コミック7巻発売記念:彼女のアレ
本日9/5
『妃教育から逃げたい私』コミックス7巻発売日されました!
なんと今回菅田うり先生の描き下ろし漫画に加え、私の書き下ろし小説も収録されてます!
詳しくは活動報告、またはこのページの下の方をご確認ください。
楽しんでいただけますように!
「ブリっ子どう? 婚活順調?」
「順調! ――と言いたい人生だったわ」
ブリっ子のテンションが一気に落ちてしまった。なんか遠い目してる。
「あぁ……」
うまくいっていないことを察してそんな相打ちしかできない。
「何か……こう、条件を厳しくしすぎてるとかじゃ……」
「そんなわけないでしょう。条件なんて金。金よ金」
「だよね」
そうだと思った。うん。
「ただ」
「ただ?」
「それに追加してできれば極端に年上でない人、愛人希望以外の人も条件にしてる」
「おお……」
それは……。
「割と当たり前の条件では?」
「そうなのよ……親を泣かせないためにこれは外せなくてね……」
そうだよね。親としては愛情いっぱいに育てた娘が、すごく年の離れたおじいさん結婚したり、「本妻いるけど、愛人どう? お金はちゃんとあげるからさ」なんて人と結婚すると言ったら泣いちゃうよね。
聞いてる感じだとブリっ子愛情いっぱいに育てられてるっぽいし。政略結婚で仕方なくならまだしも、本人が選ぶ感じなら、きちんとした人がいいよね。
「なのに!」
ブリっ子がテーブルをバンッと叩いて思わずビクッと肩が跳ねた。
「ぜんっぜん相手が見つからないのよぉ!!」
悔しさを隠せずにブリっ子が叫んだ。
「こんな当たり前の条件にしてるのに……! どうして愛人希望ばっかり来るのよぉ! わかってる! わかってるわよ! これでしょ! このおっぱいでしょ!」
ブリっ子が自分の胸をバンッと叩いた。ボヨンッ! と揺れた。
「これのせいなのよ! これ!! いいこと何にもない! ドレス着る時も邪魔だし! 動きにくいし! 重いし! 肩こりすごいし! 重いし!」
二回言った。重いを二回言った。そんなに重いんだ。
「セクハラされやすくなるし! 重いし! 視線が顔じゃなくて胸にくるし! 重いし!」
「まあそんなにボインになりたいかと言うとそうではないわね……」
「でしょう!? しかもね!」
ブリっ子が拳を握った。
「食べなくても減らないのよ! 脂肪のくせに!!」
いっぱい食べてますがね、君。
私はブリっ子の前にある空になった皿を見た。
山盛りに盛られてたじゃない、クッキー。
私の視線に気づいたブリっ子が皿を見ながら言った。
「私はね、燃費が悪いのよ」
「燃費が」
「いっぱい食べないと動けないのよ」
「へえ……」
「だから食べなかった時は痩せるのよ」
ブリっ子がまた腕を構えた。動きが読める。読めるぞ!
「でも身体は痩せても痩せないのよこの胸だけは!」
ブリっ子がバチーンも胸を叩いた。どうでもいいけど痛くないのかなそれ。
「おかしいでしょう!? もはや呪われた胸かと思ったわよ!」
「呪われた胸」
「この胸が減ったらまともな相手が来るかと思ったのよ! ダイエットしたのよ! 胸が減ると思ってね!」
「ああ……」
「身体は痩せて胸の質量が増えたわ。なんでよ!」
知らないよ。
「いっそ胸筋を鍛えたらどうですか?」
「胸筋を?」
今まで静観していたマリアが提案してきた。
「脂肪を筋肉に変えてみるんですよ。そうしたら減るかも」
「そう思って鍛えたのよ」
「まさかの実施済み」
ブリっ子が頭を押さえた。
「胸の張りがよくなったわ」
「張りが……」
「張りが」
頷くブリっ子。
「それ以上鍛えてさらに胸が大きくなることが怖くてやめた」
「それは確かにチャレンジするには怖いですね」
「でしょう?」
「もしその方向でできれば私が鍛えて差し上げようかと思いましたのに」
マリアが少し残念そうだ。
「でもこの悩みともおさらばできるかもしれないのよ」
ブリっ子の表情が明るくなった。
「何か方法が?」
「ふふん、これ!」
ブリっ子がバッと何かを私に差し出した。
「何これ?」
「脂肪燃焼クリーム」
瓶に詰められたそのクリームをブリっ子は大切そうに持った。
「すっごい効くんですって。これで私の胸も減るはずだわ」
「へえ……」
塗るだけで脂肪って本当に減るもんかなあ。
「見てて! 私生まれ変わってみせるから!」
ブリっ子はやる気満々に去っていった。
後日、ブリっ子に会った時、彼女はほっそりしていた。
「効くには効いたわ。胸以外」
もはやその胸が何でできてるのか気になり始めた。
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