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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第5章「留学生編」
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第28話「嵐の訪問通知」

あるアメリカのオフィス。

そこはニューヨークにある中心街のビルにあった。

中にいるのは500人を超える規模の社員。そして、一見他の社員と区別がつかないような働き方をしている青年が1人。

よくみるとそこにつまれている書類は他の社員の比ではなく、隣には秘書の思われる女性もいた。

「社長。10時から会議が入っております。」

明らかに10歳以上年の離れた少年に対して秘書は言う。その言葉を書類から目を離さずに面倒そうに青年は返事をした。

「わかってるって。俺としてはこんな書類よりも研究所にこもっていたいんだがな。」

この青年こそ、社員500人以上を束ねる大企業の社長なのであった。

本来なら数千人規模でやっててもいいほどの営業利益を上げていながら、必要最低限でいいという社長のポリシーの元働いているのはわずか500人にすぎない。

それも、数年間の実務経験など持っていて当たり前。その上でどれだけの技術と発想力を持っているか。ここで働いている社員はそういったITのプロフェッショナルばかりである。

しかしながら働いている人の中には青年の年齢よりも低い社員だっている。本来なら考えられないことだが、技術優先のこの会社に学歴などいらない。この業界で生きていけるかどうか、それが働ける条件だった。

そういった事情もあって、10代から70歳を超える社員が働いているこの会社だが、その社員たちの根本的な思いは1つ。

趣味で始めたソフトウェア開発を起点にその人望と技術力でここまでの大企業に育て上げた社長と一緒に働きたい。その強制されていない思いはこの会社の大きな強みだった。

閑話休題。

会議に時間を追われながら、必死に書類と戦っていた社長に1つの電話がかかってきた。

もともと、会社に関わる電話は基本的に直接携帯にかかってくることはない。社長の携帯を知っているのは、一部の幹部とプライベートの知り合い。

しかし、かけてきた相手はそのどちらにも分類されない人物だった。

青年は電話の相手を確認して「answer」とだけつぶやく。それだけで青年の耳にかかったヘッドセットは通話状態に入った。

「どもっす。」

友達と話すような返事。

「相変わらず、軽いやつだな。本来の私の立場を考えればそんなことは言えないはずだが?」

けれども、通話の相手は知り合いではあるが、友達とはいえない人物だった。

「そんなのは昔からじゃないですか。それで、何の用事ですかね?」

だが、青年は全く懲りた様子はない。最も、通話相手の男性もそれは諦めているようだったが。

「ビジネスだ。少し出張をお願いしたい。」

「どのぐらいですか?」

「だいたい1月。明日の9時のフライトを取ってある。わかったな?」

「速いっすねー。でも、俺も会社の方の仕事があるんですが?」

「私からの電話の時点で優先するべきはどちらかわかるだろう?」

「別に俺はいいなりじゃないですよ。ビジネスなら俺を動かす条件でも提示してください。10時から会議があるんで手短に。」

「場所は小さな島国だ。技術は発達してるがね。仕事内容としては1人の人間を捕獲して欲しいというものだ。」

「誰ですかね?」

「ジョン・クロックで通じるか?」

その言葉に今まで全く手を止めなかった青年の動きが一瞬止まる。

「分かりますよ。一応、捕獲したということにはなってはいるものの、実際は逃げられたんですか。」

「国内ならもみ消すことは可能だが、国外ではさすがに身動きが取れないものでね。圧力をかけてもいいんだが、それだと彼の技術なら動きを読まれる可能性がある。

だからこそ、君の出番というわけだ。」

「俺が動く義理はないですよ?もっと適任の人がいるでしょう。」

「おや、身内の不手際は身内ないで片を付けるのが常識ってものじゃないのかね?」

その言葉に今まで止まることなく動かしていた手を青年は初めて止めた。それは仕事をしながらでは話ができないほどの驚きがあったということを示していた。

「…そういえば、そちらにはバレているんでしたね。」

「私達の情報網を舐めてもらって困るな。君たちのお遊び程度動きは把握済みだよ。」

「把握済みといいながらも、所属の半分も行方がつかめていないじゃないですか?

まあ、それはおいておきましょう。言われた通り俺が仕事をしましょう。けれども、そこはギブ・アンド・テイク。ある程度のわがままは通さしてもらいますよ。」

「構わん。それでは、必要なものに関してはいつも通りの方法で届ける。そこに書類も入っているから目を通しておけ。」

それだけ言って電話は切れる。そして、仕事をほおっておいたままデスクから立ち上がった。

「社長?いかがなさいましたか?」

秘書の問いかけに青年は端的に答える。

「新しいビジネスだよ。少し出かけてくる。」

その言葉に深々と礼をして見送る秘書。

時刻は既に10時を過ぎていた。




アメリカで1人の青年を動かした電話から約10時間後。

本来ならば、授業を受けている時間。だが、宗は校長室にいた。

「あれは…どういうことですか?」

向かい側に座っているのは校長。

「どういうことかと言われても困るな。私は端的に要件を伝えただけだ。」

「理由が知りたいのですが。」

「理由と言われても、知り合いのコネで3週間ほど留学生を受け入れて欲しいと言われたからそれに応じただけだが?」

「コネ…ですか。それで、どうして僕を指定されたんですか?」

「君を指定した理由か。面白そうだからではいけないかね?」

「承服できません。」

「承服とは…面白い言葉を使うね。嫌味のつもりかな。

まあ、面白いからというのは冗談だが、先方から指定されてね。何故か君の名前を指定されたんだよ。」

無言で宗は校長を見つめる。校長の目はこれ以上言うつもりはないという意思を強く示していた。

「…分かりました。他に伝えていただける情報がありましたら、お願いします。

「ああ、もちろんだ。さて、呼び出して悪かったな。授業に戻りなさい。」

校長も授業中ということに多少は罪悪感を感じていたのだろう、すぐに宗を開放した。

誰1人生徒が歩いていない廊下を歩く宗。その顔は険しさに包まれていた。



「そういえば、留学生がくるそうだな。」

放課後の部室。今までよりも規模の大きくなった部屋にいままでと変わらないまったりとした空気で過ごしていた3人に宗は爆弾発言を放り込んだ。

「え?そうなの?宗ちゃん。」

「ああ。来るのは来週の月曜から、僕のクラスに来るらしい。」

「先生たちはそんなこと全く言ってませんでしたよ。そうですよね、翔也くん?」

「はい。宗さんのクラスだけ伝えられたんですか?」

「いや、きっと僕しか知らないだろうな。伝えられるとしても他の生徒には明日以降だろう。」

「それってどういうこと…まさか、校長先生ですか?」

「あかり、鋭いな。その通りだ。授業中に校長から呼び出しがあった時は何事かと思えば案の定面倒な話だったよ。」

「面倒といっても、僕達には影響がないように思えるのですが。」

「それがそうは問屋が卸さないんだよ。その留学生は、この学校にいる3週間、僕達のこの部活に所属するそうだ。」

「「「え?」」」

3つの驚きが輪唱を奏でる。だが、宗にとってはその程度は予想範囲内だった。

「一応、同じクラスに所属することになってパートナーとして動く僕が所属している部活のほうがいいだろうという名目らしいが…大方この部活に入ることが目的だろうな。

一体どういう思惑かわからんが、正直面倒なことになりそうだ。」

誰からも返事は帰って来なかったが、3人の思いは宗が既に代弁していた。

新章開幕です。


…読んでいてわかったと思いますが、僕って表現下手ですね。

明らかに前半の話と後半の話の関連が見え見えですよね?


できるだけこういった伏線になってないかもしれませんがはあとからとか、2回目に読んだ時に気づいてもらえるのが理想なんですが、なかなかうまく行かないものですね。


というわけで、開き直っていきます。

世界観が広がりました!いや、いきなり広げすぎた感じもしますが。

基本的な行動範囲は変わらないのでご安心ください。

いろいろと騒動が起こる気がしますが…というか、起こらないと話が進みませんね。

ちゃんと、恋愛要素も考えてあります!

根本的な「恋愛」という軸は、ずれないようにという宣言通りできているのかどうか、最後まで読んでいただいて教えてくださるとありがたいです。

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