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Data,22:笑っちまうぜ



 悠貴美誠(ゆうきみこと)は、窮屈さと首の痛みで目が覚めた。


「う……」


 腹部に感じる鈍痛。

 気が付くと、美誠は背凭れのある木製の椅子に後ろ手で両手を縛られ、足には手錠がかけられていた。

 首の痛みは、長時間項垂れていたからだろう。


「く、そ……っ」


 美誠は最後の記憶を振り返りながら、周囲を見回した。

 そこは四方コンクリート壁で、裸電球が一個、心許なくぶら下がっている他、何もなかった。

 正面にはコンクリートと同じ色をした、灰色の鉄のドアがある。

 ドアの上部には長方形に小さくくり貫かれて、鉄格子がはめられていた。

 耳を済ませるが何も聞こえず、静まり返っている。


 美誠がどうしたものかと考えあぐねていると、遠くからこちらへ近付いてくる足音が聞こえた。

 思わずどうすべきか迷ったが、ひとまずここはまだ気絶していることにして、再び頭を項垂れた。

 やがて足音はドアの前で止まり、ドアノブを回し甲高い軋み音を立てながら開かれる。


 チッ……カギしてなかったのかよ。


 美誠は内心、密かにぼやく。


「まだ気を失っているのか」


 どこかで聞いた声だ。こいつは……。


 すると突然、下から顔に水をかけられた。


「――ぷはっ!!」


 これに思わず美誠は顔を上げる。


「フン。やはりフリ(・・)か」


 相手は言うと、手に持っていた紙コップを投げ捨てた。


「……お前は……」


 相手はあの片目しかない、初めて美誠に襲い掛かってきた男だった。

 その時はサングラスをかけていたが、今は目がない左側を隠すように、黒い眼帯を着けていた。


「“お前”じゃない。悠貴美誠。俺の名は“鮫島(さめじま)”だ。よく覚えておけ」


「うっわ……いかにも悪っそうな名前。笑っちまうぜ」


 負けじと美誠は悪態を吐く。


「さぁて。ではダルタニアスのことを色々と教えてもらおうか悠貴美誠」


「色々、だと……? そんなにあいつの事を根掘り葉掘り知りてぇのか、このホモ野郎」


「……口の減らねぇガキだな……――この小娘が!!」


 鮫島は言葉を溜めてから叫ぶや、手の甲で美誠の頬をビンタした。


「く……っ」


 美誠はその痛みで目に涙を滲ませながら、鋭い目つきで鮫島を斜め下から睨み付けた。


「フン。こんな事くらいで泣くとは。これだから女は」


「うるせぇっ!! 別に泣いてねぇっ!!」


 鮫島の言葉にそう怒鳴りつける美誠。

 すると何やらドアの外が騒々しくなってきた。


「!? おい! 一体何の騒ぎだ!!」


 鮫島が部屋の外へと大きな声をかけた。

 するとまるでドアへとなだれ込むように、スキンヘッドの大男が入って来た。


 こいつ……! 俺を襲った両目がないクローン体だ!!


 美誠は両目がないその大男を見て確信する。


「さ、鮫島さん……ヤバイです! あいつは……!!」


 ここまで言った時、大男はウッと短く呻って体を弾ませた。


「何……? おい、どうした! あいつとは一体誰の――」


 しかし大男は突然、全身があちこちと訳の分からない方向へと向いたかと思うと、風船のように膨れ上がってからまるで蝋燭のようにドロドロと溶けていってしまった。


「う……っ、ウゲ……っ!!」


 目の前で人体の肉が溶けるさまのグロさに、美誠は思わず顔を背けて嘔吐してしまった。


「いーけないんだぁ~。大の男が女の子を乱暴に扱っちゃあ~」


 聞き覚えのある声が、抑揚のある口調で言いながらコツ、コツ、と足音をゆっくり響かせながら近付いて来る。


「ゴホッ、ゴホ……ペッ!!」


 美誠は口の中の残滓を吐き捨てながら反応する。


 この声は――!!


「ふーん。あんた、このあたしを知らないなんて、ただの潜りじゃないの? まぁ、その方が都合はいいんだけれど」


挿絵(By みてみん)


「貴様は……便利屋の水沢堂魁(みさわどうかい)か」


「あら。知ってるじゃないの。迷惑ね~」


 まだドアからは姿が見えないが、確かに魁だ。

 美誠は嬉しさの余り、目に涙を浮かべた。

 鮫島は続ける。


「貴様の実家がまんじゅう屋であることもこっちは調べがついて――」


「そこまで言わんでいいっっ!!」


 途端に魁の声音が低くなったかと思うと、パシュッと何かが発射される音がした。

 しかし鮫島は素早い動きでそれから避けて、美誠がいる室内へと下がる。

 だが同時に、激しい衝撃を受けて鮫島は通路の方へと突き飛ばされる。

 美誠が手錠をかけられている脚で椅子ごと立ち上がり、鮫島へと歩み寄ると全力で半回転して彼の背中に椅子を叩きつけたのだ。

 その衝撃で木製の椅子はバラバラに崩壊する。


「くそ……っ!! 溶解弾!?」


「んー、ラフィン(あいつ)が言うにはちょーっち、違うみたいよぉ?」


「ってことは……! 冗談じゃない!!」


 鮫島は顔面蒼白になると、物凄いスピードでその場から逃げ去ってしまった。




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