暗闇への突入
よし.......シスとサラが奴に攻撃を加えるのを合図に私は単身であの男が消えていった暗闇の世界への突入をする。
事前にこのような算段を立てていたわけではないにも関わらず、二人には私の意図が十分に伝わっていることは個々の横顔を眺めてみれば容易に想像ができる。
だが、チャンスは一度きりしかない。例え私の意図が二人に伝わったとしてもそれが失敗に終われば、全てが水泡と帰してしまい、もう二度とあの子をこの世界から救い出すことは叶わなくなってしまうかもしれない。
これは大きな賭けだ。だが、やらなければ何も前に進めることはできない。
兄上.....私たちが奴を攻撃したらその隙に一気に奥へと飛び込んでください.......。
シスの私に対する目配せは間違いなくその趣旨の言葉を伝えてくれるものであった。傍にいるサラも同じ思考を巡らせているに違いない。
「あと、1分だけ待つぞ。その間にかかってこないんならこちらからいかしてもらうよ」
残り1分だ。その時間の流れがゆっくりと削られている間にどの方向に行けば奴を掻い潜りあの男が消えた暗闇へと一挙に突入できるかの想定をいくつも繰り広げる。
奴の近くを通ればおそらく私などはすぐに捕まってしまうことは容易に想像できる。
ならば奴の周りを迂回するのはどうだろうか。それならば確かに奴に道を塞がれ捕らえられる心配は著しく減じる。
だが、その代わりに犠牲になる可能性があるのは弟と妹である。二人への負担はそれだけ増幅し、もしかしたら敵に敗れてしまう未来も帯びてしまうのでないか。
その時、ペンダントが微かに光ったかと思えば私にあるイメージを与えてくれる。
よし。これで行くしかない。そう決断した時には与えられた1分という時間のすでに5秒前となっている。
「そうか。ではこちらからいかしてもらうぞ!」
その時間に到達すると黒服は謎の波動のようなものを私たちに放ってくる。
「二人とも!任せたぞ!」
私は二人に後事を託しながら、敵の頭上を空高く回転し、そのまま奥の暗闇へと飛び込んでいく。
ペンダントが私に一時的な跳躍力を与えてくれたのであろう。そのペンダントをギュッと握り締めたのち、私は健一くんを救出するためにさらに奥へと進んでいった。




