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学園一のマドンナに告白されたが、厨二病(魔王の娘の転生体らしい)が激しくて困る

 浅田 龍太は藍空高校の一年生。彼女いない歴イコール年齢(十五歳)のいたって何処にでもいる普通の少年だ。

 そんな浅田は入学して二日目の昼休み、学園一のマドンナと呼ばれている二年生の灰田 弘子から呼び出されて告白される。

 驚く浅田は灰田に何故かと問いかけると、灰田の口から語られたのは、衝撃の厨二病エピソードだった!

「浅田……くんで合ってるよね? ちょっと変な質問なんだけど、いいかな?」


 俺の目の前で、少し上目遣いでそう問いかけてくる美少女は、一つ年上、二年生の灰田先輩だ。金髪でウェーブかかった髪を軽く風になびかせながら、少し蒼が入った瞳でじっと俺を見つめてくる。

 知らない女の先輩から屋上に呼び出されたら、灰田先輩だけ(・・)がいたから俺はビックリした。

 で、俺が屋上に来るや否や、俺に問いかけてきた、という訳だった。


 灰田先輩はこの藍空高校で一番人気のマドンナ、らしい……腐れ縁の渡辺からの受け売りだが……

 そんな灰田先輩はどう考えてもモブキャラ間違いなしの俺からしたら、高嶺の花に間違いない。

 正直、面と向かって話をするには眩しすぎる存在だけど、俺はなるべく冷静に……と思いながら答えた。


「え、ええ……内容にもよりますが、なんでしょうか?」


「浅田君ってまだ彼女とかできたこと無いよね?」


「えっと……」


 確かに変な質問だよな。今居ないよね? とかならまだしも、今までって? あまり聞かないよな……

 まぁ確かに俺はモテないから、ここまで彼女なんか出来たことないけど……

 高校生活で出来たらいいなぁ、とは思ってるが……

 とか考えながら、俺は灰田先輩の質問に対して少し怪訝そうな表情で答える。


「はい。まだ無いですけど……」


 すると俺の答えにパァっと灰田先輩の表情が明るくなる。そしてじっと真剣な眼差しで俺の目を見つめてきた。


「良かったぁ! ねぇ、私の彼氏になってくれない?」


 一瞬、時が止まったような気がした。学園のマドンナから予想だにしなかった言葉が俺に投げかけられたからだ。とても甘くアイドル声優のような可愛らしい声だけど、真剣さは伝わってくる。冗談で言ってることじゃないのは俺でも分かる。罰ゲームとか、からかいで聞いてる訳じゃないとは思った。

 灰田先輩は確かにカワイイ。そんな灰田先輩と付き合えたら正直嬉しい。でも、俺だってそこまで馬鹿じゃない。そんなことはアリエナイ(・・・・・)とも同時に思った。


「……は? 俺と灰田先輩とがですかぁ?」


 色んな考えが俺の中を駆け巡っている中、なんとか言葉を絞り出したが、そのせいで素っ頓狂な声で聞き返してしまった。

 その俺の言葉に対して、灰田先輩はコクリ……と一つ頷いた。


「え、誰かと間違えてませんか? だってそもそも俺と灰田先輩は初対面じゃないですか!」


 そう、俺と灰田先輩は初対面だった。だから余計に有り得ないと思った。

 しかし、俺の言葉に灰田先輩はゆっくりと首を横に振った。


「いいえ、違うわ。間違いじゃない。浅田君で合ってるわ。それに……初対面なんかじゃない」


「嘘! 初対面じゃないって? あ、昨日電車でお見かけしたから!?」


 俺はふと昨日のことを思い出しそう尋ねた。昨日の入学式の帰り道で、俺は偶然灰田先輩と同じ車両に乗っていた。そこで見とれてしまったのだけど、それを逆に灰田先輩に見られて覚えていた可能性がある、と思ってのことだ。

 確かにその時、灰田先輩もチラチラこっちの方を見て、時々目が合ったような気がするとは思っていたけど……そもそも会ったこともないし、こっちを気にする訳もないから気のせいだと思ったんだよな。

 ちなみに俺はその時灰田先輩のことを知らずに、一緒に帰っていた渡辺から、さっきのことを電車を降りるまで延々と聞かされた。という訳なのだが……

 まだ入学初日で学園のマドンナのことを既に調査済みってのはさすが渡辺だというか、なんというか……しかも色んな女子の先輩やら同級生やらチェックしまくってたな……


「それはそうなんだけど……そうじゃなくて……」


 でも、灰田先輩の態度は煮え切らない。なんかちょっと喋りづらそうに俯いてしまった。


「昔会ってるとか、運命の人とか、そんなラノベみたいな展開か……?」


 と、俺が冗談半分に尋ねると、意外な言葉が返ってきた。


「うーん……合ってるというか、間違えてるというか……」


「どういうことです?」


 灰田先輩は未だ煮え切らない態度だけど、俺の冗談半分に投げた言葉が予想外に肯定されてしまったので、俺もかなり興味が湧いてしまった。


「二人だけの秘密にして欲しいんだけど、いいかな?」


「ええ……」


 俺の答えを聞いて、灰田先輩は一つ、大きく息を吸ってから、覚悟を決めたように話し出した。


「実は私と浅田君って前世で会ってるのよ」


「……は? 前世……ですか? もしかして、前世で恋人同士だった……とか?」


「ううん、違うわ。どっちかというと……浅田君と私は敵同士……かな?」


「敵……ですか?」


「あ、でも浅田君と私は直接戦ってる訳じゃない。実は私の前世は魔王の娘なの。ここじゃない世界の話。私のパパは魔王だったの。で、浅田君はその魔王を倒しちゃったのよ。パパを倒しちゃったから、敵同士……みたいなもんかな?」


「前世で……ですか?」


「あ、前世って言ったけど、浅田君は前世じゃないわ。私にとっては前世だけど、浅田君にとっては未来の話って言った方がいいのかな? 浅田君は生まれ変わった訳じゃない。これから先に浅田君に起こる話なの」


「はぁ……」


 もうここまで聞いて俺は正直関わりたくない、という感情が湧いてきた。いわゆる厨二病……妄想癖があると思ったから。まぁそれ(・・)自体は別に否定しないし、俺も異世界転生とか憧れてるけど、それを初対面の相手に話すか? ってのが本音。俺なら絶対に無理。だからもう生返事になってしまった。

 でもそんなことを気にせず、灰田先輩は変わらないテンションで話し続ける。


「で、私は秘術を使ってこの世界のこの時代に転生したのよ」


「なるほど……」


「だから、私と付き合ってくれないかな?」


「いやいや、どうしてそこに繋がるんです!?」


 正直、話の内容にもツッコミどころ満載だけど、そこはもういい。妄想を蒸し返しても仕方がないから。だからといって、そこ(・・)に繋がる理由が俺には見当たらないので、それに関しては勢いよく突っ込んでしまった。

 すると灰田先輩は少し俯いて何かを考えてるような素振りを見せた。そして、灰田先輩は俯いたままゆっくりと話し出す。


「……パパを護る為よ……」


「パパを護る?」


 俺は灰田先輩の言葉をオウム返ししてしまう。すると灰田先輩は力強俺の右手を両手でぎゅっと掴み、語気を強めてきた。


「この世界では三十歳まで童貞だと魔法使いになれるって話があるじゃない? だから浅田君を童貞じゃなくせばって! あっ!」


 そこまで言って灰田先輩は手を離し、紅潮させた顔を両手で覆い隠してしゃがみ込んでしまう。まぁ女子が熱く口から出して言う言葉じゃないよな。童貞って。


「もういいですか? それじゃ……」


 恥ずかしがって丸く、小さくなっている灰田先輩に俺はそう言葉を投げかけて屋上から出ていこうと後ろを向いた。


「あ、返事は?」


「いや、返事も何も……」


 あんな厨二病のよく分からない理由を投げかけられて、良い返事なんか出来るはずがないでしょう。

 と喉まででかかったが、それは俺の良心が止めた。

 俺が黙っていると灰田先輩がしゃがみ込んだまま、こう上目遣いに尋ねてくる。


「付き合ってくれないの?」


 その返事に俺は一つだけ頷いてすぐに扉に向かう。


「私は諦めないからね!」


 背後からそう叫ぶ灰田先輩の声が聞こえたが、俺は振り返ることなく扉を閉めた。



 ─────────────────────────────────────


 そう、これは入学二日目の昼休み。俺と灰田先輩の出会いである。それから灰田先輩は言葉通り(・・・・)行動を起こし、俺の学校生活は振り回され続けるのだが、その時の俺にはそんなこと知る由もなかった。

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