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Data,35:失敗作を生かす理由



「今の言葉を撤回しろ!!」


 12歳のエレイン・ローレンスではあったが、大の大人を軽々と片手で持ち上げている。


「知るか……っ! 上の連中がもう決定した、ことだ……!!」


 研究生は少しだけ苦しげながらも、そう答えた。


「ふ……っざけんなぁぁぁーっっ!!」


 エレインは怒鳴るや否や、その研究生を壁へと乱暴に叩き付ける。

 何せ怪力の彼女の力だ。

 その研究生はまるで、腹いっぱい血を吸って叩き潰された蚊の如く、壁にベタリと張り付き絶命した。

 これに周囲から悲鳴が上げる。


「研究対象のクローン体が、人間を殺した!!」


 フロア内が大騒ぎになる。


「エレイン、何てことを!!」


「チ……ッ! 逃げようセレア!!」


 青ざめるセレア・メイランドの手を取ると、エレインはその場から走り出した。

 だが数百メートル走っただけで、セレアは苦しげに立ち崩れてしまった。


「私はもうダメ……私を置いてエレインだけでも逃げて……!」


「ダメだよセレア! セレアを置いて行けない! 殺されちゃうもの!!」


 言うとエレインはセレアを横だっこで抱え上げると、猛烈な勢いで走り始めた。


「対象は”D―L(ドール)”!! ”B―T(ベータ)”を連れて逃走中!!」


 D―Lとは、エレインの製造コードだ。

 今は夜。

 外は夜の闇に包まれていて、セレアを太陽で焦がすことはない。


「飛ぶよ! 少しだけ辛抱してねセレア!!」


 叫ぶとエレインは、研究所のガラス壁を肩で突き破って、そのままの勢いで外へと飛んだ。


「キャアァァ!!」


 咄嗟にセレアは悲鳴とともに、固く目を瞑る。

 しかしこの五階の高さからエレインは、セレアを抱えたまま飛び降りると、華麗に地面に着地した。

 そしてそのままエレインは走り出すと、セレアとともに夜の闇に姿を消した――。




 太陽を避け、夜の闇を駆け抜けながら、二人が辿り着いたのは日本だった。

 高い研究技術を持ちながらも、一番平和な国を目指した結果だった。


 B―TとD―L逃亡の情報は世界中のクローン研究所に広まっていた。

 勿論、この日本も例外ではない。

 失敗作(・・・)のクローン体は手首の製造バーコード以外にも、二の腕にミクロチップを植え込まれているので、実はGPSを使えばどこにいるかもすぐに分かる仕組みになっている。

 それくらい、12歳のエレインでも知っていることではあったが、セレアを守る為に逃げるしかなかった。

 よって船で日本に流れ着いた時、まさか自分達が歓迎されるとは思いもしなかった。


「待ってたよ。コードNo,D―L、そしてB―T」

 

 これに警戒してエレインはセレアを背後に隠す。


挿絵(By みてみん)


「大丈夫。我々は君達二人を”保護”しに来たのだよ」

 

 年配の男は優しい笑みを浮かべて言った。

 実はオスリン研究所から、二人を”保護”するように伝達があったのだ。


 確かにエレインは人を殺した。

 しかしそれは、その殺された研究員の自業自得だとして片付けられた。

 研究所が優先すべきは、あくまでも研究対象であるクローン。

 大事な”モルモット”を処分――死なせるのは、大きな損失扱いとされたのだ。


 だがしかし、力を暴走させてしまったD―L、そして役立たずで処分対象であったB―Tを、自分達の手元に置くより他所に押し付けてしまう方が楽だと、オスリン研究所は判断したらしい。

 

 そんな事も知らずに日本のクローン研究所は、喜んで二人の受け入れに賛同した。

 何せあの世界的に有名なオスリン研究所のクローンだ。

 日本なんかよりずっとレベルが高いのだ。

 

 だが実際、日本が――いや、オスリン研究所が重要視したのはD―L……エレインだった。

 エレインはその怪力による能力から、軍事生物に利用できると考えたからだ。

 なので”保護”対象として世界の研究所に発令したのだ。

 B―T……セレアはあくまでもただの”おまけ”として――。


 こうしてエレインとセレアは日本のクローン研究所に引き取られることになった。


「私は氏仲洋人(うじなかひろと)、51歳だ。よろしくな」


 相変わらず優しい笑みを湛えながら、その年配の男は二人へと名乗った。




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