deta,54:女の嗜みってもんだ!!
鮫島と氷室遊弥は後ずさって長い距離を取ると、同時に6体のクローン体がラフィン=ジーン・ダルタニアスと水沢堂魁の元へと辿り着いた。
だがここで素早く、魁がクローン体の1体に溶解弾の入った銃を撃ち放った。
それは“No2”である、青紫色をした頭以外全身黒い毛むくじゃらのクローンで、みるみるうちにその肉体は煙を上げながら溶けてしまった。
「チッ! いきなりやられたか」
「随分早かったね」
鮫島と氷室が言葉を交わす。
仲間の1体がやられて、クローン体達は少し怯んだ様にも見えた。
公園の出入り口の横で状況を見守っていた二人だったが、目の端で何かが駆け抜けて行ったのに気付く。
「?」
鮫島と氷室がその視界に入った存在を目で追う。
「あれは……」
鮫島が呟いた時には、それが1体のクローン体に跳び蹴りをかましていた。
悠貴美誠だ。
「な……っ!?」
ラフィンと魁が驚愕を露わにする。
美誠が蹴り倒したクローン体は、今度は“No3”と呼ばれている頭から茶色い毛むくじゃらの体に、奇怪な顔だけを表面にした異様で巨大な二つの目と歯が左右横向きに生えて縦長の口をしている、細くて長い手をした個体だった。
美誠より背の高いクローン体だったが、彼女からの背中に全力跳び蹴りで見事に前のめりに倒れこむ。
No3の背中に乗っかる形で着地した美誠は、バック転して後ろに下がると更にNo3の横腹を猛烈に蹴りまくった。
蹴りこみのあまりの辛さに、No3は倒れたまま横向きになって美誠からの蹴りを避けようとした。
が、直後に縦長の口の中へ何かが放り込まれたかと思うと、そのまま彼女から縦長の口元を力一杯踏み込みされた。
するとNo3の口の中でその何かがパリンと砕け、液体が口いっぱいに広がる。
約3秒程No3は固まってから、突如バタバタともがき始めると、体の内側から溶け始め肉体がベコベコとへこみ煙を上げながら、完全に霧散し消滅してしまった。
ラフィンと魁は勿論のこと、遠くから様子を見ていた鮫島と氷室も唖然とする。
「美誠……? 一体なぜここに……」
ようやく絞り出すようにして、ラフィンが訊ねる。
彼の言葉に、美誠はポケットからある物を取り出して、親指と人差し指で挟んだ状態で見せる。
「!? それは……溶解液が入ったアンプル……!」
「ラフィンには悪いけど、書斎から拝借させてもらった。な? 俺もやれば出来るだろう?」
言うと美誠は、ドヤ顔でニカッと笑った。
「あんたって……ホントじゃじゃ馬……呆れるわ」
魁が嘆息を吐く。
この有り様に思わずクスクス笑う氷室を、鮫島が横目で睥睨する。
「氷室、何がおかしい」
「あ。すんません」
慌てて笑いを収める氷室。
「全く。毛むくじゃらは駄目だな」
鮫島は言うとこちらも嘆息を吐いた。
美誠はクルッとクローン体達へと振り返ると、“No5”と呼ばれる女型クローンを指差した。
「お前! いくら片乳でもブラジャーとパンツくらいはしろよな! それが女の嗜みってもんだ!!」
これに再度、氷室はブホッと吹き出して、腹を抱えて笑い始めた。
そんな氷室の頭に、鮫島の拳が炸裂する。
「あ。ホントすんません」
氷室は必死に笑いを収める。
そんな美誠の言葉を理解したのかしないのか、No5は美誠に掴みかかってきた。
「おっと! ヤベェ。そう簡単に捕まるかよ」
美誠はヒョイと脇に避けると、No5にベッと舌を出した。
「何か、いよいよ面白くなってきましたね鮫島さん」
「面白くなる必要はない」
氷室の言葉を、鮫島が冷静に一蹴する。
こんなことなら、ポップコーンとコーラを買っておくんだったな。
などと内心密かに思う氷室だった。
「グルアァッ!!」
No5が呻り声を上げながら再び美誠に襲い掛かる。
「ぅわ何その声。変声期?」
美誠は再び横へと避けると、No5に足を引っ掛けた。
これによりNo5が地面に倒れこむのを、チャンスとばかりにラフィンが飛び込んできてNo5の頭に手を当ててからバーコードナンバーを唱えた。
「4 560367 075388.――溶解」
するとNo5の体中がボコボコとあちこちに瘤のような膨らみが出たり消えたりしたかと思うと、全身から白い煙を出して消滅した。
「一丁上がりぃ!」
軽快にそう口にして指をパチンと鳴らした美誠に、ラフィンはゆっくりと立ち上がってから言った。
「調子に乗るところではありませんよ美誠」




