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deta,57:俺達の負けっス



 大の字で意識を失っている鮫島をその場に残したまま、同じく気を失っている水沢堂魁(みさわどうかい)をラフィン=ジーン・ダルタニアスと氷室遊弥(ひむろゆうや)が両脇を抱えて、悠貴美誠(ゆうきみこと)も連れ立ってセントティベウス教会へと戻った。

 そして魁を教会の長椅子に横たえた。


 改めて美誠がラフィンを見ると、口はしを切って左頬には殴打されて出来た、痛々しい(あざ)が出来ていた。

 美誠は急いで救急箱を持ってくると、ラフィンの治療に当たる。

 せっかくの美顔に痣を作ったラフィンだが、逆に男らしさを彷彿とさせていた。


「もしダルタニアスさんがやられたら、俺からNo6へ水沢堂さんから預かった溶解銃で始末する役割だったけど、思った以上にダルタニアスさん強かったっスね」


「そうした能力も、私の記憶に組み込まれていますからね。女々しく一方的にやられはしません」


 遊弥の言葉に、ラフィンは冷静に答える。


「あ、そうだ。こうしてダルタニアスさんに会うのは初めてですね。俺、氷室遊弥と言います。水沢堂さんからのスカウトで、ダブルスパイを担ってるっス」


「ええ。水沢から話を聞いています。今回は協力してくれたこと、感謝しますよ」


 ラフィンは答えて、遊弥と握手を交わす。

 美誠の治療で、切れている口端に傷テープ、殴打された左頬も傷ついていた為、こぶし程の大きめの絆創膏(ばんそうこう)をラフィンの美顔に、貼り付けられた。


「そんじゃま、鮫島さんを叩き起こしてひとまずこの場から、退散するっス」


「今回はサンキューな遊ちゃん」


「ウィ!」


 美誠に礼を述べられて遊弥は立ち上がりながら額に二本指を(かざ)して振ると、教会を後にした。

 時計を見ると、深夜12時を指していた。


「ひとまず今しばらくは、安心して眠れそうですね」


「ああ。クローン兵を全滅させたんだからな。鮫島もしばらくは手を出してこねぇだろう」


 ラフィンと美誠は言葉を交わすと、お互いニッコリと笑顔を浮かべた。




「鮫島さん、起きてくださいよ鮫島さん!」


 遊弥の呼びかけに、ようやく鮫島は目を覚ます。


「ゥ……痛、クソ、あのガキよくも……」


「もうクローン兵全部やられましたよ。俺達の負けっス」


「チッ……」


「とりあえず研究所に戻りましょう」


「ああ……」


 鮫島は屈辱的な表情を浮かべながら、ヨロヨロと立ち上がてからバンの運転席に戻ると、その場から立ち去って行った。

 



 一方教会では、呻き声を漏らしながら魁も目を覚ました。


「大丈夫か魁!?」


 美誠が魁に声をかける。


「え、え……何とかね……」


 魁はゆっくりと上半身を起こすと、後頭部に手を当てる。


「めまいや吐き気、耳鳴りなどはありませんか?」


 ラフィンの言葉に、神経を集中させて確認する魁。


「ないわ。ただ、打った後頭部が痛むだけよ」


 これに美誠が魁の後頭部に触れる。


「うっわ! マジでっかい(こぶ)出来てる!」


「不意打ち喰らっちゃったわね。その後どうなったの?」


「ラフィンが肉弾戦の末に、最後のクローン兵も溶かして片付けちゃったよ。余計な邪魔をされないように、鮫島の野郎もこの俺がぶっ倒してやったぜ!」


「あんたが……? クス、さすがじゃじゃ馬」


「ラフィンの判断に応えただけなんだけどな」


「とりあえず今夜はここにお泊りください。水沢」


 ラフィンの言葉に、改めて魁は彼を見る。


「何よ。あんたも相当頑張ったみたいね。その顔を見ると」


挿絵(By みてみん)


「ええ。それなりに」


「じゃあ、お言葉に甘えて今夜はここに泊まるわ。美誠、一緒に寝る?」


「そう言える余裕があるのなら、大丈夫ですね水沢。せめてもう一発喰らっておきますか?」


 ラフィンが拳を持ち上げて、プルプルと振るわせる。


「全く。冗談に決まってるでしょ。クスクス……」


「ひとまず上のリビングに移動しようぜ」


 美誠の言葉に、ラフィンと魁は長椅子から腰を上げた。




 二階にはダイニングリビング以外に、その上の三階に部屋が四つあるがその内の一つは書斎になっているので、実質的に部屋は三つだ。

 魁は嘗て学生時代に使用していた部屋を(あて)がわれた。


「またこの部屋に戻ってくることになるなんて、思ってもいなかったわ。それじゃあ、おやすみ」


 その言葉を残して、魁は早々に部屋の中へと入って行った。


「では私達も、今夜はおとなしく寝ますか。私もNo6からの打撃を受けて体中が痛みますしね」


「うん。俺も全体力使って疲れた」


「ではゆっくりおやすみなさい。美誠」


「ラフィンの方こそ」


 そして軽くキスを交わすと、それぞれの部屋へと二人は戻った。




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