――epilogue――
その日は雨だった。
しかし曇天は空高く、シトシトと優しい雨を降らせている。
氷室遊弥は泣きじゃくり、セレアも涙を見せていた。
エレインは表情を暗くしていた。
麻宮神父は深い哀悼の念を表情に湛えていた。
水沢堂魁に至っては、どこか怒っている顔のようにも見えた。
一人去り、二人去り、三人、四人と去って行き、その場には美誠と子供達二人が残った。
何を語るわけでもなく、泣くわけでもなく、ただ表情なく一点をその母子は見つめていた。
ここはクリスチャン共同墓地。
1980~2020没.
ラフィン=ジーン・ダルタニアスここに眠る――。
十字架を掲げた墓石には、その文字が刻まれていた。
この墓石の下の土の中で、ラフィンは永遠の眠りに就いている。
最後に何を告げるでもなく、何の予兆もなく、突然に、呆気なく、ラフィンは死んだ。
死んでしまった。
短命のクローン体――その肩書きを背負って彼は生きてきた。
しかし一体それがいつになるのかも分からないまま、ラフィンは美誠を心の底から愛し、自分の血を受け継ぐ二人の子供を残してくれた。
彼の最後の死に顔はとても穏やかなものだった。
最初は取り乱した美誠だったが、今は不思議なくらいに落ち着いている。
まだ小さいと言える、子供の手を握り締めて、ラフィンの墓石に佇んでいたが、ふと我に返ったように顔を上げると美誠は、ゆっくりと墓石に背を向けた。
そして子供達と一緒に歩き出した彼女に、一陣の風が吹いた。
『ありがとう――』
風は優しく美誠の漆黒の髪を撫で上げると、吹き抜けていった。
美誠は真っ直ぐ前を見据えて、静かに歩を進める。
彼女が墓地を去った後、雨は上がり雲間から天の光が一筋もれて、ラフィンの墓石に射し込んだ……。
――END――
約一年間、読んで頂いて心からの感謝を。




