表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
76/94

deta,75:好きなんでしょう? 彼女のことが



『でも、いいんですか!? 状況は何かと複雑になりますよ!?』


「構いません。うちの水沢と話し合って決定したことです」


「“うちの”って何よ!」


 ラフィン=ジーン・ダルタニアスの脇から、もれなく水沢堂魁(みさわどうかい)が口を挟む。


『エレインってどういうこったよ!? エレインがここにいるのか!? つかそもそもここは一体どこなんだよ!?』


『ほらね……』


 騒ぎ始めた悠貴美誠に、氷室遊弥がガックリと頭を項垂れる様子が想像出来た。


『何で遊ちゃんまでがエレインのこと知ってんだよ!?』


『エレインはうちのお嬢なんだよ……』


『おじょお!? おじょおって何だよ!? 妹か何かの類か!?』


『そうだと言っても過言ではない――』


「詳細は後です。鮫島(さめじま)がそこにいないのなら脱走は今の内です。もし今、鮫島が戻って来たら牢の中で射殺されてしまいます」


『あ、ああ、そうだな……何だかよく分かんねぇけど……』


『じゃあお嬢を呼んできます。電話、いったん切りますよ?』


「ええ、我々もそちらへ向かいます」


 ラフィンの言葉を最後に、遊弥は通話を終了させた。


「じゃあ、ライフサイエンスに進路を変更するわよ」


「はい、お願いします」


 魁の確認に、ラフィンは首肯した。




「心細いかも知れないけど、もう少しここで待っててな悠貴さん。今、助っ人を呼んでくるから……」


「助っ人ってエレインだろう? エレインが来たところで何も変わんねーんじゃ――」


「いいから今は黙って言う通りにして悠貴さん!」


 遊弥の大声に、不満そうに口を噤む美誠。


「君を助けないと、俺の彼女である(あずさ)を泣かせてしまうからさ」


 梓――藤井梓(ふじいあずさ)は、美誠の親友の一人だ。


「……ああ。分かった。待ってる」


 これに遊弥は引き攣った笑顔を見せると、踵を返す。


「必ずそこから出すからね!」


 その言葉を残して、遊弥はその場から走り去った。

 また暗闇が、美誠を包み込んだ。


「一体全体、どういうこったよ……ラフィン……」


 彼女の小さな呟きは、闇の中に吸収された。




「んーっ! 良く寝たぁ~!!」


 セレア・メイランドのベッドの中で、上半身を起こして伸びをするエレイン・ローレンス。

 これにセレアも上半身を起こす。

 時計に目をやると、PM8:15を示していた。


「ちょっと、眠りすぎちゃったかしらね」


 言いながらセレアはベッドから起き出す。


「お腹空いたねぇ」


「じゃあ、リビングに下りてご飯にしましょう」


「うん!」


 本来ならば、この時間帯は誰もいない筈だった。

 日が昇るまでの間は――。


 セレアとエレインは着替えてリビングに下りると、いつも研究員の柴田が作り置きしてくれる食事がなかった。


「柴田さん……忘れちゃったのかな?」


「いいわ。きっと柴田さん今日は忙しかったのよ。私達で作りましょう。エレインは何が食べたい?」


「ハンバーグが食べたい!」


「じゃあ、決まりね」


 セレアは笑顔でエレインの頭をポンポンと軽く叩くと、冷蔵庫へと足を向けた。

 しかし同時に、地下から誰かが上ってくる気配を感じる。


「誰かしら……?」


「柴田さんかもよ!」


 訝しがるセレアに、エレインが明るい口調で口にする。

 だが姿を現したのは、氷室遊弥だった。


「ヒィッ!!」


 エレインは短い悲鳴を上げて、セレアへと駆け寄り彼女の背後に隠れる。


「お嬢、逃げないでくれお嬢! 頼みがあるんだよ!」


「頼み……?」


 代わりにそう口にしたのは、セレアだった。


「ここの地下牢の中に、悠貴美誠がいる!!」


「!?」


 ピクリと反応するエレイン。


「鮫島さんが捕まえて、投獄したんだ。俺は鍵を持っていない。鮫島さんは悠貴さんのクローン体を作ろうと企んでいるみたいなんだ。俺は悠貴さんを助けたい! 鮫島さんに見つからないうちに、お嬢、鉄格子を壊してくれないか!?」


挿絵(By みてみん)


「ミコト……ミコトが……でも、あたしミコトの前で怪力を見せたらきっと、嫌われちゃうかも……!」


「その鮫島さんにバレたら、彼女殺されるよ!?」


「……!?」


「――エレイン、行ってあげて」


 背後で震えるエレインへと振り返るとセレアは、エレインの手を取った。


「大丈夫よ。嫌われないわ。だから早く行って、ミコトさんを助けてあげて。鮫島さんから彼女を守るって、エレイン言ってたじゃない。好きなんでしょう? 彼女のことが」


 ――好きなんでしょう? 彼女のことが――


 セレアの言葉に、それぞれ別の意味で、エレインと遊弥の心に響いた。


「俺、離れて進むから、お嬢は俺の後に付いて来て!」


「わ……分かったわ……」


 恐る恐ると、エレインはセレアの背後から進み出てきた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
[一言] 最初のうちは退屈なのかと思いましたが、読み進めるうちに物語が盛り上がっていき、面白さを感じました。 今後も最後まで読んでいきたいと思います。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ