ねんころりん
結局、レイラたちはただ戸惑いながら建物の陰から様子を窺っているだけだった。やがて誰も戻らず、サイレンの音も静かに途絶えた。
「う~~……」
ところが、今度はレイラが小さな声だったがサイレン音でうなり始めた。
「どうした、レイラ?体調でも……」
サダクが不思議がっていると、レイラは突如として街の大通りへと飛び出して行った。
「お、おい、レイラ!何をしてるんだ!」
サダクの制止を聞かず、レイラは何を考えたのか、急に大声を張り上げた。それはまるでサイレン音だった。
「誰もいないぞーっ!うぅぅぅ~~っ!」
その奇行に呆気に取られる間もなく、ギエナも負けじと飛び出して叫んだ。
「あたしも叫ぶっ!うぅぅぅ~~っ!」
二人のサイレン音は次第に連鎖し、静まり返った街に響き渡った。このわけの分からない行動にポリマーは次第に苛立ちを抑えきれなくなり、声を荒げた。
「あぁっ!うるさいっ!何なのよ、あんたたちっ!気でも狂ったのっ?!」
「だって、静か過ぎたから……。誰も居ないし」
その理由も理解不能でポリマはため息が出た。
「はぁ~……。人はいるわよっ!アレを見なさい」
ポリマの指差す先を見たレイラとギエナは、そこで住人たちがうずくまるように眠っているのを見つけた。改めて視線を巡らせると、通りの至る所で皆が深い眠りに落ちている。
「ほ、ほんとだ……どういうこと?」
「ふぇっ?お、おんやぁ?他のみんなも、ねんねんころり……なんでじゃ」
この状況にサダクも不思議に思った。
「レイラ、これも予言通りなのか?」
「違うよ、これだとゲームならないもん。本当は船を下りて街中にいる三ツ目族を倒しながら進むはずだよ?」
街の至る所で人々は眠っていた。まるで何かの魔法でも掛かったようだった。
「みんなで睡眠キノコを一斉に食べちゃったとか?」
「えぇっ?でも、地面にそのまま寝ちゃう?」
ギエナがあり得ない事を言い始めてレイラは呆れた。ギエナはそんなレイラを気にもせず、ウルサリオンも眠っていることにも気づいた。
「よく見るとウルサリオンたちもねんころりんっ!レイラぁぁぁ~、あの子って可愛いくないっ?うへへ~」
「子供のクマちゃんっ!か、可愛い。抱いちゃって良いかなぁ……、うへへ~」
「良いに決まってるっ!」
「だよねっ!」
レイラとギエナが寝ている子供のウルサリオンに近づこうとし始めようとしたのでポリマーがまた怒り始めた。
「あんたたち、呑気に何をやってるのっ!目的を忘れないでっ!!ここは敵地なのよっ!!」
「シュン……」
「ちぇ……怒りんぼおっぱいめ」
「ギエナッ!何か言ったっ!?」
「いいえっ!なんでもおっぱいっ」
「ギエナァァァッ!」
「ひょえぇぇぇっ!」
ともかく、ここで眠っている人達は、今まで普通の生活を送っていたようにしか見えなかった。荷物を運んでいたように見える人もいたし、カフェらしき場所の飲み物は暖かかく湯気が立っていた。
イェッドもこの状況を飲み込めないのか、黙ったまま、回りを警戒している。
(あの金の腕輪を付けている人が多い……。どうしてだ……?)
しかし、サダクはリーダーとして目的を再確認した。
「ともかく、スウドや親父たちが捕まっている場所へ向かおう。レイラ、場所は分かるか?」
「うん、あの先だよ……」
「よし、みんな行こう……」
「だけど、そこには……キエティが待ち受けて……」
レイラがこの先を説明しようとしたときだった。
今度は今度は巨大な爆発音が鳴り響いた。それは地面を揺るがし震動で身体が震えるほどだった。サダクは突然の轟音で戸惑った。
「なっ!!!」
レイラもギエナもこの音に飛び上がった。
「キャッ!!」
「今度はなになになんじゃろかっ!?あっ、分かった目覚ましが鳴ったとか?」
「そ、それかぁ~……」
「もっと小さい音だったらびっくりしないのにねっ!」
二人は妙に納得しかけたが、すぐにポリマが突っ込んだ。
「んなわけないでしょっ!」
「シュン……」
「ちぇ……またおっぱいめが」
しかし、サダクは漫才は置いといて冷静に進路を決めた。
「ともかく、牢獄へ向かうっ!みんな準備をするんだっ!」
「そうだね。みんな何があるか分からない。もうゲーム通りじゃない……」
イェッドの言葉でレイラも真剣な面持ちになった。
(確かに……。こんなイベントなかった。これはリアル……、命だって危ないかもしれない……)
サイレン音と爆発音でレイラ達は戸惑うばかりだったが、一同は目的の牢獄へ向かう事にした。
2025/11/03 名前の修正:同じ様な名前にするからさ、、、ごめんなさい。




