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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第5章「留学生編」
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第29話「ケントとの出会い」

面倒なことになりそうだとわかっていようが、時は関係なくすぎるものである。

宗は佳音を待ちながらそれを実感していた。

(もう今日が例の留学生がくる日か…。)

一応、いろいろと調べてみようとしたものの、名前もわからないのでは情報源になるのは校長しかいない。

けれども、対策の段階でこれ以上貸しを作りたくないという思いから今までどおり過ごして今に至った。

「宗ちゃん、おはよう!」

「おはよう。」

玄関から出てきた佳音から鞄を受け取って代わりにヘルメットを渡す。

そのヘルメットはSサイズなのか、それとも子供用なのか、それすら迷うレベルの小ささでほぼ佳音専用であることがうかがえる。(可能性があるのは翔也ぐらいか。)

佳音が後に乗って腕をまわしたのを確認してエンジンを吹かす。

今日は1週間に一度のバイク通学の日だった。


実はバイクを買ってから宗と佳音は1つの約束をしていた。

それは、「週に1回はバイクで通学する」というものだ。

名目上は宗の腕を上げるためだとか、早く学校にいけるだとかそういった理由を上げていたが、本心は宗に抱きついたまま登下校ができるのが嬉しくてたまらないのだろう。

最初、宗がその提案を受けた時は不必要だと一蹴したものの、何度ものアピールによって仕方なく折れた形だ。

ちなみに、サイズ的には父親が小さな子供を乗せるために運転手の腕と腕の間に座ったまま運転することもなんとか可能だったりするのだが、ギリギリのプライドとの協議の結果それは却下となった。

最も、現状でも仲の良い兄と妹で認識されてしまうのだが。

学校まで直線距離で20分から30分。普段が1時間ほどかかっていることを考えると確かに効率はよかった。

最大の懸念だったバイク通学の許可だが、2つ返事で許可を貰えた。

私立だったこともあって、4輪および2輪に関しては駐車場があいている限りは使ってもいいということらしい。何とも緩い学校であった。

「そういえば、今日留学生がくるんだよね?」

「ああ。一応名前だけは聞いてあるよ。ケントだって。」

「宗ちゃんのクラスに来るってことは同い年?」

「確か同い年とは言っていたな。ただ、成績はかなりいいんじゃないか?飛び級ぐらいはしてそうだな。」

実は成績が悪くてもいろいろな条件が合えば、短期留学をすることは可能だったりするのだが、実はこの宗の思いこみにケントが合致していたため、この誤解が解けるのはずいぶん先だったりする。

「私とどっちが頭いいかな?」

「正直わからんな。大学レベルまで行ってればまた学力も変わってくるだろうし、そもそも学習要領が違うから勝負にならないだろ。英語とかまず勝てないだろうからな。」

「確かにネイティブに勝つのは少々無理がありそうだね。」

宗の持っている情報の少なさもあってか留学生の話に関してはこの程度で終了した。

話題が変わった2人が話していたことに関しては特記する事項はない。あえて一言いうならば、のろけは全く変わらず健在だったという程度か。



宗は佳音と別れて自分の教室に向かった。

若干ざわついているのはやはり留学生が今日来るからであろうか。

「よっ、宗。おまえ留学生のことについて何か知ってるか?」

その中でざわつきのおもな原因となっている男女数人のグループが宗を会話の輪に加えた。(余談だが、このメンバーが普段クラスの中でつるんでいるメンバーだったりする。)

「名前ぐらいは聞いてるけど、それ以上は聞いてないな。」

「名前知ってるのかよ!教えろよ。」

「宗くん、もったいぶらずに教えて~。」

すぐさま食いついてくる仲間達。最も、宗も隠そうと思っていたわけではないのだが。

「ケントだって。それ以上は同年代である以上は聞いてないよ。」

ケントって言うんだ!と餌を与えられて騒ぐクラスメイトを少々醒めた目で見ていた宗だったが、その現実逃避も先生が来たことによって意味を成さなくなった。

「今から、留学生を紹介するぞ。ケント、入ってきていいぞ。」

その先生の言葉でドアが開けられて金髪の青年が教室に入ってきた。その瞬間女子からはキャーという叫び声が、男子からは驚きの声がそれぞれ上がる。原因は彼の美貌であろうか。

「Kent Brownだ。ケントと呼んでくれよ。」

その青年、ケントからが話したのは多少癖は残っているものの、聞きとりやすい日本語だった。。その気さくなしゃべり方と外見はクラスメイトに気に入られるには十分だった。

「ケントくんは、アメリカのニューヨークから来たらしい。2週間ほど一緒にすごすことになるから、仲良くしろよ。…って、いわなくても、お前らなら大丈夫だな。

ケントくん、真ん中に席が空いてるだろう。そこに座ってくれ。右に座ってるのが君のバディとなる宗くんだ。」

その案内を受けてケントは宗の隣に座る。

「君がソウかい?ケントだ。よろしくな。」

「ああ。ケント、よろしく頼むよ。」

この会話が2人の初対話になった。

…けれども、もっと深く話すのはケントに対するクラスメイトの詮索を振り切ってからになる。


「みんな俺に興味津々みたいで、うれしいぜ。」

「ケントはそれで疲れないのか?」

最初こそぎこちなさはあったものの…みたいなお約束はなく、ほとんど最初からこの調子で2人は会話をしていた。

やはり、ケントのとっつきやすい話し方は人の心を開くようであった。現にあれほど面倒そうな顔をしていた宗だが、単純にこの友人と付き合うという面にだけ絞ればかなり歓迎した心持ちになっていた。

「俺は大丈夫だぜ。最初からこれぐらいのことは予想済みだったからな~。むしろ、俺と一緒にいるソウの方が大変なんじゃないか?」

「まあ、正直参りそうだな。けど、おまえと話しているのは楽しいし、何よりこれが僕の役目だよ。」

「俺が逆の立場ならギブアップしてそうだ。そういや、これからどこに行くんだ?」

「この2週間の間、僕が所属してる部活に入るんだろ?今から、そこに案内するよ。」

「おお!ソウ、話は聞いてるぜ。何でも部活の扱いながら会社を設立してるらしいじゃねぇか。」

「話したのはあの校長か?まったくそんなこと話さなくていいのに…。」

「いや、話自体は上…上の方である校長先生から聞いたんだよ。」

その言葉を聞いて、流れに違和感を感じたそうだったが、日本語が完璧なわけじゃないだろうとあえて指摘はしなかった。

「やっぱりか。まだ、なんの実績も残してないのに会社のことだけ話されても困るのになぁ。」

「それでもすげぇよ。高校生で会社を立ち上げるなんて、何を作るつもりなんだ?」

「一応、ソフトウェアかハード関連になるのかな。まあ、設立が目的だったからそっちは副次的なものだ。」

副次的?とケントは疑問を持ったものの、部室にたどり着いてしまったため、その質問は棚上げとなった。

「佳音、翔也、あかり。例の留学生を連れてきたぞ。」

「ソウと同じクラスに留学してるケントだ。よろしくな。」

宗につれられて部室に入ったケントは教室に入った時と同じく、まったく臆することなく自己紹介をするケント。その姿にむしろ翔也の方があっけにとられていたぐらいだった。

「宗ちゃんの彼氏、佳音だよ。ケントくんよろしくね。」

「お、ソウって彼女持ちだったのか!ソウ、早く言ってくれよな!

カノン、よろしくな。あと、ケントくんって違和感あるからケントで頼むわ。」

「1年のあかりです。私もケント…って読んでいいんですか?」

「おう、もちろんだ。1年だからって遠慮することはないぜ。」

「1年の翔也です。よろしくお願いします。」

「ショウヤか。よろしくな。それにしても、ソウ。ここってレベル高ぇな。」

「レベル?」

まったく予想もしてなかった言葉に宗の方が戸惑いを見せる。その姿を見てわかってねぇなとも言いたげな顔で宗の耳もとにこうつぶやいた。

「おまえ、ハーレム作ってるんだろ?貧乳の彼女に可愛い後輩、それに僕っ子か。最後は男装までしてるとは…さすがだな!」

その言葉に宗は頭を抱えそうになる衝動を必死に抑えなくてはならなかった。いくつか訂正する点はあったが、宗にとって…いや、何より翔也のプライドを考えて1つだけいわなくてはいけないことがあった。

半分ため息をつきながら、テンションがあがっているケントの肩に手を置いて宗はこう言った。

「…ケント、翔也は…男だ。」

「何だと!?」

この事実がケントにとって一番のカルチャーショックだったということは、当分の間翔也のトラウマとなるのだった。

ちなみに、どさくさにまぎれて強く追求されなかったものの、ケントはかなり日本のある特定分野の文化についてかなり詳しいようだった。


更新が遅れてしまいすいませんでした。

…1話だけ更新であと放置というやり方はどこかにデジャブを感じました。


新キャラとなるケントの登場です。

実は、普段書いていて4人でいるときのあかりと翔也が書き分けられないという悩みがあったのですが、その反省点を生かしてできるだけしゃべり方に特徴をつけたつもりですが、いかがでしたか?作者がわかりやすいだけだったら悲しいのですが。


当分は5人をメインで進んでいきます。

先に言っておきますと、ずっと5人という形にはならないと思います。

あくまで臨時メンバーであり、メインはあの4人です。

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