Data,47:ライフサイエンス研究所
夜、水沢堂魁は氷室遊弥を連れ立ってライフサイエンス研究所へとやって来た。
外から見ても、建物内は照明が煌々と点いている。
「それじゃあ、あたしの言ったとおりにあんたは中を探って頂戴」
「探れっつってもな……俺にとっては今更なんだけど」
「大丈夫そうならあたしを呼んで頂戴」
「あいよ。分かった」
こうして魁と遊弥は外と中へと分かれた。
魁は周辺を警戒しながら、建物の外を調べ始めた。
一方遊弥が建物内に入ると、リビングで鮫島がコーヒーを飲みながらくつろいでいた。
「エレインは?」
「ああ、もう寝た」
「今日はお嬢と顔合わせた?」
「いや……相変わらずだ」
「そっか……」
エレインは、あの一件以来男性恐怖症からすっかり鮫島と遊弥とも、顔を合わせなくなった。
なのでこっそりとエレインの部屋を覘いて、眠ったかどうかなどを確認することしか出来ずにいた。
「セレアの方は?」
「ああ、起きているがまだ部屋にこもっているんだろう」
「ふ~ん」
遊弥はそうして鮫島がいるリビングのソファーに身を投げる。
「氷室」
「ん?」
「明日の夜、ダルタニアスを襲撃する」
「え? どうやって?」
「ここの研究員が生み出した突然変異体を数体、あの教会に突っ込ませる」
「でもダルタニアスには特殊能力があるはずだろう? 大丈夫なのかよ」
「下手な鉄砲、数撃ちゃ当たるだ。今のままでは前に進まんからな」
「ヒェ~、随分大胆な行動に出るなー」
ここまで会話を繰り広げたが、この会話は全て外にいる魁に筒抜けになっている。
遊弥の胸の内ポケットには、小型マイクが仕込まれているからだ。
「ま、そういうわけだから、お前も強制参加だ」
「あいよ」
鮫島は言ってカップに残っているコーヒーを一気に仰ぐと、立ち上がりリビングから出て行った。
「今、鮫島さんが外に出る。水沢堂さん、気をつけて」
遊弥は隠しマイクに声をかけた。
“OK”
魁からの返答を確認してから、遊弥は地下にある研究室へと向かった。
魁は物陰に隠れて、鮫島が車に乗り込みこの場から去るのを確認してから、改めて周辺を調べ始めた。
すると人が三人ほど入れそうな大きなゴミ箱があり、側には巨大な焼却炉もあった。
「こんなどデカイの、何に使うのかしら……」
魁は小声で呟いてから、ゴミ箱の蓋をゆっくり開けてみた。
するとそこには、とても人とは思えない何らかの、死んだ生き物が入っていた。
これに眉根を寄せる魁。
ラフィン=ジーン・ダルタニアスの話を思い出す。
クローンの失敗作のことを。
これはその成れの果てということだ。
そして巨大な焼却炉も、これらを処分する為の物だろう。
「ホント、随分エグいことしてんのね」
魁は静かに蓋を閉じる。
そしてそこから先に行くと、小道が現れた。
ちょっとした散歩コースを彷彿とさせる。
よって魁は、そちらへと足を向けた。
数分ほど歩くと、いくつかの分かれ道があったが後回しにして、メインの道を突き進んだ。
すると拓けた場所に出た。
一種の公園広場のようだ。
しかし遊具などがあるわけではない。
その時、遠くの方から歌声が聞こえた。
「……女……?」
声の質からそう判断して、魁は注意深く歌声の方へと歩を進めた。
するとベンチに座った、一人の女と思しき後ろ姿が見えた。
一か八か、魁はそっと女へと声をかけてみる。
「こんな時間に女性が一人、危なくない?」
これに驚いてその女は振り返ったその顔に、魁も少し驚いた。
どう見ても日本人ではなかったからだ。
しかし女が発した言葉は、日本語だった。
「誰!?」




