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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の五:サダク編:全てが消える
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神殿のボス戦?

 眠り込んだ街に裂けるような爆音が響くと、レイラ達は疑問を払う間もなく再び走り出した。目的は変わらない――スウドや捕らわれた王族たちを助け出すため、牢獄へ急ぐのだ。


 しかし爆発の発生源が牢獄の方角だと気づいた瞬間、レイラの胸は凍りついた。最悪の事態が起きている可能性を否定できず、足取りが一瞬重くなる。


「あの爆発って牢獄の方だと思う……」


「なんだってっ?!マジかよ、スウドや親父たちは無事なのか?ちっ、親父なんてどうでも良いってのに……」


 サダクは弟スウドの無事を案じたが、同時に自分を否定し続けた父親や王族たちのことを思ってしまった。

 レイラもまた、ゲームには存在しなかった出来事の連続に戸惑い、言葉を失いながら状況に対処しようと必死に思考を巡らせていた。


「わ、分からない……。こんな事、ゲームになかった……」


「そうか……」


「うん、だけど、その前に神殿を通る必要があると思う……」


「神殿?」


「そう、キエティというボスのいる……」


「ぼす?それはなんだ?」


 ゲームのマップでは、牢獄の脇に神殿が配されており、そこを経由せざるを得ないルートになっていた。神殿の奥にはボス戦が待ち受けていた。


「キエティという大魔法使いがいて、ダビ、キナーン、プリマが彼女の周りにいて、苦戦するの。敵が強すぎてクリアできない人が続出するイベント……。セーブするところがないから失敗すると街の外からやり直しで挫折する人が多かった」


「"いべんと"とか"せーぶ"とか何を言ってるのか分からないが……、キエティおばさんと戦うのか。ダビとキナーンも?あの二人とねぇ」


「君の幼馴染みだっけ……」


「だぜ?」


「だ、大丈夫?友達と戦うことになるけど……」


 こんな問いかけはゲームでも主人公はしなかった。そもそも幼馴染みという設定自体がなかった。


(これはリアル……。友達と戦うことになるなんて……)


「友達だろうと何だろうとキエティの見方をするなら関係ないっ!俺はスウドを助けるだけだっ!お前も俺の力になってくれっ!」


「うんっ!(キュン……、か、格好いいこと言いおって……)」


 レイラがときめいていると、突然ギエナが叫んだ。


「あっ!あれはなんじゃらっ!?」


 サダクもレイラもその足が止まって目の前の光景に目を奪われた。


「な、何だよっ、あれはっ!?」

「あれはまさか……」


 視界に飛び込んできたのは、崩れかけた神殿と唸るように渦巻く暴風域だった。かつてサダクが城の上空で暴走したときの光景と似てはいるが、規模と凶暴さは比べものにならなかった。


「違うな、俺は知っている……」

「……サ、サダクと同じ?」


 その異常さにギエナは思わず頭を抱え、声を震わせて叫んだ。


「んがっ、ちょっとまっちっ!もう一つあるよぉぉぉっ!もうこの世界がイミフ~だってのにぃぃ~~っ!またまたたまたまフ~だよおぉぉぉっ!台風が二つもあってヤバいってぇぇっ!」


 理由は誰にも分からなかったが、神殿の周囲には二つの暴風域が同時に渦を巻いていた。半壊した石柱や瓦礫が風に掬われて宙を舞い、互いにぶつかりながらさらに砕け、粉塵が勢いよく上空へと巻き上がっていく。轟音と風圧が地面を震わせ、視界は霞んでいた。


 しかし、その凶悪な光景に似つかわしくない人影があった。二つの暴風をものともせず、両腕を大きく広げて立つ一人の男――その顔を見た瞬間、サダクとレイラは同時に叫んだ。


「あ、あいつはっ!?」

「コ、コカブ校長っ!?ど、どうしてここにっ!」


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