表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
75/94

deta,74:私が代わりに用件を承ります



 氷室遊弥(ひむろゆうや)は、耳を澄ませて周囲に聴覚を張り巡らせた。

 ヒュウヒュウという音――違う、風だ。

 ザワザワという音――違う、木の葉だ。

 ツーという音――通電の音だ。

 ゴソゴソ……。


「!?」


 ズッズッ、んーっ、んーっ、ヒュー、ヒュー……。


「!!」


 遊弥は一瞬顔を顰めたが、すぐに表情を戻すと平然とした様子で、研究員の柴田へと声をかけた。


「柴田さん、今日はもう帰っていいっスよ」


「あら、でもセレアちゃん達のご飯を……」


「任せてくださいっス! たまには俺がやっときます! こう見えても料理男子なんスよ俺!」


「そ~ぉ? じゃあ、任せるわね。いつか遊弥君お手製の料理、食べさせて頂戴ね」


「ウマすぎてホッペ落っこちるっスよー!」


「まぁ、期待してるわよ!」


 こうして体よく研究員の柴田を帰らせると、懐中電灯を手にして更に地下にある牢屋の方へと下りて行く遊弥。

 ここの牢屋は大型の研究生物を入れる為に、作られたものだ。

 しかしもう、長いこと使用していない。

 だが近付くにつれ、確かに何らかの気配を感じるのが強くなっていく。


「んーっ、んーっ! ヒューッ、ヒューッ……!!」


 人……の声と呼吸音……?

 

 続いてガンガンと鉄格子を、何らかで打ち付ける音が響く。


 やっぱり人か? それとも生物……?


 遊弥は牢獄室の中に足を踏み入れると、真っ直ぐに伸びる通路を懐中電灯で照らす。

 するとその明かりに反応して、騒ぎ立てる生き物。


「んんんんーっ! んんんんーっ!」


 ガンガンガンガン!!

 

 人だ。人間の反応だ! 

 

 遊弥は早足に三つあるうちの奥の牢屋へと突き進む。

 ここは長いこと使用していない為、電気を通していないのだ。

 ようやく奥の牢獄に辿り着くと、その中へと懐中電灯を向けた。

 そこには、悠貴美誠(ゆうきみこと)が両手両足を縛られ、猿ぐつわを噛まされた状態で捕まっていた。


「悠貴さん!」


「んんんー!(遊ちゃん!)」


「うちの鮫島(さめじま)に捕まったんスね!?」


 牢内で横へと倒れた状態でコクコクコクと美誠は必死に、首を縦に振る。


「困ったな……鮫島さんに黙って逃がそうにも、鍵がないし……」


「んんんーっ!!」


「待って落ち着いて! 興奮すると余計呼吸困難に……、あ」


「ん?」


「こっちに来れる? 後頭部こっち向けて。猿ぐつわだけでも僕が取ってあげるから」


「んん、んん!」


 大きく頷いてから起き上がると、縛られた両足で必死に鉄格子へと身を寄せて美誠は、遊弥に背を向ける。

 遊弥は牢内へと鉄格子の間から手を突っ込むと、後頭部にある結び目を解いた。


「プハーッ! っくそ! あの鮫野郎っっ!! よくも!!」


 猿ぐつわから開放されて大きく息をした美誠は、怒りを露わにした。


「水沢堂さんとダルタニアスさんも、悠貴さんを探してる。電話するね」


「ああ、頼む! ちなみに遊ちゃん、刃物か何かでこの縄も解けねぇ?」


「……ああ! 確かにそうだね。慌てちゃったから気付かなかったよ」


 遊弥はチョロッと舌を出すと、ポケットから小型ナイフを取り出した。


「……本当に持ってるとは思わなかったよ……ナイフ」


 呆然とする美誠に、遊弥は軽く笑う。


「鮫島さんは銃を持ってるけど、僕の場合はナイフだけなんだ。俺ってもしかしたらあの人に信用されていないのかなー」


「現に二重スパイだし」


「まぁね♪」


 そうして遊弥は美誠の縄をナイフで切り落とす。


「あー! キツかった! 肩痛ぇ! 後ろ手に縛られてたから」


「じゃあ、電話するよ?」


「おう!」


 遊弥は魁のスマホに発信する。

 ワンコールもしないうちに、すぐさま電話が繋がる。


「あ、もしもし水沢堂さん――」


『水沢は運転中の為、私が代わりに用件を承ります。氷室さん』


「ハッ! ま、まさかダッ、ダルタニアスさん……スか!?」


『はい、そうです』


「あ、今ライフサイエンスにいるんですが、そこに――」


「ラフィーン!!」


『美誠!? 美誠がそこにいるのですね!?』


「はい、今電話を――あ、TV電話にしますね」


 言うと遊弥はTV電話に切り替えて、美誠にスマホを渡す。


『美誠! 無事ですか!?』


 スマホの画面に心配そうなラフィンの顔が映し出される。


 同時にラフィン側のスマホにも、美誠の元気そうな顔が映し出された。

 しかし画面で見る限り、どうも周囲が薄暗い。

 すると美誠が返答がてら手短に説明する。


挿絵(By みてみん)


『遊ちゃんのおかげで、何とかな! でも、牢屋に閉じ込められて出られねぇんだ。遊ちゃんも鍵を持っていないって言うし……』


「……氷室君に代わってください」

 ラフィンの言葉に、美誠はスマホを持ち主に返したようだった。


『はい、代わりました』


「氷室君、彼女に頼んでください」


『……彼女、ですか??』


「エレイン・ローレンスの力で、牢を壊すのです」


『――エレイン!?』


 これに遊弥と共に、美誠も口を揃えて彼女の名を唱えた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ