Data,6:奇怪な訪問者
その随分人懐っこいオウムにすっかり心和ます悠貴美誠。
「何だお前。人に飼われているのか。道に迷って帰れなくなってこのセントティベリウス教会に祈りを捧げにでも来たか?」
するとオウムは小首を傾げながらくちばしを開いた。
「何ダオ前、オ前。ササゲニ来タカ? クックル」
これに美誠は驚嘆の声を上げた。
「うわこいつ、一発で俺の言葉覚えやがった! すげーなお前!」
「スゲ、スゲーナオ前」
「あっははは! かっわいーなぁ!」
オウムの反応に喜びを露にしている彼女に、微笑を浮かべながらラフィン・ジーン=ダルタニアスが声をかける。
「動物がお好きなのですね。ミス・ミコトは」
「うん! 大好きだよ!」
美誠は嬉しそうな表情で、ラフィンに振り返る。
「ミコト、ミコト、ウン、大好キダヨ、クワ」
これに美誠は再びオウムへと向き直った。
「そうそう! 俺は美誠。で、こっちがダルタニアスさん。分かったか?」
「ミコト、ダルタニアスサン、分カッタカ?」
「ミス・ミコト。鳥に人の言葉を教えるのは構いませんが、今は私があなたに英語を教える時間なのですがね」
「まぁ固ぇこと言うなって! こいつ迷子なんだぜ」
「ミコト、ダルタニアスサン、私アナタ英語教エル、クルル」
「ははは! 言ってる意味分かんねー! ……あれ? こいつ……なぁ、ダルタニアスさん。オウムの足の指って全部で七本もあんのか?」
「何を言っているのです。オウムは前後合わせて四本でしょう」
「でもほらこいつ、七本あるぜ。しかもよく見たらこいつ首輪がついてる」
美誠の言葉にハッとするラフィン。
ラフィンもよくよくオウムの首輪を見つめると、何か黒く光っている。
……小型カメラ……!? このオウムはクローンの……!!
思わずラフィンはそのオウムを捕まえようと、慌てて立ち上がった。
その勢いで椅子が倒れ、オウムは驚いて窓から逃げてしまった。
「あー! 何してんだよダルタニアスさん! オウムびっくりして逃げちまったじゃないか!」
「す、すみません……」
そう美誠に答えながらも、ラフィンの頭の中は他の事でいっぱいだった。
あのオウムは研究所からの探りだ……。
ある程度美誠はラフィンから英語を学び、帰る時がきた。
「何かオウムの時からあまり元気がなくねぇ?」
「いえ、大丈夫ですよ」
「ふーん。ならいいけどよ。オウムを逃がしちまったこと気にしてんなら、俺別に全然怒ってないからな?」
美誠の言葉に、小さく笑ってそれを答えにするラフィン。
「しかし変なオウムだったよな。指七本って。じゃ、今日は帰るわ。またな!」
そうして教会から立ち去る美誠を、ラフィンは無言で見送っていた。
もう空は、黄昏に染まっていた。
そんな夕方の時間帯に、美誠は人通りの少ない道にさしかかった時だった。
突然目の前にサングラスをかけた一人の男が立ち塞がった。
「ミコト・ユウキだな」
「……誰だあんた」
見知らぬ男に、美誠は警戒して身構える。
「ラフィン・ジーン=ダルタニアスと随分親しげな仲のようだから、何か知っているだろう」
「……あ? 親しい仲? 俺とダルタニアスさんはただの……」
言い終わらない内に、美誠は男に腕を捉まれた。
「一緒に来てもらおうか」
「何すんだ! 離せ!」
男の手を振り払った勢いで、男のサングラスが地面へと弾き飛ばされた。
「とぼけるな。我々から追われる身のせいで人を警戒しているはずのあの男が、珍しくお前と親しくしているのだ。そんなお前が何も聞かされていないはずがない」
「……!!」
しかし男の言葉など耳に入らず、美誠は驚きのあまり絶句していた。
その男の目が右目一つしかなく、左目があるはずの部分はまるで肌に塗り潰されたようになっていて、必然的に片目しかなかったからだった。




