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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の一:最大魔力999の私は魔物に囲まれてもイケメンモテモテスローライフを送りたかっただけなんですけど?
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三人目と四人目?

 魔導学校に入学するために三ツ目族のサダクは街に到着した。途中、道に迷ったと思われる少女、レイラを連れていた。街に入ったことでサダクは自分の使命が果たされたと思った。彼はレイラについて考えた。


「レイラ、お前これからどうするんだ?」


「ど、どうしよぉ……」


 レイラはう~んと唸ったが、サダクには彼女が迷っているようには見えず、何かが起こるのを待っているようにも見えた。彼にはそれが不思議でならなかった。彼女は全てを知っているようでもあり、知らないふりをしているようでもあった。そんな彼女に興味を引かれている事に彼はまだ気づいていなかった。


 しかし。サダクとは逆に角族フムアルは、彼女の言葉をそのまま受け取った。


「え、どうするって?君はこの街に用事があるんじゃないのかい?」


「いやぁ、用事があるわけじゃないんだよねぇ、えへへ……」


 苦笑いをしているレイラを見てサダクがフォローした。


「いや、こいつさ、自分がどこから来たのかすら分かってないんだぜ?」


「え、えぇ?そうなのかい……。一体どういう意味なんだい?記憶喪失とか?しかし、君の姿……見たことの無い種族のような……」


 フムアルは驚きつつ、彼女の姿を不思議に思い始めていた。


「そうだよなぁ、俺もそう思って不思議……」


 サダクが後ろ向きでそんなことを話したので露店で本を探している人にぶつかってしまった。


「あ、すまん」


 サダクはすぐに謝ったが、本を落とされて彼は怒りを露わにした。


「ふん……。三ツ目族か。しかも眼が開いていない未能力者か……。それならぶつかるのも致し方ない、能力の開花した三ツ目族は後ろを向いていても普通に歩けるようだしな」


 彼は明らかにサダクに喧嘩を売っていた。無論、売られた喧嘩を無視するサダクではなかった。


「あんっ!なんだてめぇ……」


 二人は一触即発状態だったが、レイラは冷静だった。


(どこで口出しすれば良いのやら……。これもシナリオ通りなんだよなぁ……)


 つまり、攻略対象の三人目、赤目エルフ族シェラとの出会いイベントだった。シェラは赤い目をしたエルフ族だった。知識を求める彼は本屋で探しているところだった。


(しかし、何か現実感ない人だなぁ……)


 レイラが改めて見ると、文字通り青白くすっとした顔立ちに赤い目が光っていた。エルフらしく耳も長く、背も高くスラッとした背中まで白銀色の長い髪の毛が伸びていた。


(でもそれが格好いいかもっ……。お、おっと、見とれている場合じゃないぞ……)


 イベント通りの展開でレイラは、自分の出番かなと思った。ゲームでは彼らの喧嘩を止める役がレイラだった。


「ねぇ、止めなさ……え?」


 しかし、彼女が喧嘩を止めようとしたが何処からともなく自分と同じぐらいの年齢の少年が現れた。


「止めなよ二人とも、ここは大通りで人通りも多いから迷惑をかけてしまうよ」


「龍族……、気高き龍族がこんなところにいるとはな」


 シェラは彼が龍族であることが分かると大人しくなった。


「君たちが他国に出てくるとは……。何かあったのかい……?」


「引きこもっても居られなくて、他国を見聞しなくてはならなくなったのさ」


「ふむ、そうか……」


 しかし、サダクは彼の姿を見て呆れてしまった。


「何が気高き龍族だよ、服はボロボロじゃねぇか」


 確かに彼の服は今にも崩れ落ちてしまいそうなぐらいボロボロだった。


「こ、ここでも金がないのだ……」


 龍族の彼は顔を赤らめていたが、サダクは追撃し続けた。


「はぁ?お高くとまっているようだけど、ただの貧乏人じゃないかよ」


「……ま、魔導学校にさえ入れれば食事は何とかなるはず!制服はあるのだ」


「はぁ、なんだ?見聞ってのは魔導学校に入ることかぁ?」


「そ、そうだ。何が悪いのだ……」


「いや、悪くねぇけどよ」


 サダクはそう言うと、フムアルの方を向いた。


「僕らも魔導学校に入学するために来たんだよ」


 龍族の彼は驚きつつ、歓喜の声を上げた。


「おぉっ!そうだったのかっ!私はイェッド・プリオル・スオピレクスア。イェッドと呼んでくれ」


 イェッドはそう言うと落ち込んだ。

 そして、シェラもあきれ顔になった。


「はぁ、まったく。君たちもそうだというのか。魔導学校のレベルも落ちたものだな」


「んだよ、お前もかよっ!」


「ふんっ!私はシェラ・タン・スエリア、エルフ族の名前を覚えておくがいいっ!」


「俺はサダクビア・スアリ・エクアって言うんだ、サダクでいいぜ?」


「私はフムアル・サマカー・スケスピ……。フムアルと呼んで欲しい……です。よ、よろしく……」


 レイラは、彼らの自己紹介はどうでも良かった。どうしても納得がいかないことがあった。


「だ、だれなの……あんた?」


「誰って……。私は気高き龍族のイェッドだ」


 龍族の彼、イェッドはゲームに登場しなかったからだった。


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