deta,85:随分男前の顔になったじゃないか
そして7:00AM――。
悠貴美誠とラフィン=ジーン・ダルタニアスのカップルも、ようやく目を覚ました。
「おはようラフィン……」
「ああ。おはよう美誠」
互いにソフトタッチなキスで朝の挨拶とする。
「今日もいい天気だね」
美誠は窓の方へと顔をめぐらせる。
「美誠。今日は少しの間、私は書斎にこもる」
「ん? どうして?」
どちらからともなく、まだ全裸姿の上半身を――美誠は掛けてあるタオルケットで胸元を隠しながら――起こす。
「今度はエレインの方の“ノックアウト遺伝子”注射を作成して、念には念でエレインの怪力能力を遺伝子改変で破壊させて欠失させる」
「……ん?」
「つまり、エレインの怪力を無効化させる注射だ」
「なるほど。うん、そうだね。その方が今後も安全だもんね」
二人は言葉を交わしながら、衣服を着込む。
「ひとまずセレアの様子も確認しておきたいので、朝食作りを先に行いますか」
「ああ、だな」
改めてお互い笑顔を向けると、一緒に部屋を出て階下のキッチンへと向かった。
服を着込むと二人の口調は男勝りと敬語に、それぞれ戻るのであった……。
本日の朝食メニューは、クロワッサンにスパニッシュオムレツ、トマトサラダ、フルーツスムージーだ。
丁度朝食をテーブルに並べている時に、水沢堂魁とセレア・メイランドのカップルが起き出してきた。
「おはようございますセレア。調子はいかがですか?」
ラフィンがエプロンを脱ぎながら、彼女へと訊ねる。
「今まで生きてきた中で、断トツで最高の朝よ! 本当にありがとうラフィン兄さん……!」
「そうですか。セレアの喜ぶ顔が何よりもの褒美ですよ。これは私のオリジナルである父の希望でもありましたからね」
ラフィンとセレアは軽くハグすると、テーブルへと彼女は戻る。
「素敵! これ全部、ミコトとラフィン兄さんが作ったの!?」
「ああ。いつものことだよ」
テーブルの上の朝食に目を輝かせるセレアに、美誠が笑顔で答える。
「もう体力を補う薬を服用せずに済むと思うと、こんなに嬉しいことはないわ!」
「ええ。もうあなたは完全に健康体です」
「おかげでセレアといろんな所へデートに行けるようになったわ」
魁は言いながら、セレアの隣の席に座る。
そこへ麻宮神父が姿を現した。
「おやおや。今朝は一段と賑やかだと思ったら、新しいお客さんかい?」
「おはようお父さん! 彼女はセレア。行き場所がないから空き部屋を与えてもいいかなぁ?」
「そうかい。行き場所が?」
麻宮神父に訊ねられ、セレアは椅子から立ち上がって挨拶をする。
「初めまして神父様。私はセレア・メイランドと申します」
「セレア、か。私は麻宮清と言う」
麻宮神父はニコニコと笑顔を湛えながらそう口にする。
「神父様。セレアは縁あって、私の義理の妹に当たる立場です」
「そうかね! ダルタニアス君の妹さんか。では今後ともよろしく」
「はい! プリースト!」
セレアは感激を露わに首肯する。
麻宮神父は、セレアのことを特別詮索することなく、笑顔で迎え入れてくれた。
「ありがとうございます神父様……」
「何も気にしなくてもいいよ。さぁ、食事を頂こうか」
ラフィンの礼に対して、そう麻宮神父は返すとみんなは朝食を始めた。
「しかしながら水沢堂君。随分男前な顔になったじゃないか」
「あー、分かる~? さすがは神父! ちゃんと言葉を分かってるわね!」
「お母様とお姉様が見た時に、ショックで卒倒しなければ良いが」
「グ……ッ!」
麻宮神父からの鋭い指摘に、さすがの魁も言葉を詰まらせた。
この様子に美誠は愉快がって、笑い出さずにはいられなかった。
「そこ! 笑うな!!」
そんな彼女を、魁は賺さず睥睨するのだった。
「へぇ。“ノックアウト遺伝子”注射を?」
後部座席に座る美誠の言葉に、魁は車を運転しながら口にする。
助手席に座っているセレアは車窓の景色が何もかも珍しくて、話どころではない。
「ああ。万が一を考えると危険だからな」
「確かに、その方がいいわね」
美誠と魁は言葉を交し合う。
只今、美誠と魁とセレアは、エレイン・ローレンスが入院している病院へと向かっている。
氷室遊弥と、“付き添い”を交代する為だ。
「地下牢からエレインに助けてもらったその時は、便利な能力だと思ったけど……あの暴走状態をも目の前にしちまったら、あって良いものではないと悟ったからな」
「だけど、まさかカイがラフィン兄さんの傭兵だったと知った時は驚いたわ」
ここでようやく口を開くセレアだったが、この言葉に魁は目をつり上げる。
「傭兵なんかじゃないわよ! あたしはあの子の恩人! あたしの立場をいいことに、いろいろ頼まれた結果よ! まぁ、その働きの分相応のお金は貰ってるから別にいいんだけど」
「え! 魁、ラフィンから金巻き上げてたのか!?」
「誤解を招くような失礼な言い方しないで頂戴! 便利屋としての仕事よ!」
美誠の言葉に、魁は更に目をつり上げた。




