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Data,27:ここは喫茶店ではないのですよ!



「これは一体どういうことです水沢!?」


 悠貴美誠(ゆうきみこと)水沢堂魁(みさわどうかい)からセントティベウス教会まで送ってもらうと、すっかり立腹したラフィン=ジーン・ダルタニアスが出迎えた。


「クスクス、やっぱり怒ってたわね」


 魁は悠然と笑いながら愉快がる。


「え? 俺が魁とドライブに行くことは、もうラフィンに伝えてるって言ってたよな魁?」


 キョトンとした様子で美誠は、魁に尋ねる。しかし。


「いいえ。そんな連絡は全く受けておりませんよ」


 代わりにラフィンが冷ややかに口にした。


「何だよ魁! 俺にウソついたのかよ!」


「美誠も美誠です! 私はかれこれ10回以上は電話をしましたが、どうして出なかったんです!?」


「あ、俺学校にいる時はマナーモードにしてるから、そのままでカバンに入れっぱなしだった……ゴメン」


 美誠はスマホをカバンから取り出すと、確認してからラフィンに謝る。


「まぁ、学校に美誠のことを問い合わせたら、水沢が美誠を連れて行く所を多くの生徒が目撃していたと聞いたので、そこまでは慌てませんでしたが不愉快ではありますね」


 ラフィンは肩にかかった腰まで長い金髪(ブロンド)を、手で背後へと払いのけながら言う。

 彼の“多くの生徒が目撃”の言葉を聞いて、美誠は思い出したかのように愕然と、テーブルの上に頭を突っ伏していた。


「あんたをからかうのも目的の一つだったのよ」


「美誠の立場をお分かりですか? 水沢! 彼女はクローン体のターゲットであり、そしてまた私の恋人なのですよ!?」


「こ、恋人……」


 ラフィンの言葉に、美誠はテーブルに頭を突っ伏したまま恥ずかしそうに、小声で呟く。


「分かってるわよ! だからちゃあんとこうして送り届けたじゃない。別に美誠には何もしてないわ」


「無断貸し出しも行っておりませんが?」


「何よそのレンタルショップの謳い文句みたいなセリフ」


 不機嫌さを露に文句を言うラフィンに、魁は言い返すとケラケラと笑った。


「こっちは怒っているのです水沢! 笑わないでください!」


「こっちは笑ってんのよラフィン。もっと楽しませて頂戴」


「私をからかっているのですか!?」


「ええ、そうよ」


挿絵(By みてみん)


 暫しの沈黙の中、美誠が半ば呆れながらテーブルから頭を上げて、二人の様子を見やる。

 やがてラフィンは、嘆息を吐いた。


「あなたには説教は効かなそうですね、水沢」


「あら今の、説教だったの? あたしてっきり、男の見苦しい嫉妬かと思っちゃったわ」


 魁は言い返すと、またケラケラ笑った。


「言い争いは終わったか? じゃ、俺はカバン片付けと私服に着替えてくるよ」


「ええ、分かりました」


 それまでテーブルの椅子に座り頬杖をして様子を見ていた美誠は言うと、立ち上がり自分の部屋に行ってしまった。


「あら着替えるの? じゃああたしも付き合う――」


 ガシッ!!


 美誠の後を追おうとした魁の襟首を、容赦なく捕まえるラフィン。


「分かってるわよ。冗談よ冗談」


 言うと魁は、またしても腹を抱えてケラケラと笑った。

 すると、美誠と入れ違うように今度は、農作業を終えた麻宮(まみや)神父が戻ってきた。

 教会の隣に自己所有の畑があるのだ。


「おや、水沢堂君。来ていたのかね」


「あら神父様。今美誠をここへ送ってきたところですの」


「そうかい。今日も暑いだろう。ラフィンはお茶の一つでも出してくれたかな?」


「いいえ~! もう全然気が利かなくて! あー、咽喉渇いた!」


 これに衝撃を受けた表情で、ラフィンは魁を凝視する。


「じゃあ私がお茶を……」


「あ、良かったらアイスのブラックコーヒーをお願いしますわ」


「クスクス、分かったよ」


 教会の礼拝堂脇にある小部屋の、簡易給湯室に足を運ぶ麻宮神父に図々しくも魁が注文をつけた。

 給湯室に姿を消した麻宮神父を確認して、更に不機嫌そうにラフィンが言った。


「ここは喫茶店ではないのですよ!」


「あら。気になるならラフィンがコーヒー淹れてきてよ。毒は盛らないでね」


「もう今更いいですよ……」


 あくまでもマイペースな魁に、ラフィンは呆れずにはいられなかった。

 しばらく続く沈黙。

 30秒ほど経過した時、先に口を開いたのはラフィンだった。


「水沢、もしかしてあなたは、美誠のことが好きなのですか?」


 これに魁は強気な目つきでニッと笑った。


「ええ、好きよ」


 その言葉に、ラフィンは目を見張る。


「最初はただのガキだと思ってたけど、同じ時間を過ごすに連れてあの子の魅力を思い知らされてきてね。あの子と一緒にいるのが楽しくなっちゃったの」


 ここで言葉を切ると、クスッと笑った。


「でも安心しなさい。あたしの“好き”は“ライク”の方だから」


「そう、ですか……」


 ラフィンのホッとした様子を確認してから、魁は言葉を付け足した。


「ただし、あたしはライクでもキスができちゃうタイプよ☆ SEXもね♪」


 直後、ラフィンの魁に向けた目が鋭利なものへと変わる。

 しかし魁は、彼の鋭い睥睨に恐れるどころか、愉快そうにケラケラ笑った。




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