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昔の親友、今彼女  作者: twilight
第2章「同好会編」
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第11話「乱入者」

「はい、宗ちゃん。お弁当。」

「お、ありがとう。」

今日は、部活3日目。まだ、学校は午前中までなので、部室で弁当を食べることとなった。

僕の隣に佳音、佳音の向かい側に翔也が座っていた。

「宗先輩、先輩の弁当って佳音さんにつくってもらってるんですか?」

「いや、厳密には違う。僕が作ってもらってるのは佳音のお母さんにだな。」

「うぅ…私だって作るよ!」

「嘘つけ。いつも、学校行く直前に起きるくせに。」

「ということは、朝は二人で登校ですか?」

「そうだよ~。私達ラブラブだからね!」

「…翔也、安心してくれ。一緒に登校してるのは事実だが、そこから先はこいつの妄想だ。」

「違うよ。いつも、腕くんで登校してるじゃん。」

「最近は断ってるだろうが。やってて、すごく恥ずかしいんだよ。」

何気ないやり取りだが、翔也の心には引っかかるものがあった。だが、それが何なのかは自分でも明言したくない。そんな気持ちだった。

「お二人って付き合ってるんですか?」

だからだろう。こんな質問をしてしまったのは。

「もちろん。ね、宗ちゃん?」

「否定はできない…が、佳音に説明を頼むとある事ない事言われそうだからな。

まあ、親友が恋……」

宗は説明をしていたが、それはもう翔也の心の中に届いて来なかった。

二人はカップルである。その事実が翔也の胸に残る。

「…という経緯なんだが、わかったか?」

「は、はい。」

宗の言葉で我に返って返事をする翔也。幸い、誰も違和感を感じなかったようだった。

「宗ちゃんは、流れが簡易的すぎるんだよ。あれじゃ、伝えたいことが全く伝わってないよ。

得に春休みの話とか。」

「絶対に話すかよ。もう、黒歴史扱いだ。」

「二人だけの秘密ってことね。

で、話題買えるとして、翔也くん、学校生活はどう?」

それまでの惚気から、急に真面目な話になる。というか、こちらが本題だったはずだ。

「そうですね…まだ、学校始まってそんなに経ってないですけどいきなり友達を作るのは難しいです。

やっぱり、恐怖のほうが先行しちゃって。」

「だよねぇ。あれだけのことがあったわけだもんね。」

「そういえば疑問なんですが、どうやってお二人は僕の過去を知ったんですか?」

「あー、それね。私が病院のカルテを借りてきた。」

「へ?」

つい、間抜けな声が出てしまうが普通に考えたら冗談と取れる答えであるから、一概に翔也を責めることはできないだろう。

「残念ながら、こいつが言うことは本当なんだよ。

ちょっと話は長くなるんだが、佳音は普段の言動はともかく勉強関連の知識だけは比じゃないんだ。

それ故に大学飛び級の案も会ったぐらいだからな。けれども、それを蹴って学校からの勧誘でここにいるんだ。

この部室も先生たちに頼んだものらしい。職員側からしたら弱みを握られてるようなものだな。

で、その知力の高さからいくつかの研究所にも所属してて、研究という名目で情報を持ってこれるんだ。

こいつと一緒にいて、プライバシーって無いんじゃないかと本当に思うようになってきたぐらいだ。」

「なるほど…。まさか、佳音さんがそんなにすごい方だったとは。」

「おお、宗ちゃん。初めて尊敬されたかもしれないよ!」

「大丈夫、きっと気のせいだ。というか、そんなことでいちいち喜ぶなよ。」

「だって、研究所とかじゃ妬まれることはあっても、尊敬はほとんどなかったから。」

丁度その時、携帯の着信音が鳴り響く。聞き覚えのない音、翔也の携帯だった。

「あ、すいません。ちょっと話してきます。」

すぐに着信に気づいて、駆け足で廊下に出て数十秒後。

翔也が入ってきたと同時に、翔也を押し倒すように後ろから抱きついてきた女子1名。

「ちょっと…佐藤さん。今部活中だって…。」

「だって、翔也くんに会いたいんだもん。」

翔也が弱々しく文句を言うものの、そんなことをきにするような女子ではないようだ。

「翔也、そちらの女子は?」

僕が出来るだけ遠慮がちに言うと、翔也も自己紹介をしていないことに気づいて返事を返してくれた。

「こちらは、僕と同じクラスの佐藤さんです。」

「こんにちは、先輩。佐藤あかりです。こちらの部活に翔也くんは所属しているのですよね?」

「ああ。もしかして、入部希望?」

「はい。そうです。」

「この部活が何の活動をしてるか知ってるか?」

「いえ。ですが、翔也くんが所属してるならどんな活動でも大丈夫です。」

これは、会ったことのないタイプの…いや、ところどころ佳音に似てるか。

僕は翔也の顔を見る。だが、状況を察してる様子ではなかった。仕方なく、僕が提案する。

「えーと、佐藤さん。少し翔也くんと話をしたいので、ここで待っていただいてもいいですか?」

「わかりました。」「え?」

僕の言葉に全く違った反応をする2人。

だが、僕はその言葉にも構わず、翔也の腕を引っ張って外に連れ出す。

…後ろから軽い殺気を感じたが、気のせいだと思いたい。


「どうしたんですか?宗先輩。」

「おまえ、まだ廊下に出てきてもらった意味がわからないのか?」

「はい…。すいません。」

「まあいいか。とりあえず、佐藤さんが部活に入るかどうかはお前次第だぞ。

この部活に入るってことは佳音とお前についての秘密を知るってことだ。

佳音については、基本的にオープンなやつだから、いいとして問題はお前だ。

おまえは、クラスメイトに知られてもいいのか?」

「あ…。」

僕の言葉でやっと重大さに気づいた翔也。そして、少し考えこんだあとこう言った。

「…いいです。

佐藤さんは、クラスの中でも一番に声をかけてくれて仲良くしてくれます。

それが本当に友達としてなのかどうかは疑問ですけど、僕を大切にしてくれてることは確かです。

これだけ仲良くしてくれる佐藤さんですら、受け入れてくれなかったら他の友達に打ち明けるなんてできませんから。」

「おまえが、そう言うならいいか。じゃあ、佐藤さんにすべて話すぞ。」

「はい、宗先輩。よろしくお願い致します。」

そんな密談を交わして、部室に入っていく僕と翔也。

そこには、先程会ったとは思えないほどフレンドリーに会話をする佳音と佐藤さんの姿があった。

「あかりってどこに住んでるの?」

「うちの家は、学校から少し下ったところですよ。歩いて15分ぐらいですかね。

そういう佳音はどこにすんでるのですか?」

口調は微妙に敬語なのに、名前は呼び捨て。何か違和感がある会話だった。

「えーとね…あ、宗ちゃんおかえり。」

「ただいま。」

僕の姿に気づいて手をふる佳音と軽くお辞儀をする佐藤さん。

僕と翔也も先ほどまで座っていた位置に座り直す。

「佐藤さん。君の入部についてなんだけど…」

「はい。」

「少し話を聞いてもらってからもう一度聞いてもいいかな?」

「はい、もちろんです。」

「実は、翔也が中学まで女子として過ごしてたっていう話なんだが。」

「なるほど。それであんなに可愛らしいのですか。納得です。」

「納得早すぎだろ!もうちょっと疑問を持てよ!」

あまりの壮大なボケに柄にも無くツッコミを入れる僕。だが、それはボケじゃなかったらしい。

「いえ。翔也くんの可愛さに一目惚れしたので、その理由がわかってすごくすっきりしました。

これで、なおさら翔也くんのことを愛せそうです。先輩、ありがとうございます。」

「どういたしまして…じゃねぇよ!…じゃあ、佳音が男子だったっていう話はどうだ?」

「なんと!佳音、そうだったんですか?」

「うん。もともと小柄だったから、外見上は困らなかったけどね。」

「それは、びっくりです。ということは、ここは性転換の悩みについてのフォーラムみたいなものですか?」

「そんなに大体的なものじゃないが、言いたいことは同じだな。

今までの返事を聞いてて、大体想像がつくが入部はどうする?」

「もちろん、入部させて下さい。」

「私はOKだよ。」

「僕も反対理由はない。翔也もいいよな?」

「はい。歓迎です。」

「よろしくお願い致します。というわけで、翔也くん。私の愛を受け取ってくださいね!」

「うわぁ…佐藤さん、離れて離れて。」

「イヤーだ。翔也くんが、名前で呼んでくれるまで離さないよっ!」

「そんなぁ…。」

この後、10分ほどの交渉によってあかりさんという呼び方で妥協してもらった翔也。

抱きつかれて疲労感を感じている翔也にどこかしらの共感を覚えた宗だった。

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