生になってからはかなり一緒にいれる時間が短くなってしまっている。

忘れこそしないものの、もう1年近く会っていないいとこが急に部屋にいることに宗が驚くのも無理はないといえよう。

彼女について語る上において外せないのが「お兄様」という呼び方。これに関してきっかけは本当に些細なことである。

ちょうど、宗が6年生の頃。

その時の宗は、学校で入ってきた知識を他に伝えるということにちょっとした優越感を感じており、またその知識を素直に吸収する紗季に対して多くの知識が渡るのは当然のことだろう。

そのおかげなのか紗季の小学生の頃の成績がクラストップだったことはまた別の話であるが。

その日も、そんな日常の1日だった。

「宗兄って色々知ってるよね。さすがお兄ちゃんだ!」

「もちろん、6年生だからね。紗季ちゃんも知らないことがあったらどんどん聞いてくれていいよ。」

「ううん、紗季はお兄ちゃんに教えてもらったことで十分だよ。

お兄ちゃん…うーん、なんかお兄ちゃんって呼ぶだけだと凄さが伝わらない気がするよ。

お兄…お兄様!お兄様って呼んでもいい?」

「お兄様…か。うん、いいよ。」

きっと紗季がそんなことを言い出したのはよく見ていたアニメの影響か何かだろう。

ちょうど少女漫画にはまっていたから、そちらからの影響かもしれない。

どちらにせよ宗としてもちょっと優越感を感じるというだけでその呼び名を許可してしまった事実には変わりないのだから。

結局、中学生になってからはそれぞれの生活サイクルにも違いが出てきたこともあり、頻度はかなり減ってしまった。

しかし、段々年齢が上がっていくに連れてその呼び名に恥ずかしさを憶えている宗と違い、紗季は未だに宗のことを「お兄様」と呼ぶのだった。



「宗ちゃん、お兄様ってどういうこと?」

珍しく佳音が殺気立った様子で宗に質問する。昔であれば、全く気にしなかったはずだがやはり今は恋人という立場があるのだろうか。

どちらにせよ、ある限られたメンバー以外(というよりあかり以外)には滅法厳しい佳音が目くじらをたてるのも無理もないことだった。

「佳音、落ち着けよ。お前も合ったことあるだろう?僕のいとこだよ。

紗季もその呼び方はもうやめてくれ。」

「そんなこと言わないでください。お兄様はいつまでも私のお兄様であるのですから。

そういえば、隣にいらっしゃる方は誰ですか?佳音という名前には聞き覚えがあるのですが…。」

「そういえば、今の佳音に合ったことがないか。

昔、バスケ部で一緒にやってたやつに佳音って男子がいただろ?実は…」

「そういえば、お兄様のお友にいらっしゃいましたね。もしかして、今は女装中ですか?」

宗の言葉を最後まで聞かずに聞いた紗季が悪いのだが、その言葉は佳音の心に油を注いだ。

「紗季ちゃんだっけ?私は性転換して女子になったの!そして、今は宗ちゃんの彼女なんだから、私達の大切な時間を邪魔しないでもらえない?」

もちろん、嘘は言っていないものの、若干棘のある言い方であることは間違いない。

現に紗季の反応も驚きの色であふれているといった様子だった。

「なんと!?お兄様は私というものがありながら、他の女性と付き合っていらっしゃったのですか?」

(いや、反応する所が違うだろ?)

まさか、彼女というところに過剰反応といえる反応をすると思っていなかった、宗だったがさすがに先ほどのツッコミはココロの中で言わざるを得なかった。

「いや、その言い方だと紗季と僕が付き合っていたみたいだろうが。

元々1年近く会ってなかったのにその言葉は誤解を招くぞ。」

「いえ、誤解ではありませんよ。

えーと、佳音さんですか。あなたがお兄様と現在恋人関係にあるのはわかりました。

けれども、私とお兄様は1年ぶりにあったいとこなのです。積もる話もあると思いませんか?

そして、ここはお兄様の部屋。いくらなんでも、その家族ぐるみのプライペートに踏み込むのは高校生のやることにしては少し大人気ない気がしますよ?」

その棘しかない言い方は佳音の心に深く突き刺さる。元々、そういった悪意のある言い合いに慣れていない(得に色恋沙汰が混ざることに関しては)佳音はすぐに宗にヘルプを出した。

「うぅ…宗ちゃん…!」

少し抱きついた状態で宗に甘える佳音。

そこに紗季はとどめを刺した。

「彼氏にあまえることしか出来ないんですか?

高校生としてそれはあまりにも子供すぎると思います。大人ならばここは一旦引いたらいかがですか?」


結局、紗季の言葉に打ちのめされた佳音だが、一応泣き崩れることはなく(それでも目に涙を貯めていたが)そのまま宗の部屋を出ていってしまった。

さすがに放おっておくわけにもいかず、一言紗季に送ってく旨を言って宗は佳音の後を追った。

結局、佳音をなだめながら家まで送り、とりあえず今日の予定だった買い物は明日行く約束をしてどうにか機嫌を直した。

(とはいえ、紗季の帰る時間によっては夜の時間も取れない…か。気が乗らないな。)

決してそのことで宗を怒るとは思えないが、佳音の機嫌が悪くなることはほぼ確実である。

そんな思いを抱きながら、宗は元凶の待つ自分の部屋へと向かった。


「…で、なんで紗季は僕の部屋にいるんだ?」

「紗季がお兄様の部屋にいることがそんなに不思議ですか?」

「いや、1年近くも会ってないのに、急にいたらそりゃあ理由があると思うだろう。」

「1年など大した時間じゃありませんよ。」

「いや、普通に長い時間だよ。そもそも、中学2年生にもなって見知らぬ男子の部屋に上がり込むのもまずいだろう。」

宗は佳音を棚に上げて言う。まあ、彼女は例外なのかもしれないが。

「お兄様は見知らぬ男子じゃありません!紗季のフィアンセですから。」

「いつお前と結婚を誓ったんだ…。まあ、見知らぬというのは言い過ぎか。」

これでもいとこだし。と宗は付け加える。その表現に紗季は嬉しさの中にどこか寂しさが混じっているような複雑な表情をした。

「それよりも、さっきの女子はなんですか?どうしてお兄様が紗季の知らないうちに彼女など…。

しかも、まるで男みたいじゃありませんか!お兄様はBLの趣味がお有りで?」

「僕がお前の許可なしで彼女を作ろうと勝手だろうが。

しかも、佳音は前に男だったってだけで今はれっきとした女子だよ。

というか、そこについては触れないでくれ。色々と複雑なもんでな。」

「そうでしたか…。それでも、二股は許せることではありません。」

「一応、聞いとく。二股って誰と?」

「紗季以外に誰がいらっしゃるのですか?」

「いや、二股とかそういうレベルの話ですらない。」

「ちなみに、二股の片方は佳音さんではありませんよ。」

「一体誰だよ?」

「纐纈さん…でしたっけ。お兄様が楽しそうに語ってくれた方です。」

「あ…お前は会ったことがあるのか。」

前に紗季が宗とあった時、それは丁度纐纈と一緒に買い出しやなんかをしていて一旦家に寄った時だった。

その日の帰りに強く追求されたから、色々しゃべってしまっている。きっと、その時に宗が好意的に見ているのも言ってしまったかもしれなかった。

最も、紗季はかなりと言っていいレベルで恋愛事に関して鋭い。言っていなくても、その程度ならちょっとした仕草から判断できてしまうのかもしれなかった。

「その方とはどうされたんですか?」

「纐纈とは…もう会ってないよ。いや、会おうと思っても会えないという方が正しいかな。」

「退学でもされたのですか?」

「…まあ、大筋間違ってないよ。もう学校にはいない。」

一応、卒業時に一緒に卒業証書を授与しようという話があるらしく、厳密には学校にいると言えなくもないのだが、本人がいない中でそんなことを言うのはただの自己満足にしか過ぎない。どっちだろうと大差なかった。

「そうでしたか…それで、あのようなロリ体型の方と一緒に。」

「いや、その言い方は流石に可哀想じゃないか?お前達と違って生まれた時から女子じゃないんだから、胸がないのは仕方がないだろう。」

「いえ。そんな方と付き合っていらっしゃるお兄様を責めているのです。」

「そんなことを責められても…。」

そのきっかけはどんな形だろうと、今、佳音のことが好きであるという事実には変わりはない。

また、別にスタイルで好きになったわけではないのもまた事実であったが、その話をすると色々と過去のことに触れなきゃいけないことを考えてここは反論しないことにした宗だった。

「全く…勘弁してやれよ。」

宗はベッドに座っていた紗季の正面から移動し、自分の椅子に座りながらそういった。

「佳音は、お前と違って恋愛経験豊富じゃ無いんだ。色々事情もあって、さっきみたいな色恋沙汰の悪意にも耐えられない。

頭は僕や紗季よりもいいかもしれないけど、そういう意味ではまだまだ子供だよ。恋愛事に関しては明らかにお前の方が大人だ。」

その言葉は紗季にとってどう映ったのか。それは確かではないが、紗季が少し寂しそうな顔をしたのは決して宗の見間違いではなかった。

「わかりました。ただ、お兄様。代わりに1つお願いごとがあるのですがよろしいですか?」

「何だ?」

基本的に紗季には優しい宗である。大体のわがままは通してあげるつもりでいた。

「今日は…お兄様の部屋に泊まらせてもらってもいいですか?」

「駄目だ。」

だが、しかしその大体に今回のお願いは含まれなかった。

「そんな!しかし、もうお父様とお母様の許可は得ているのですよ!?」

「なんで僕の親はそう簡単に許可を出すんだよ!」

言われてみれば、いとこが泊まりに来ただけである。

いくら紗季が年頃とはいえ、佳音が毎日のように家に上がってても(それも夜分遅くと言ってもおかしくないぐらいの時間だ)全く気にしない両親だ。

その程度で許可を出すのはある意味で必然と言えた。

(全く…佳音の機嫌を取るのが大変そうだなぁ…。)

仕方なく、1人で対処の方法に頭を悩ませる宗。しかし、そもそも1つの疑問にいきあたった。

「というか、そっちの親はいいのか?明日も学校のはずだが。」

「明日は学校休みなんですよ。振替休日です。

それに、うちの親についてはいいんです。家出してきたんですから。」

「家出か…紗季ってそんなことするやつだったっけ?」

「いえ、家出したのは初めてです。そして、あんなに親に反発したのも初めてですよ。」

「何があったんだ?僕に相談できることなら聞くぞ。」

その言葉に言葉をつまらせる紗季。けれども、自分の中での区切りが着いたのかその理由を話し始めた。

「紗季、彼氏がいるんです。その彼氏のことで親と喧嘩してしまって…。

中学のうちから付き合うのっておかしいんでしょうか?」

「うーん…。」

かなり複雑な問題であった。そもそも、佳音と付き合い始めたのも高校生になってからであり、そもそも宗の場合は例外が多すぎて一般的な恋愛には役にたたないだろう。

「僕は別に早いわけじゃないと思うよ。ただ、それは親に怒られないレベルにしなきゃ。ちなみにどんなお願いをしたの?」

「彼氏の家に外泊したいって言ったんです。」

「それは断られても仕方がない…か。」

自分のことを(外泊まではしたことがない…とは言わないが、佳音が泊まりに来る頻度の方が多い)棚にあげて話す宗だった。

「そもそも、うちの親は私のことを子供扱いしすぎるんです。周りの子は何人もやっているというのに…。」

「そこは完全に教育方針だからな。まあ、女子中学生を外泊させることに抵抗ある親はまあそんなに変じゃないと思うよ。

学生の立場からしたら納得行かない面はあるだろうけどね。やっぱり、色々と危ないことも…やりかねないし。」

「そんなことしませんよ!今の彼氏とはアニメ好きで気があって付き合ってるんです。もし外泊したら一晩中アニメ見てますよ。」

「それはそれで問題な気がするけど。」

と、一旦宗は言葉を区切り立ち上がった。

「どこへ行かれるのですか?お兄様。」

「もうこんな時間だろ。結局泊まってくならその話は一応親にしておこうかなと。

布団もとってこなきゃいけないし。」

「お兄様、ベッドがあるじゃありませんか。」

「そのベッドは1人用だ。」

とりあえず、最低限のツッコミは入れておいて親に話をしにいく宗。

どうも、本当に話を通していたらしく紗季の親も含めて宗の家に泊まることはもう互いの両親の中で決定事項となっていた。

ちょっと拍子抜けしながらも、部屋に上がり事情を説明して泊まっていいことを説明する。

そして食事にお風呂(もちろん、混浴なんてことをやった日には明日以降なんて言われるかわからないだろう)と紗季を加えて普段通りの生活を送り、部屋に戻って落ち着く頃には11時を回っていた。

「じゃあ、上のベッド使っていいからな。」

「本当ですか!?お兄様のベッドを使えるなんて…!」

「その喜びようは少し怖いぐらいなんだが。」

そんな冗談のような会話をしながら(紗季にとっても冗談であれば宗にとって理想であるが)宗は本題に入った。

「先ほどの話なんだが、紗季は早く大人になりたいのか?」

「んー、どうなんでしょう。中学生という立場からしたら高校生は既に大人に近く感じますし、大人になりたいってのもあながち間違ってないのかもしれません。」

「だから、あんなに佳音に食いついたのか。」

あの時は単純に佳音を追い払いたいという意図を全面に出していたが、その言葉の中に「高校生なら」と言った言葉や「大人なら」というような言葉が含まれていた。

あれは自分の理想に対する裏返しであったということだ。

「さっき、僕の親に話を聞いてづくづく思ったよ。まだまだ、子供だなって。」

「お兄様は子供じゃない気がしますが…。」

「この場合、僕も紗季もそんなに大差ないよ。ちょっとばかり年齢が違うだけで親の影響下で生きている上にそれ以上の責任能力がないのだから。」

たった3年。それでも、学生からしたらこれほど大きい3年もない年齢差を大差ないと言い切る。

それは、同じ年齢ながらいくつもの責任を背負い、その上で生きている友達の影響かもしれない。

「大人からしたら…本当に大きな違いがないのかもしれませんね。」

「ああ、そうだろうな。現に今回の宿泊だって互いの両親の許可が出て初めて泊まれてるんだ。

どちらかの親どころか、誰か1人が反対したらもうありえないような状況なんだぜ。全く…奇跡みたいなもんだ。」

それだけ宗が紗季の両親に信頼されているという面もあるのだが、結局今の紗季が抱えている悩みからしたら逆効果な事実である。

それが、宗と自分の大きな差であると思い知らされるのだから。

「本当にそうですね…。」

それから、数分の沈黙が流れる。紗季にとっては分からないが、少なくとも宗にとっては苦痛な時間ではない。

子供の権限の無さ。それは、さんざん宗が悩み通ってきた道でもある。その結果が今までの行動であったりするのだが、あくまで区切りをつけているだけで完全な解決を得ているわけではない。だからこそ、紗季の悩みは人事に思えなかったのだ。

しかしながら、良いというべきか悪いというべきか、紗季はその悩みに1人で答えを出した。

「お兄様、一つ聞きたいことがあるのですがよろしいですか?」

だからこそ、その想いを解決するためにそんな質問をしたのだろう。

「私はお兄様のことが好きです。いとこの兄として慕っているのではなく、1人の女子として。お兄様はどうですか?」

そしてその答えも、それが解決を呼ぶこともまた、紗季は知っている。

「ごめんね、僕はいとことして、妹としてなら愛せるよ。ただ、その場所は既に埋まってしまっているんだ。

だから、その場所に紗季を特別として置くことはできそうにない。」

その言葉は紗季にとって良い言葉だったのか、悪い言葉だったのか。真偽は別にしても、その後顔を上げた紗季の表情はとてもさわやかなものだった。

「ですよね。

安心して下さい。紗季はお兄様…いえ、宗兄に憧れてるだけなんです。その憧れが恋なのかよくわかってないだけなんですよ。

でもきっと本当の恋じゃないんでしょうね。彼氏もいるんですし。」

その言葉は確かに紗季の本心ではあっただろう。ただ、そこに含まれている本心を読み取れないほど、宗は鈍感ではなかった。

「そうか。それは…残念かな。」

「大丈夫ですよ。宗兄は私の特別な人であることには代わりないのですから。

たった1人の可愛いいとこ。それは、宗兄にとっての特別ですよね?」

「ああ。もちろん…僕にとっての特別な1人だよ。」

結局、そんな形でけりをつけたのだ。

それは結果的に大人になりたいという思いもまた実現に近づけたのだった。




「ちょっと、どうして宗兄と一緒に寝てるの!?」

「そんなことより、あなたが宗ちゃんと一緒の部屋に寝ていることの方が許せないもん。

宗ちゃんは、私だけの宗ちゃんなんだから!」

朝方、目が覚めた宗が聞いたのはそんな喧嘩の声だった。

どうも、話の断片を聞く限りは痺れを切らして(後の佳音は不安になってと言っていた)夜中のうちに下で寝ている宗の隣に潜り込んでそのまま朝まで寝ていたという。

夜中のうちに来る佳音も佳音だが、それよりも怒るべきは宗の両親であることを宗は忘れていない。

喧嘩を繰り広げている2人を横目に部屋の外に出ようとする宗。

それに気づいた紗季は宗に助けを求めた。

「ねぇ、宗兄!私は宗兄の特別ですよね?」

その言葉に佳音がいる手前、宗は曖昧な笑みを返すことしかできなかった。

もちろん、答えは1つである。


今回はSSにしてはかなり長いです。

約8000字弱という普段なら2つのSSに分けているような話ではあるのですが、投稿時期が開いてしまったことや内容の区切りがつけにくいこともあり、今回はそのまま投稿させて頂きました。


たまにはギャク要素も!と思って書いたこのSSですが、後半になるにつれて本編の重さが全く抜けていません。むしろ、後半の難解さは本編に匹敵するかそれを超えるレベルの精神論になってきているきがしますので、流れで読み飛ばしてもらうのも1つの手であると思います。


そういう暗い意味を差し引いても、紗季は書いてて楽しかったです。

元々、佳音もあかりもこういったツッコミ待ちの会話をするには少々キャラ付けが難しいのです。そういった中で、宗に総ツッコミをさせる紗季というのはまたスパイスとして面白いのではないかなと思います。


結局、今回も佳音の立場になれなかった少女としての描写が多いです。

ただ、それが一概に恋愛と言い切れなかったり、大人になりたいが故の憧れだった可能性も考えるとまた中学生としての未熟な恋愛像が見えてきそうです。


こういった理論を重ねるのは好きなのですが、見ている側は理解に苦しむだけだと思いますのでこのあたりで終わりにしておきたいと思います。


元々、この話はどこにでも入れられるSSとしての想定だったのですが、だからこそ、ここにいれるのも面白いかなと投稿させてもらいました。


最低でも、もう1つSSを経てから本編の次の章に行きたいと思っています。

次は本来のSSとしての動き通り、ポジティブ的な話になるはずです。

今まで本編にはかかわってこなかった彼女をそろそろ仲間に加えてあげてもいいかなと思ったりしているのです。


また、次の話でお会いできたら幸いです。


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