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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第一章

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18羽 「証明のしようがないですが」①

 テルク=ファルとの国境にある検問所の北ハルナシーヴへ着いたのは、一晩だけ野営して、その次の日。日が傾き始めるころだった。

 ただハルシーピ車に乗って揺られているだけだったけれど、なんとなく疲れるしお腹も空く。なんだかんだ、ただの徒歩移動とは違う筋肉とか使っているんだろうな。

 事前連絡してあったようで、検問所ではすぐに招き入れられたけれど、同乗者に隣国の重鎮がいて「やあ、こんにちは」なんて言ったもんだからみんなびびっていた。で、ブロム外務卿さんもタルクも、手荷物検査はない。日本で言うところの外交官特権みたいのだろう。僕はムルナヴェンから持ってきた家財道具があったけれど、それも東ハルナシーヴでの検閲を通過したままパッケージを解いてすらいなかったので、目視確認で終わった。いいのかな、それで。

 夕食をいただいて、一泊だけして、次の町へ。ハルヴェイクっていうらしい。ヴェルク=シーヴィの中にある市町村、名前にヴが多いな。なんか、これまで見たどの町よりも栄えていて、華やか。国境を越えてすぐの交易中継点ということと、首都が近いということで、卸問屋がたくさん集まっているらしい。大きい建物が目立つのもそういう理由からだと思う。全体的に、要塞っぽいイメージかな。

 で。ハルシーピ舎にグラたちを預けたんだけれども。


「……ヨータ。服買いに行くぞ」

「なんで」

「普段着じゃダメなんだよ」

「ちょっとまってなにそれこわい」


 問答無用で連れて行かれたのはでっかい建物のうちのひとつ。ブロム外務卿さんもついてきた。外に看板を掲げていないところが多くて、ここもなに屋さんなのかよくわかんないな。店員さんはタルクを見るなり全員姿勢を正して左胸に手を当てて「いらっしゃいませ」と言った。なにそれこわい。


「こいつをどうにかしてくれ」

「どの程度まででしょうか」

「拝謁」

「かしこまりました」


 かしこまらないでほしい。そしてしれっと僕に説明もなくすごい単語を吐かないでほしい。あきらかに役職のついてそうな、にこやかなイケオジが有無を言わせぬ圧を持って「どうぞ、こちらへ」と僕へ述べる。拒否できなくてそれに従った。

 まず、もみくちゃにされながら採寸された。それから散髪。伸び切ってたからね。顔剃りと眉毛の整えも。なんか全体的にタルクっぽくされた。そしてお風呂に放り込まれてめっちゃ磨かれるところだったんだけど、やってくれるのが女性だったから全力で拒否した。さすがにムリ。そこは譲歩してくれて、ムキムキの男性がやって来て全力で垢すりしてくれた。めっちゃつるつるになった。スーパー銭湯の高い垢すりコースみたいだった。


 で、出て。ドライヤーとかないからタオルドライ。まあ短くなったからすぐ乾くだろうけど。そして着せ替え人形。気分はリカちゃんボーイフレンドのレンくんだ。あんなイケメンじゃないけど。ちなみに妹にレンくん役をやらされていたときは、ユウトくんって呼ばれていた。その男はだれだって未だに聞けていない。

 で、イケオジ店員さんにファッションチェックされて、おしまい。

 ――長かった。

 ハルシーピ車での長時間移動よりも疲れた。


「おー! 見違えましたね!」


 迎えてくれたのはブロム外務卿さん。なんかメガネ磨いてもらって、服も新調してって感じ。元々きちっとした服装だったのに、もっとなんか、きらびやかきちっとになった。

 そして、タルクもどっかのドアから出てきた。……イケメンが着飾ると破壊力すげーな。どちくしょう。なんか、惨敗すぎて悔しくも感じないところにどちくしょう。


 タルクはしげしげと僕を見て「おー! 変わるなあ!」と言った。

 僕は、なんかすごくキレイな刺繍が入った紺色で丸首の厚手ジャケットを着せられている。スラックスも同じ布で、ジャケットの上から太い飾りベルトを締められて。タルクも同じ感じだけど、その上にいつもの右肩当てをしている。身分証みたいなものなのかね。


「元々、いいところの子息って感じだったが……いいんじゃねえか。似合ってる」

「それはどうも」

「感じって、どういうことですかねえ? ヨータくんはどこのお生まれなんで?」


 タルクの言葉を聞いて、すかさずブロム外務卿さんが言ったけど、タルクはガンスルーしてた。僕もならってなにも言わない。

 で。連れて行かれたわけです。


「タルクはもうちょっと僕へ親切にしてもいいと思う」

「してるだろ。めちゃくちゃしてるだろ」

「事前説明なしのこの状況見てもそれ言える?」

「事前説明したら逃げるだろ、おまえ」


 閉ざされたでっかい両開き扉の前。鎧の兵士がその両サイドで番人をしている。ブロム外務卿さんは別室で待機みたいだ。僕もそっちへ行きたかった。すごく行きたかった。

 向こう側には、ヴェルク=シーヴィで一番偉い人がいるらしい。王様なのか聞いたら、ちがうって言われた。なんか、王政ではないんだそう。でも共和制ってわけでもないみたいだ。よくわからん。説明してくれ。

 とりあえず、謁見って言葉が使われるような人に会うわけだ。なんで。説明してくれ。

 なんか中から合図があったらしくて、左右の兵士さんがシンメトリーな動きで扉を開けた。こういうの練習するんだろうか。

 

 通されて、数歩進んだところでタルクが立ち止まって右手を左胸に当てたもんだから、僕もそうした。本当にお願いだから僕の空気読みスキルを信頼しないで事前説明とか説明とか説明とかしてほしい。中は玉座の間みたいのを想像していたんだけれど、むしろ執務してない執務室って感じ。でっかいマホガニーっぽい机から立ち上がった男の人が「よく来てくれたね」と歓迎してくれた。

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