Data,7:冗談じゃない!
「俺が不気味か? 俺はクローンで生まれた。だがDNA欠落でこのザマだ。あの男さえ我々に協力してくれれば俺は未だにこんな風でいずに済むんだ!」
男の言葉に、悠貴美誠は顔を顰めた。
「クローン……!? どういう事だ!」
すると白けた様な表情で美誠をその片目のみで睥睨した。
「そんな事、あいつと一緒にいるお前が一番詳しい筈だろう! 我々と一緒に来て知っている事を全部吐くんだ!」
そうして男は再び美誠に手を伸ばしてきた。
「うわ……! 来るなっ! 俺は何も知らない! 来るなー!!」
美誠は男の顔を殴り飛ばすと、踵を返して必死に人通りまで走った。
そして大通りを走っているタクシーを止めると、慌てて乗り込んで寮へと行き先を告げた。
帰っても、先程あった出来事は誰にも言えずにいた。
おそらくは、きっと誰も信じてくれないだろうからだ。
何しろ、当の本人さえ信じられずに混乱している。
美誠は布団に潜り込んで思案した。
どういうことだ?
あいつ何かヤバイ事に関わっていたのか! 冗談じゃない!
巻き添えなんか俺はゴメンだ!
もうあいつに会うのはやめよう。
次の日、学校の帰りにまたあの白いオウムが現われた。
側にあった低い木の枝に止まり、こちらを見ている。
一緒にいた満利奈と望と梓がはしゃぎ声を上げる。
美誠は再度現われたオウムに違和感を感じ、まじまじと観察すると。
首輪に黒光りする小型カメラが付いているのに気付く。
これでどうして昨日、片目の男が自分の姿と名前を知っていたのかも理解出来た。
このオウムはクローンで、昨日の奴がこいつを使って探らせたんだ……!
それで教会で、ダルタニアスさんが慌てた理由が分かった!
美誠は足元の石を拾うと、オウムに向かって投げつけて追い払った。
そんな美誠の行動にみんな驚きを露にする。
「どうしたの美誠。あんなに動物好きなのに」
「飛んで行っちゃった……」
「何してんねん! せっかく可愛かったんに!」
「あれは動物じゃない」
三人から責められて、美誠は素っ気なく答えてそのまま歩き出した。
美誠の様子に、三人は小首を傾げながら顔を見合わせた。
それから一週間後。
「何や、二、三日前からこの学校の外うろついとるサングラスの変な男がおるらしいで」
寮の部屋でくつろいでいると、梓が颯爽と現われて言った。
彼女の言葉に、美誠は体を硬くする。
寮は学校の敷地内にあるのだ。
あいつだ! あいつどうして俺の居場所が分かった――。
ハッとする美誠。
そうか! あのオウムのせいだ! このままだと捕まる!
そう思うと、無性にラフィンにムカついてきた美誠。
このままじゃ安心して生活もままならない。
どうにかしてもらおうと美誠は、次の日学校をさぼって周囲に注意しながら教会へと向かった。
だがしかし、再び片目の男が現われた。
「俺の目を誤魔化せたとでも?」
「チッ! いい加減にしろ! 本当に俺は何も知らない! 俺とあいつが会ったのもこの前で三度目だ!」
「口先だけではどうとでも言える。とにかく俺と一緒に本部に来れば……」
「行ったって一緒だぜ! 分かんねーもんをどう答えろってんだ!」
「お前に自白剤を与えれば答えははっきりする。例え何も知らなかったとしても、その後のお前の利用法はある。何せ警戒心の強いあいつが珍しく受け入れた人間なのだ。お前を操ってあいつを騙す事も可能だ」
「ふざけるな! あいつがこんなトラブル野郎だと分かった以上、こっちからお断りだ! 俺には俺の人生があるんだ! 巻き添えはゴメンだね!!」
美誠はそう怒鳴ると、その場を立ち去ろうとした。
「お前の人生に興味はない。ダルタニアスとは自分からお断りだと? その割にはまたあいつの元へ行こうとしているではないか。何と説得力のない発言だ」
「るせぇ! 俺はこんな目に遭って迷惑してっからきっぱりと縁を切りに行くだけ……」
そう怒鳴りながら振り返った美誠は、目を見開いた。
「ダルタニアスさえ素直にクローンを受け入れていれば我々“奇形”がこんな不便な目に合わずに済むのだ。あいつに今最も身近な人間であるお前には、自分の人生よりも我々クローンの人生に協力してもらおう」
そう静かに言った男は手に持った銃を、美誠に向けていた。
「……冗談じゃないっっ!!」
そう叫ぶや否や、美誠は勢い良く走り出した。
発射された銃弾を必死に意味も分からず避けながら、袋小路に逃げ込んでしまう。
途端、あの白いオウムが美誠に襲いかかって来た。
「く……っ、何で俺が……!!」
美誠は呻るように言うと、ガッとオウムを捕まえた。
そしてそのオウムを男めがけて思い切り投げつける。
「何で俺がこんな目に合わなきゃなんねぇんだーっっ!!」
袋小路の出入口を男に塞がれていたので、オウムによって視界を奪われた不意を突いて美誠は男を殴りつける。
「く……! おとなしく……!」
男は言いながら再び銃口を美誠に向けた。
これに自分の視線の高さでもがいていたオウムをまた素早く捕まえると、銃弾の盾にしたのでオウムはそのまま撃たれてしまった。
「大体そうやって俺を撃っちまえば、協力もクソもねぇだろうが!!」
美誠は勢い良く回し蹴りを男にお見舞いし、倒れこんだ男めがけて側にあったドラム缶を倒した。
「ぐあぁ!!」
男はドラム缶の下敷きになる。
美誠はそのまま袋小路から飛び出すと、その場から必死に逃げ出した。
挿絵の色鉛筆……失敗したorz




