deta,58:ブッ殺して差し上げましょう
朝――。
「イタタタタタ……」
「イテテテテテ……」
「イツツツツツ……」
ラフィン=ジーン・ダルタニアス、悠貴美誠、水沢堂魁の順の呻き声とともに、リビングのソファーで伸びていた。
「昨夜は頑張ったようだね。その様子だと。どれ、今朝は私が朝食を作ろう」
昨夜の朝にて、様子を見に来た神父の麻宮清が、苦笑しながら言ってきた。
「申し訳ありません神父様……何せ筋肉痛が酷くて……」
「同じく俺も筋肉痛……」
「あたしは頭痛よ……後頭部強打しちゃったせいで、仰向けで眠れなかったわよ……」
「じゃあ水沢堂君には氷を持ってこよう。少し冷やすといい」
麻宮神父は言い残すと、キッチンへと姿を消す。
「私と美誠は筋肉痛で済みましたが水沢、あなたは一応病院へ行かれた方がよろしいのではありませんか?」
「大~丈夫よ! 頭痛っつっても後頭部だし、ひとまず様子見るわ。しかし美誠、あんたまで筋肉痛って、その若さのクセして」
「何せ必死だったからな。もう全力出しまくって応戦したら、この始末。でも、撃たれるよりもマシだったろう?」
「何、鮫島、またあんたに向かって撃ったの!?」
「うん。でもこっちはアドレナリン出まくってたから銃弾が止まって見えたよ」
「さーまーじーまーあーいーつー……! 殺――」
「ブッ殺して差し上げましょう。次にお会いした時には」
魁が怒りで握り拳を顔の前に構え、震わせていると彼の言葉を遮るように、ラフィンがこの上ない爽やかな笑顔を見せながら言った。
「あんた……その顔で言う方がよっぽど怖いわよラフィン」
「おや、そうですか?」
魁に指摘され、ラフィンはニコニコしながら答える。
キッチンからゴム袋に氷を入れて麻宮神父がリビングへ戻ってくると、魁に手渡す。
「気休めでも少しは楽になるといいが」
「ありがと神父♪」
魁は受け取ると、後頭部に優しく当ててから言った。
「あー、気持ちいい」
唸り声のようにコブシの利いた低い声に、美誠がプッと吹き出す。
「何だよその言い方。まるでひとっ風呂浴びたおっさんみてぇ」
「誰がおっさんよ!」
ケラケラ笑う美誠に、魁はキッと賺さず睥睨する。
「そんなに睨んだって、今更怖くも何ともねぇよ!」
美誠の言葉に、魁はバンとテーブルを叩きながら腰を上げて彼女へと身を乗り出すと、低い声で言った。
「だったら犯してやろうかコラ――」
「よくぞ私を前にしてそのようなことが言えましたね水沢」
美誠よりもいち早く敏感に反応したラフィンが、笑顔だが目は笑っていない表情で指摘した。
「何だかんだで元気ではあるようで安心したよ。神のご加護の賜物だ。では朝食までもうしばらくゆっくりしておきなさい」
麻宮神父は愉快そうに笑いながら、キッチンへと向かった。
「ハァ……神のご加護かぁ」
魁は持ち上げた腰を再びソファーに下ろしてから、天井を見上げて後頭部に氷袋を当てる。
「うっ――!」
ラフィンもソファー上で体勢を変えた際、脇腹を押さえる。
これに美誠が反応して、ラフィンの衣服を唐突にバッとめくると、そこには大きな青あざが出来ていた。
美誠は表情を強張らせると、そのままの勢いでラフィンのシャツを強引に脱がしてしまった。
すっかり上半身を裸にされたラフィンだったが、美誠は彼の上半身をくまなく見回して今度は、背中にも青あざがあるのに気付く。
それ以外にも所々に内出血があった。
「筋肉痛どころじゃないじゃないか!」
美誠はソファーから立ち上がると、救急箱を取りに行く。
「あー良かった。てっきりあたしの目の前でおっぱじめるのかと、あたしも3Pを期待しちゃったわよ」
「もう一つ頭にこぶを増やして差し上げましょうか水沢?」
美誠がいそいそと救急箱を手に戻ってくると、湿布等を取り出す。
「どうしてこういう怪我を隠したりするんだよ。もし骨折でもしてたら大変じゃないか」
「あなたを心配させたくなかったものですから……」
「余計な気配りだよ。もう俺達そういう仲じゃな……いや、その、何だ。これくらいの心配はさせろよな」
途中まで言いかけた言葉を飲み込んでから、改めて美誠は言い直す。
「あらヤダ。あたしを気にせず下ネタ言ったって構わないわよ」
魁が意地悪そうな笑みを浮かべる。
これに美誠は顔を紅潮させながらも、ラフィンの手当てをする。
「すっかりあたしの目の前でイチャコラしちゃってさー。見せつけてくれるわー」
「俺はただ、治療をしているだけだ」
魁からのからかいに、必死に冷静さを装う美誠。
すると代わりにラフィンが、魁に不敵な笑みを浮かべて見せた。
「そんなに羨ましがらないでください水沢。30歳にもなろう男が見苦しいですよ」
それに魁は目を吊り上げて声を荒げた。
「まだ29よ!!」
「さぁ、朝食が出来たよ」
麻宮神父がそんな三人に声をかけてきた。




