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飛ばない僕と、空を行く君と  作者: つこさん。
第一章

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26/48

14羽 「俺の目はごまかせんぞ」①

「こっ、これ!」


 持っていた包みを両手で僕に押しつけてくる。なんだろうと思って受け取ると、ちょっとあったかくていい匂いがする。


「どっ、どうせちゃんとした食事してないんでしょ! パン焼いたから、食べなさいよ!」

「えーっ、ヤーヴァちゃんが焼いてくれたの⁉ うわー、うれしい、ありがとう!」


 すごい、焼き立て! あー、食事もうちょっと後にすればよかった。僕が「友だちが来てるんだ、ちょうどよかった。いっしょにいただくね!」と言うと、それで室内のタルクの存在に気づいたみたいでびくっとした。そして、真っ赤になる。


「じゃ、じゃあ、これで!」

「ちょっと待って。送っていくよ、暗いし」

「いい! いいから!」


 走って行っちゃった。まあすごく遠いわけじゃないし、だいじょうぶかな。しばらく背中を見送ってからドアを閉めて振り返ると、なんかタルクがにやにやとこちらを見ていた。


「なにそのだらしない顔……」

「はあ⁉ なんだその言い草⁉」

「なんかニヤついて。キモ」


 僕がテーブルに包みを置いて言うと、タルクはまたニヤッとした。なにそれキモ。


「いやあ、おまえも隅に置けないなあと思ってさ。はっはっは。なんだ、ヤーヴァちゃん? 仲良くしてるのか?」

「うん、よくしてもらってるよ! グラがいるところ、ヤーヴァちゃんの家の畑」

「あー、そうか。そういう流れか。グラもまさか自分の落ちた場所で恋敵ができるとは思いもしなかっただろうな」


 なにを言っているんだこいつは、と思ったので、僕は「なにを言っているんだ、君は」と言った。


「で、どうなんだ。おまえ的にはアリなのか?」

「なにが」

「はっきりと顔は見えなかったが……かわいいじゃないか。手作りパンだってよ」


 ああ、そういうこと、と思って僕はため息をついた。食べさせてやろうと思ったけどやめようかな。包みを開いたら、ブールみたいに丸い小さいパンが何個も。タルクが手を伸ばして来たから包みごと引っ張って阻止した。


「あのねえ、あの子たぶん13歳くらいでしょ。僕みたいなおっさんをどうこう、あるわけないでしょうが。犯罪だよ、そんなの」

「おっさんて……もしかして……あの26って設定、本当なのか?」


 タルクがこれまでにない真顔で聞いてきた。なんとなくそんな気はしていたけどガチで信じていなかった。僕はやけくそで「えー、どうすれば信じていただけるのでしょうかー、来歴をすべて説明すればいいのでしょうかー」と棒読みで言った。そしたら「おう、頼むわ」と言われてしまった。まじか。

 タルクの家に筆記具とかがなかったのは、そもそも紙とインクがめちゃくちゃ高級品だったからみたいだ。ここで買い出ししてたときにお店の人に値段を聞いてびびった。で、書き板って呼ばれている持ち運びサイズの黒板と、三角の形のチョークを買った。今の仕事をするのにこっちの数字を書ける必要があったからさ。練習用に。

 僕はそれを棚から取り出して、テーブルに乗せた。その間にタルクがパンをふたつも手にとっていた。まあいいけど。


 1999.1 生まれる

 2002.4 幼稚園へ

 2005.4 小学校へ

 2011.4 中学校へ

 2014.4 高校へ

 2017.4 大学へ

 2021.4 初生雛鑑別師専門学校へ

 2022.4 鑑別師研修生として就職

 2025.11 ヴェルク=シーヴィへ


 とりあえず日本語でだーっとそう書いて、覚えたてのこっちの数字に置き換える。文字はそのまま。単語わかんないから。ぜんぶ読み上げて、簡単に説明する。せっかくだから単語を教わって書き換えた。

 それから。ふっと、気づいて。


 2026.1 27歳になる

 現在


 そう、書き加えた。


 こちらの四季や暦が、どうなっているのかよくわからない。たぶん10進法であってると思うけど。僕が来たときは冬の終わりごろだった。今は夏だって言われているけれど、僕にとっては秋みたいだ。

 タルクはテーブルに肘をついて身を乗り出しながら、じっと黒板を見ていた。それから目線だけを僕に寄越して、ちょっとじっと見てから、言った。


「……勉強してばっかだな、おまえ」

「おかげさまで。ちゃんと活かせてないけどね」

「……まあ……十代にしたら、落ち着きすぎだとは、思っていた」


 やっぱり十代だと思ってたのかよ。まあいいけど。若く見られがちなのは前からだし。納得してくれたみたいなので、手をパンパンと叩いてチョークの粉を落としてからヤーヴァちゃんのパンを口に運んだ。……うっわ、カリふわ。カリッとしていて中がふわふわ。最高。


 なんかタルクは僕が二個目のパンを食べ終わるまで黒板をじっと見ていた。それからおもむろに自分も黒板とチョークを取って、ちょっと考えながら、ゆっくりなんかを書き始める。

 書き終わったら、僕の方に向けて、テーブルへ置いた。

 僕が書いた隣へ。タルクの来歴が書き加えられていて。


 生まれる

 幼稚園へ

     >生まれる

 小学校へ シーヴトゥーム学堂院へ

 中学校へ 翼騎兵団へ

 高校へ 正式な入団

 大学へ 飛行訓練へ

 初生雛鑑別師専門学校へ 翼騎兵隊・嵐翼分隊へ

 鑑別師研修生として就職 翼公麾下へ

 ヴェルク=シーヴィへ ヨータが来る

 27歳になる 24

 現在 ヨータとパン食ってる


 最後のを読んでちょっとウケたら、なんか黒板を奪い取られた。しかも指でこすって自分のところだけ消しやがった。


「なんだよ、ちゃんと読んでなかったんだけど!」

「あー、やめやめ! いーんだよ、こんなのは!」

「タルクが来歴説明しろって言ったんだろー!」


 なんかいろいろそのあとくだらないこと言い合った。でもそれがあまりにもくだらなくてなにを話したか記憶にも残らなくて、ただ笑いまくったことと、ヤーヴァちゃんのパンが美味しかったことだけ覚えてる。

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