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天眼の聖女 ~いつか導くSランク~  作者: 編理大河
パパ志願者と笑う少女
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気弱な少年


「おー、お前さんたちもきてたのか」


 アゼルさんは熊のような大男で、どことなくのんびりとした雰囲気の青年だ。その巨体故最初こそ威圧感を覚えるが、話してみるとただの気のいいあんちゃんという感じで親しみやすい男だ。力も強く荒事にも巻き込まれないアゼルさんグループは、普段一般街で職人たちの手伝いをすることで生計を立てているらしい。

 アゼルさんグループは結構要領もいいし、優秀な人たちの集まりだ。実際、そのステータスも皆結構高い。さっそく、俺はこの眼でアゼルさんグループの能力を順次確認していくことにする。



【アゼル】

種族 :人間

性別 :男性

年齢 :19歳

HP :302

MP : 24

力  :228

防御 :231

魔力 : 22

速さ :142

器用さ:134

知力 :164

魅力 :245


武器適性

剣 :B

槍 :B

斧 :B

弓 :E

格闘:B

杖 :F


魔力適性

火 :E

水 :E

土 :D

風 :D




 その外見からマークスより力は強そうだが、実際は細身のマークスより少し劣るぐらいだ。その分、防御に特化している。この近辺では敵う者はいないだろう実力者といえる。ただ本人は荒事はあまり得意じゃないと公言しており、よく石切り場などで日雇いとして働いているらしい。


「はい、アゼルさんたちも炊き出しに?」

「おー、タダ飯ほど美味いものはないからなー」


 俺の問いにそう答えた小柄な青年はファムさんだ。間延びした口調と、目元まで伸ばした髪が特徴的なふんわりとした雰囲気の人物だ。だらりとした猫背で、手首足首が隠れるほどのぶかぶかな服を着ている。




【ファム】

種族 :人間

性別 :男性

年齢 :19歳

HP :168

MP : 56

力  :142

防御 :132

魔力 : 40

速さ :230

器用さ:232

知力 :169

魅力 :200


武器適性

剣 :C

槍 :D

斧 :D

弓 :C

格闘:C

杖 :D


魔力適性

火 :D

水 :C

土 :D

風 :D




 細工職人のお手伝いなんかして、生計を立てているというファムさんは器用さがやはり高い。それにときおり大道芸なんかしている姿もみたことがある。中々に多芸な人っぽい。


「ワハハ。そうそう、飯がタダになりゃそのぶん酒が飲めるしな」


 若は……額の広さが特徴的のケイさんが陽気に笑う。三十代でも通用しそうな容貌の中背中肉の人だが、アゼルさんやファムさんの一つ上らしい。結構な博識らしく、読み書き算術も得意で、ギルドの書類作成の代行クエストや代筆クエストなんかで稼いでるっていってたっけ。




【ケイ】

種族 :人間

性別 :男性

年齢 :20歳

HP :153

MP : 82

力  :132

防御 : 98

魔力 :130

早さ :122

器用さ:153

知力 :237

魅力 :198


武器適性

剣 :E

槍 :E

斧 :E

弓 :D

格闘:F

杖 :B


魔力適性

火 :B

水 :B

土 :B

風 :B




 少し体力面で低い、いかにもインテリタイプといったステータスだな。でも魔力は高めだし、適性も大分いい。もし、魔法が覚えられたら化けるなとは思う。一般人は魔法が使えないとの概念からか、魔力がみんな大分低めだからなあ。


「た、たくさん飲むのはや、やめてください。そ、それで、この前、皆ゲーゲーもどしてたじゃないですかあ。み、皆眠りこけてたから僕が、片付けたんですよ。ま、まだ匂いも落ちないし」


 最後尾でおずおずとケイを窘める少年。華奢な体つきにセミロングの黒髪の線の細い体つきをしている。しかし、その顔つきは素晴らしく整っており、肌も透き通るほどに白くなめらかだ。その美貌は中性的だが、男の娘タイプのモーラとは違い、正統派美少年にカテゴライズされるだろう。それも、この少年の血筋が関係しているに違いない。


「違うぜ、ウィル。あれは寝てたんじゃなくて悶絶してたんだ」

「そうだぞー、あれは腐ってた酒の方が悪いんだ」

「いやあ、イチかバチかで飲んだが駄目だったなあ。やっぱ安酒は怖いぜ」


 ウィルの言葉に、アゼルたちは陽気に笑う。基本いい人たちだが、こういうところは阿保っぽい。本人たちもその日一日さえ凌げればいいと日頃豪語しているからなあ。ある種、刹那的な明るさなのだろう。


「お、お腹壊したら、死んじゃうかもしれないじゃないですかぁ」


 ウィルはその言葉に怯えたように涙目となる。だが、アゼルたちはそのときはそのときだとばかりにガハハと豪快に笑い合っている。いつみてもウィルはビクビクとしているようだ。自分に自信がないのだろう。でも、これが普通のキッズなのかもしれないと俺は思う。ウチの皆やモーラファミリーが年齢の割に堂々としすぎているのだ。

 はあ、とため息をついたウィルと視線があう。俺は微笑みかけながら弱気なこの少年の、その態度に似つかわしくないステータスをこの眼で確認した。




【ウィル】

種族 :ハーフエルフ

性別 :男性

年齢 :12歳

HP :132

MP :112

力  :112

防御 : 78

魔力 :120

早さ :189

器用さ:220

知力 :155

魅力 :187


武器適性

剣 :C

槍 :E

斧 :E

弓 :S

格闘:C

杖 :B


魔力適性

火 :D

水 :B

土 :B

風 :S




 うん、年齢に比してその能力は高いといえる。しかも弓適性Sだ。エルフという種族は弓適性が高いというのはもはやお決まりである。だが、エルフは吟遊詩人など数名みたことがあり、皆BやAの適性値であったがSはいなかった。初めて会った時、弓が得意か思わず尋ねてしまったが、まともに握ったことはないという。隠れた才能、というやつなのだろうか。


「あ……」


 ウィルは俺の視線に気づくと、両耳を押さえ隠す素振りをする。ハーフというのもコンプレックスなのかもしれないな。こればっかりは年齢など色々な要因があるから難しい。でも気のいいアゼルさんたちと一緒だから、いつか乗り越えてほしいなと思う。

 その後、皆でわいわいと他愛ない世間話をしながら炊き出しを待つ。なんだかんだいって、近隣の住人も大分様変わりしたし、気のいい人も増えた。秘密基地の側に住む者の中にはなんでもそこを聖域と呼ぶものもいるとか。裏の治安維持活動の芽が出たと思えば、嬉しい限りである。もっと住みやすい場所になればいいな。

 そう思っていると、車輪の音が近づいてくるのが聞こえてきた。炊き出し係の神殿の人たちが来てくれたのだろう。俺たちはしばし会話を止めて、やってきた馬車を皆で眺めた。

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