Data,15:この腰抜け野郎っっ!!
「何だあれ何だあれ何だあれ!!」
「うっさいわね! それはあたしの方が聞きたいわよ! 何ちょっと! あのダルタニアスの奴、あんなの相手にしてたわけ!?」
「あれじゃあダルタニアスさんが今まで逃げ回ってたわけだ……!!」
二人して車内でパニくりながら、教会に到着するとなだれ込む様に二人は、ラフィン・ジーン=ダルタニアスの元に走り寄った。
「おやお二人お揃いで。どうしたんです? そんなに血相変えて……」
「どうしたもこうしたもないわよ!!」
「どうしたもこうしたもあるかよ!!」
二人同時に叫ばれて、びっくりするラフィン。
「俺達ここに来る最中、化け物に襲われたんだぞ!!」
「そうよそうよ!!」
「化け物……?」
「大体クローンにあんな化け物がいるなんて聞いてないわよ!!」
「そうだそうだ!!」
「ああ、多細胞型異常発達クローン体に襲われたのですね」
「はい!?」
二人同時に声を揃え、顔を顰める。
「そうですか。そんなものを奴らは寄越してきたのですね……まぁ二人とも無事で何よりでした。とりあえずその件は、お茶を飲みながらゆっくり聞きましょう。今用意しますから、しばらくお待ちください」
ラフィンはそう言い残して、部屋を出て行った。
「あ……あいつまるで当たり前かの様に冷静に落ち着いてたわよ。信じられない……」
「あんのヤロー! こちとら死にそうな思いしたってぇのに何だあの態度!! 許せん!!」
「ちょっと美誠!」
水沢堂魁が止める間もなく悠貴美誠はラフィンの後を追って行った。
「この腰抜け野郎っっ!!」
「ミス・ミコト……」
「てめぇ何が俺を力の限り守るだ! 結局魁にまかせっきりでお前全然行動に移してねぇじゃねぇか!! 誰のせいで俺がこんな目に遭ってると思ってるんだ!? お前自分に少し責任持ったらどうだ!!」
「ミス・ミコト。落ち着いてください」
「落ち着けだと!? 落ち着けるかよ!! お前一体何やってんだよ!? のんびり茶ァすすってる場合じゃねぇだろ!?」
「ちょっと美誠!! やめなさいよ!」
慌てて駆けつけた魁が止めに入る。
しかしこの美誠の言葉に、ラフィンの表情と声質が変わる。
「……何をやってるかですって? 私は電話で言ったはずですよ。クローン撃退の為にすべきことがあると。確かに今のところ水沢に任せきりだったかも知れません。ですがおかげで私も集中して特別製の銃弾を完成させることができたのです」
「特別製の銃弾……?」
ラフィンの話に、美誠は怪訝な表情を浮かべる。
「ええ。その銃弾の中にクローン体の組織を破壊することの出来る薬を注入してあります。クローン体はさまざまな異変を起こすことがあるので、普通の銃弾では倒れないタイプもいます。それに対抗する手段としてその銃弾を用意したのです」
「へぇ! 凄いじゃない! ホラ美誠! ラフィンもちゃんとやることやってんだからもういいじゃない!」
「だけど俺を実際に守ったのはダルタニアスさんじゃない。魁だ」
むっつりとふくれっ面で述べる美誠。
「ちょっと! いい加減意地張るのはやめなさいよ。ガキなんだから」
魁が腰に両手を当てて、美誠を叱り付ける。
だが思いがけずに、ラフィンまでもがそんな美誠の言動に反撃をした。
「……私は冷静な判断の元で、学校在中の時のボディーガードを用意したのです。下手な真似をして周囲に変に騒がれることにより、あなたが学校にいられなくなることを予想してのことです。ですがこの事件に私があなたを巻き込んだ以上、居ても経ってもいられませんでした。だからその間少しでも力になろうと、その銃弾を作っていたのです。――少しは自分に責任を持てですって? そんなもの、有り余るぐらい持ってますよ。そんなことは私自身一番身にしみて判っています。それを、いちいちあなたと顔を合わせる度に言われたんじゃたまったものではありませんね」
「俺……俺は……っっ!! 死ぬかと思った……! 俺も、そして魁までもが死んじゃうかと思ったんだ……っっ! なのに……っ、なのにお前がのんきに茶を用意するとか言うから……っっ!!」
言葉を詰まらせながら言い返す美誠の様子に、魁は彼女の顔を覗き込む。
「美誠……?」
「……」
しかしラフィンは無言のままだ。
「俺はダルタニアスさんが何をどう考えてんのか分かんねぇもんよ!!」
「美誠!!」
泣きながらこの場から走り去っていく美誠の名を叫ぶ魁。
そして、キッとラフィンを睨みつけた。
「ラフィン。あの子をいくつだと思ってるの? まだ17の子供よ。そんな少女にとってはあんたと知り合ってからいろんな大事件がありすぎたのよ。それをその小さな心で必死に受け止めようとしてるんじゃない。あの子があんなに必死だってのに、あんたが逆ギレしてどうすんのよ。自分を巻き込んだあんたにだからこそ、いろいろ聞きたいに決まってるわ。そこが全てを知っているあんたと、何も知らないあの子の違いでしょうが。今あの子の心にもゆとりがないのよ。逆ギレしてないで、少しはあの子の心のSOSを読み取って気分転換でもさせたらどうなの?」
魁はそう言い残して、美誠の後を追った。
それを見送りながら、ラフィンは辛い表情を浮かべるのだった。




