deta,77:俺は自分がバカで良かったと思ってますから!!
降車するドアの音に続き、バタバタと走ってくる足音。
リビングの出入り口から姿を現したのは――。
「美誠!!」
「ラフィン!!」
突如険しい表情から、悠貴美誠の顔は喜びのものへと変わる。
「ダルタニアス――……」
そう口の中で呟いたのは、エレイン・ローレンスだった。
しかし気がつくと、彼女の目の前で美誠はラフィン=ジーン・ダルタニアスへと駆け寄り、互いに抱きしめあっていた。
「無事でしたか」
「ああ。遊ちゃんとエレインが助けてくれた!」
「良かった――!」
言うや否やラフィンは、美誠の口唇へと口づけをした。
「!!」
エレインに驚愕とも恐怖ともつかない表情が、顔に貼り付く。
氷室遊弥はその様子に気付いて、そろそろとラフィンと美誠の側へとエレインから離れる。
「はい盛り上がっているとこ、ちょっと失礼~!」
キスをしているラフィンと美誠を突き飛ばして、今度姿を現したのは水沢堂魁だった。
「はぁ~い、セレア。元気してる?」
「カイ!!」
これにエレインは勿論のこと、遊弥も驚く。
「水沢堂さん、うちのセレアを知ってるんスか!?」
「ええ。セレアはあたしの彼女よ♡」
「ええぇえーっ!! 一体いつの間に!?」
最早、混乱することしか出来ない遊弥。
「カイ……どうして……?」
「話せば長いわ。まだ夜のうちにここから出るわよセレア。そしてエレインちゃんも☆」
「男風情が……あたしの名を汚らわしく口にするなあぁぁぁーっ!!」
エレインの怒声が、室内中に響き渡った。
これに背後の彼女へと振り返ったセレア・メイランドは、はと息を呑む。
エレインの眼が、緋色に変わっていたからだ。
「エレイン、落ち着いて――」
「セレアッ!! よくもこのあたしを騙してっ! 裏切ったわね!?」
「違うわ。そんなんじゃ……!」
気が付くと、エレインのみをダイニングに残して、みんな続き間になっているリビングの方へと移動していた。
エレインが鼻息荒く、一歩進むごとに、みんなも一歩後ずさる。
これにピタリと足を止めると突如、エレインは哀しみの表情を露わにした。
「どうして……? どうしてミコトもあたしから離れようとするの……?」
「だって、お前、目が……」
「大丈夫だよミコト。ミコトには何もしないよあたし……だって、ミコトのことを愛してるんだもの」
「――あ、い……!?」
エレインの言葉に、眉宇を寄せる美誠。
「男はみんな、みんなみんなケダモノ!! だからミコト……その男から、ダルタニアスから離れてあたしの傍に来て。いつもみたいに、あたしの手を握って……」
「エレイン……」
美誠は彼女の言葉にふらりと一歩、前進する。
「俺、は……俺は――」
「渡せませんね」
美誠の前進と言葉を遮って、一歩進み出たラフィンが自分の背後に美誠を隠す。
「美誠は私の大切な恋人です」
「あぁぁーっ!? だぁまぁれダルタニアスーッ!!」
再びエレインの双眸を緋色の光を帯びる。
その時、クックックと何者かの忍び笑いが聞こえてきた。
「ヤッベ、鮫島さん来た」
遊弥が口ずさむ。
「玄関前に見慣れぬ車が横付けされていたから、誰の物かと思ったが、まさか本拠地にダルタニアス、貴様が来ているとは……飛んで火に入る、だ」
語りながら、鮫島がダイニングリビングへと入って来た。
「だがしかし……これはこれは、一体そういう組み合わせだ? 氷室……」
「鮫島さん……」
「答えろ氷室ーっ!!」
鮫島が怒声を上げる。
「……」
その場の誰もが黙り込む。
エレインさえも。
鮫島はズボンの両ポケットに両手を突っ込んだ状態で、ユラリと美誠達の前へと進み出る。
そしてゆっくりと片手をポケットから出したかと思うと、その手には銃が握られていた。
銃口は、遊弥に向けられている。
「この小娘を牢から出したのもお前か氷室。一体いつからだ。いつからダルタニアスのメンバーに入ったんだ? ああ!?」
「……すみませんっス鮫島さん」
言うと遊弥は同じく銃を鮫島へと向けた。
今しがた魁から手渡された、溶解銃だ。
「クックック……もしかして俺がこのクソガキのダチを取り込めと命令した時からか? まさかお前がこれほどまでに馬鹿だとは思わなかったよ……ミイラ取りがミイラになるとはなぁ!!」
「俺は自分がバカで良かったと思ってますから!!」
遊弥のこの一言に、鮫島は体を仰け反らせて声高らかに笑い始めた。




