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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド壱の二:嫌になったら生まれ変われば良いんじゃね?
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異世界転生の秘密①

 少し前、大寬と日高は津名を探して校内を彷徨っていた。校内にはほとんど誰も残っていなかったので彼女達の足音が聞こえるぐらいで校庭のフォークダンスの曲が遠くに聞こえていた。

 大寬はなかなか津名が見つからないので憤慨した。


「津名っ!何処に行ったのよっ!いきなり消えるんだもんっ!」


"まぁまぁ落ち着くのだ、わんた君。津名氏は仕事だ~、とか言ってたじゃまいか"


「文化祭が終わるまでにターゲットが何かをするみたい……あっ!」


 すると、フォークダンスの曲が終わって、蓮沼時子の歌が聞こえてきた。大寬は走るのを止めて肩を落とした。


「歌まで進んじゃった……、もうすぐ文化祭も終わってしまう……」


"津名氏と踊れず残念じゃったな……"


「お、踊り……?フォークダンス……?って、踊りたかったわけじゃないわよっ!……いや、ちょっと踊りたかったかも……」


"本音が漏れとるじょ……"


「うっさいわねっ!……キャ~ンッ!」


 またも日高にからかわれた大寬だったが、急に例の素っ頓狂な声を出したので日高は耳を押さえた。


"急に来たな……、その声とハート型の目は……、津名君がうちゅう天使ちゃんになったのかいな"


「ターゲットが動いたわっ!イフレールはどこぉ~っ!あぁ、また一人でやるつもりなのぉ~、どこどこ、イフレッ!」


 大寬は、ハートの目でキョロキョロし始めたので日高は一つ合点がいった。


"もしかして津名氏が一人になったのって、わんたがうざったかったんじゃ?"


「キッ!だ~~れがうざったいってぇ?」


"きゃん、ぷぅぅ~っ!おぉ、おっと、わんたみたいになっちゃった……"


「……おぉっと!?イフレの気配はっけ~んっ!」


"見つけた……?"


 日高が大寬の方を向いたときには彼女はすでにその場に居なかった。


"……わ、わんた?居なくなった……。ずるいなぁ、今回は何処に行ったか分からんちゃん、私も見たかったのにぃ……"


 日高はひねくれながら取りあえず、天井をすり抜けて上昇した。光り輝く者が見えてすぐに津名だと分かった。


"お、おぉ?津名氏、あそこじゃまいか"


 それと同時に津名に向かう一筋の光も見えた。


"……な、なんだ、あれ?何かが津名君のところに凄いスピードで向かってる"


 それが何かは分からなかったが、津名のところに日高は飛んでいった。


----- * ----- * ----- * ----- * ----- * ------


 蓮沼時子の歌が終わる頃、津名は体育館の上にテレポートして自分に迫ってくる一体の霊体を迎えた。その霊体は津名と同じぐらいの年齢の男子のように見えた。


"津名ぁぁぁ、その身体もらったぁぁぁっ!"


 それが高速以上の速度で津名に迫ったが、彼はその霊体を見つめてひとこと言った。


「待ってたよ」


"はっ!?"


 その霊体は、今までの転生でそんなことを言われたことなど無かったので戸惑って止まってしまった。


"お、お前はオレが見えるのかっ!?"


 津名は霊体の声には応えなかった。しかし、霊体は自分を見つめているので答えなくても分かった。


"見えている……のか……ど、どうして?"


「君の転生能力はすごいね、凄いというか珍しい能力というか……、まぁ、だから僕がここに来たんだけど」


"て、転生のことまで知っている……?"


 螢田は得体の知れない津名に恐怖を感じた。


"津名ほずみ……、お前は何者だ……"


 そして、あの女が止めろと言った意味が分かったような気がして、この場から離れて自分の身体に戻ろうとした。しかし、彼の次の言葉が霊体をこの場に踏み留ませた。


「ねぇ、一番初めは松本浩一だと思ってる?」


"……!!!な、なぜ、その名前を知ってるのだっ!"


 螢田は訳が分からなかった。転生は、自分とあの影の女だけの秘密のはずだった。螢田の身体は震え始めた。


"し、知っているはずがないっ!"


 津名は更に不可思議なことを話し始めた。


「松本浩一が"始め"だと思っているかもしれないけど違うよ」


"違う……?何が違うんだっ!"


「君は松本浩一になる前、別の宇宙に居たんだ」


"な、なにを言ってるっ!そんな訳が……あ、あれ……"


 この世に生まれた最初の身体が松本浩一だと思っていた。しかし、その前の記憶がうっすらと思い浮かび始めていて戸惑い始めた。



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