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Data,24:別に敵はいやしねぇよ!



「ん……うーん……」


 悠貴美誠(ゆうきみこと)は小さく声を洩らしたかと思うと、ゆっくりと目を開いた。

 あれから軽く朝食を摂った美誠は、ラフィン=ジーン・ダルタニアスが用意してくれたダブルベッドで眠りに就いたのだが。

 ぼやける視界が徐々に鮮明になり、よくよく目を凝らしてみると……目前にラフィンの寝顔があった。


「えっ、えっ!?」


 小さめではあったが声を上げてから美誠は、慌てて片手で自分の口を塞ぐ。


 何で!? 何でラフィンが俺の隣で寝てんだ!?


 美誠は内心、動揺しながらひとまず冷静になろうと、右側へと体を向けてラフィンへと背を向けた。

 が、今度はそこに水沢堂魁(みさわどうかい)の寝顔があったのだ。


「なーっ!!?」


 さすがに次こそは理性を吹き飛ばすには充分だった。

 美誠の叫びに、彼女の両脇で眠っていたラフィンと魁が目を見開く。


「なっ、何!? 何よ!?」


「まさか、敵!?」


 二人は転がるようにベッドから飛び出して、身を屈めた姿勢で周囲を見渡した。

 そして二人は身構えながら、口々に言い合う。


「こっちは大丈夫です! 水沢、そっちは!?」


「こっちも問題ないわ! ラフィン!」


「おいおい待て待て二人とも! 別に敵はいやしねぇよ!」


「……じゃあ何故、あなたは突然叫び声を上げたりしたのですか? 美誠」


「そうよ紛らわしい。危うく口から心臓飛び出しそうになったじゃないの」


「口から心臓はこっちのセリフだ!! 大体何でラフィンと魁の二人ともが俺を間に挟んで一緒に川の字で寝てんだよ!?」


 美誠の言葉に、途端ラフィンの表情が険しくなった。


「あらマズイ」


 これに魁が咄嗟に片手を口に当てる。


「それはどういうことですか? 水沢……」


 ゆっくりと立ち上がるラフィン。


「いえね、帰ろうとしたのよ。帰ろうと。 でもね、まーた美誠がベッドから抜け出したりはしていないかと思ってここを覗きに来たら、美誠の隣であんたも一緒に寝てたでしょ?」


 魁もゆっくりと立ち上がりながら慌てる。


「わっ、私も心配であなたの寝顔を覗いてみたら安心したように眠っていたので、つい、添い寝を……」


「そう! それよ! あたしもあんた達がそうやって寝てたから、ついこっちまで安心しちゃって、それで睡魔に誘われるまま、つい……!」


「いや、それはおかしいですよ魁!」


 ラフィンと魁の二人は、美誠がいるベッドを挟んで両脇からやいのやいのと言い合い始めた。


「あーもうっ! 分かった! 分かったよもう!!」


 美誠は鬱陶しそうに両手を下ろして喚いた。

 これに二人の言い合いがピタリと止む。


「二人が眠かったんなら、仕方ねぇし……」

 

 すると突然、美誠はグイと起こしていた上半身をベッドに再度腰を下ろしたラフィンから、抱き寄せられた。


挿絵(By みてみん)


「仕方ないで済ませてはいけませんよ美誠。魁、美誠は私のものです」


 言うや否や、ラフィンは魁の目の前で美誠の顎を上げると、彼女にキスをした。


「ん!?」


 美誠は口を塞がれたまま、声を洩らす。

 これに魁は目を瞬かせると、ふと息を吐いた。


「あらあら、見せ付けられちゃったわね。全く、イギリス人の男は大胆なこと」

 

 魁は呆れながら言うと、クルリと背を向けた。


「分かった分かった。邪魔者はさっさと退散するわよ。じゃあね。おかげで居眠り運転せずには済みそうだわ」


 その言葉を残して魁は、部屋から出て行った。

 このタイミングでラフィンはそっと、美誠から唇を離す。


「ラフィン……」


「魁は腕の立つ便利屋ではありますが、ああしていても立派な大人の男です。美誠、あなたはまだ幼い。大人の男が放つ罠には気をつけなさい」


「うん……」


「愛していますよ美誠」


「うんラフィン。俺も……」


 そうして二人は改めて、再びキスを交し合った。

 ちなみに本来のこのセントティべウス教会の持ち主である老神父、麻宮(まみや)は敷地内にある離れで生活をしていた。




「そっかー。美誠、退寮したんだ……」


 学校の屋上にて、ツインテールの西沢望(にしざわのぞみ)が弁当を片手に、控えめな声で言った。


「ああ、まぁな」


 美誠はウインナーフライを食べながら答える。


「ルームメイトだった美誠がいなくなったから、私一人になっちゃったわ」


 セミロングの山村満利奈(やまむらまりな)も言いながら、サンドウィッチをかじる。


「明後日には夏休みになる言うんに、何もこのタイミングで退寮せんでも良かったやないかー。休暇中、寮に美誠がおれへんなったらごっつつまらんわー」


 藤井梓(ふじいあずさ)は焼きそばパン二個目を食べようとしている。


「まぁ、俺もこうなるとは思ってなかったんだけどな。知人が俺の身元引受人になったみたいで、そこから学校に通うことになったから……ごめんな梓」


「別に二度と会えなくなるわけじゃないしね。二学期になればまた会えるし」


 望は言いながら、弁当を突いている。


「そうそう! 別に学校中退するわけじゃないしねー」

 

 満利奈は紙パックの牛乳をストローで啜る。


「ひとまず夏休みに入ったらうち、彼氏作ろー」


 梓の突然話題から外れた一言に、みんな一斉に口を揃えて言った。


「何じゃそりゃ!?」


 四人の中では一番胸の大きい梓だったが、彼女だけが今や彼氏がいない立場だった……。




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