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新たな被害

「ああ。もう来てたんだ。この人たち」


ダウナーな雰囲気を醸し出すその声色からはまるで私たちが来ることを予期してきたような言い振りで、その私たちを目下すような目つきは塗りつぶしたように黒く、底が見えないほどの恐怖を感じさせている。


「ふふ。そこのお姉さん。なんで私たちが来たことをわかってたみたいに言うのか気になってるでしょ?」


嘲笑うように私を見て、その心情を手に取るようにして、全て暴露してしまった。図星でしょと下腹を抱え、子供を相手取るように楽々と読み取ったことに私は憂懼を覚える。


「それで、あなたたち、私の予言の力を試しにきた感じでしょ?」


一切の動揺を見せず、挑戦に対して受けて立とうと言うような余裕を見せびらかし、話す前から私たちに心理的な圧力を彼女は加える。今まで経験してきたようなバケモノたちとは全く違うことに私は戸惑いを隠せない。


「こら!紫音!お客様に失礼でしょ!すいません。うちの娘が失礼な態度を......」


「ママ。むしろ失礼なのはこの人たちだよ。私の能力にケチをつけるためにわざわざやってきたんだから。そうでしょ?そこの坊や」


人差し指を庵に向け、あなたが首謀者でしょというように

その視線は庵に挑発的なほどに鋭いものとなり、庵も淡々とそれに答える。


「ええ。あなたのことをニュースなどで見て、気になりましてね。最近では遺体の場所や死亡日時まで予言されたとか」


「そうよ。私の予言は必ず当たる」


庵が述べた事実から鼻高々に自らの予言の正当性を顕示する。しかし、庵はその鼻をへし折るような話を続ける。


「しかし、私はあまりそういった予言とか占いの類を信じていませんでして。ぜひ、何か今日起こることを予言していただければと思いまして」


今までの彼女の予言からすると大抵はメディアの介したものや警察に連絡が入って、判明したようなものであり、

彼女が何かしらの手を使って、事前にそのように仕向けたり、何か情報を仕入れてから予言を開始したというような見方もでき、庵からのその場で突然なされたような状況は今まで一度も試されていない。

仮に予言が当たれば、私たちがここにいればそこから彼女がどのような手段を使って、成し遂げたのかを予言した時間などを用い、ある程度は推測でき、その予言が出鱈目と分かればそれでいい。


「ふ〜ん。私を監視して、私の予言が本当かどうかを推察する手法ってことね。いいわ。乗ってあげる」


唇はスッと角度が上がり、動揺するよりもむしろその提案を楽しむような素振りを見せ、サラの斜めに置いてある一人用ソファー、つまりは庵と対面するような位置にあるところに座り、じゃあ、今から今日起こることを一つ予言するとし、その白い手を額に乗せ、じっと下を俯いたままとなり、ピーンと張り詰める空気が網目のように私たちを覆い、その視線も一気に彼女に注がれる。


「その人は芝田市金笹町に住んでいる46歳の会社員の蒼葉裕貴さんで.......今日の午後20時46分に何者かに殺害された後、近くの川に死体遺棄され、その後警察に発見されますが、死亡が確認されます......」


つらつらと口から行列をなして飛び出してくる数々の予言には、地区、被害者、日時と具体的に羅列され、私は事件を追う記者のように急いで、その地区をスマホで調べる。


芝田市金笹町はここから見れば他県にあり、移動するにも新幹線ですら往復で3時間はかかる。


「一応古賀さんたちに一報入れておこう。仮にこの予言が外れたとしても万が一のことがあるからな」


「往生際が悪いお子様ですね。まあ見ていてください。あなた方も私の予言の力に感服するはずですから」


相変わらずの自らの予言に関しての唯我独尊ぶりを発揮し、庵は自らのスマホから古賀さんたちに連絡を取っている。


私はふと隣のサラの方を覗く。ただじっとその予言を吐く

荻原紫音を見つめ、ただ一人何も言葉を発していなかった。その瞳孔は一体彼女の何を捉えているのだろう.......










◆◇◆◇


カーテンから溢れる光はすでに太陽のものではなく、主役は月に変化しており、その外には喧騒とした赤色の光と何人もの警官たちがその家の周りを囲み、そのさらに外には何事かと押し合いへし合いで押し寄せる近所の人々の波が作り出されていた。


「もうすぐで20時46分です」


庵に呼ばれ、事件性を考慮した古賀さんたちがこの自宅に部隊を配備し、また、他県の県警とも協力して、予言についての捜査を行う構えを取っていた。


今は20時45分、もうすぐでその予言した殺人事件の発生する時間に到達する。時計の針が進む音が異様に大きく聞こえ、彼女の自宅にいる警察関係者、それに私たちも息を押し殺すような緊張感が張り詰めている。


時刻は遂に20時46分をさす。しかし、すぐには音沙汰はなく、またさらに数分を過ぎていった。



するとピリリリリと誰かのスマホの着信音が鳴り、出たのは刑事さんのうちの一人で、その電話口から聞こえてくる報告を聞くたびに顔はみるみるうちに青ざめていき、最後には震える手でさの電話を切った。


「先程、男性の遺体が河川近くで発見されたそうです」


「何!?」


古賀さんの驚きの声と共に周りにいる刑事さんたちもガヤガヤと恐怖の色を露わにし、胆戦心驚してしまっている。


「こりゃ。中々厄介なやつかもしれんな」


そう話す庵の傍でただ一人、冷静な眼差しで荻原紫音を見つめるサラはひたすらに彼女を見つめ続ける。


サラは何かこの子に関してわかったことでもあるのかな....



そう思っていると、サラは彼女からの視線を外し、その場を離れ、一人廊下の方へと音なく静かに立ち去っていっていた.......









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