deta,51:かわいそうな子達
「え? 今晩この教会を突然変異体クローン6体が襲撃に来るですって?」
ラフィン=ジーン・ダルタニアスが水沢堂魁からの報告に、食事の手を止める。
「ついでに鮫島とその部下の氷室って子も来るけど、この氷室は以前話した聴覚が特化したクローンだけど、二重スパイさせているから大丈夫。その子にも溶解銃を渡してあるわ」
魁はサーモンのムニエルを口に運びながら答える。
「この教会でドンパチされたら麻宮神父が困るから、敷地外で応戦しようぜ」
悠貴美誠の発言に、同じ食卓にいた麻宮清がニコッと笑顔を見せる。
「応戦って、何言ってるのよ美誠。まさかあんたも一緒に戦おうとか考えてるんじゃないでしょうね」
「え? うん、ダメなのか?」
呆れた様子で口にした魁の言葉に、キョトンとする美誠。
「申し訳ありませんが美誠、あなたは麻宮神父とこの教会に避難しておいてください」
ラフィンが少し困ったように微笑みながら、美誠へと告げる。
「そんな! 俺も力に――」
「あんたに一体何の力があるってぇのよ。ハッキリ言って、足手まとい。邪魔。おとなしく教会にこもっていなさい」
「えー、でも」
「これは遊びじゃないのよ。生死を賭けた戦いなの。ワクワクするのは孫悟空だけにして頂戴」
「水沢の言う通りです。私からもお願いします」
「……分かった……」
ラフィンと魁の二人から指摘を受けて、美誠は渋々承諾する。
「麻宮神父からも、この子を見張っておいてよ。危なっかしいじゃじゃ馬なんだから」
「ああ、分かったよ」
魁の言葉に、麻宮神父は苦笑する。
「そうですね。水沢、その氷室って子にお願いがあります」
「何よ?」
「その6体の突然変異体クローンのバーコードナンバーを、全て覚えておいて私に教えてくれるように伝えておいてくれませんか?」
「ええ、いいわよ」
魁は返事すると、コンソメスープを啜った。
「ああ、ついでにその鮫島のも」
「分かったわ。でもあたしも応戦するんだから、何もそこまで全部引き受けて頑張らなくったっていいのよ」
「念の為ですよ」
ラフィンは言うと、手でちぎったパンを口に運んだ。
ライフサイエンス研究所――。
巨大ガラス筒から液体が抜かれ、中から突然変異体クローンが蠢き始める。
「よし。良くやったぞお前達」
三人の研究員に、鮫島は偉そうに言い放った。
「ぅわぁ~、良かった。俺はこうならなくて」
氷室遊弥の言葉に、鮫島はギロリと睨んだ。
「それは、この片目しかない俺にも対する言葉か」
「いちいち過敏なんだから。そんなわけないっしょ」
遊弥は怯む様子もなく、あっけらかんと答える。
「んで、この子達に名前付けんの?」
「いや……ナンバーで十分だろう」
「わぁー、かわいそうな子達」
「では一番右から、前に進み出ろ。No1」
するとNo1と呼ばれた突然変異体クローンが前に進み出る。
トカゲのような頭に牛のような角、筋肉著しい人の体をした全身グリーン色をした姿だ。
「次、No2」
同じく2番目の突然変異体クローンが進み出る。
人の顔をしているが、顔以外は全身毛むくじゃらで青紫色の肌をしている。
「次、No3」
こっちも茶色い毛むくじゃらの体ではあったが細くて長い手、異様に巨大な二つの目、歯が左右横向きに生えた縦長の口をしていた。
「次、No4」
するとそれはパタパタと“飛んで”前に進み出た。
異様に巨大な耳で頭部しかないそれは、耳を使って空を飛べるようだ。
「No5」
呼ばれたそれは一見女の姿をしているが、筋肉隆々で片方だけ乳房がなく、青い肌をしている。
「最後、No6」
そうして進み出てきたのは、頭が前後左右四つもある人型のピンクの肌をしたクローン体だった。
外見こそは皆、異様な姿だが特殊能力があるわけではない。
「よし。じゃあお前らにはこの男を捕獲してもらいたい」
鮫島は言って皆に、ラフィンの写真を見せた。
「もうダルタニアスと仲がいい、あのJKは捕まえなくていいの?」
氷室の言葉に黙考すると、首肯して鮫島は答えた。
「ダルタニアス本人さえ捕らえられれば、あんな小娘には用はない」
この鮫島の言葉に氷室は内心、安堵した。
もし美誠まで被害をこうむれば、氷室の彼女である藤井梓に顔向けができなくなるからだった。




