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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の三:サダク編:それは誰のためか
144/183

プリマの役割②

 プリマは、その日の仕事を終えると自室に戻った。疲れた身体をベッドに横たえると通信ワンドが光っているのが見えて手に取った。


┌───────────────────┐

│プリマ?               │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │お母さ~ん!疲れた~!        │

    └───────────────────┘


 連絡してきたキエティは、いきなり愚痴を言われて戸惑った。


┌───────────────────┐

│はいはい……             │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │冷たいな~              │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│何が冷たいよ             │

│定期的に連絡をよこしなさいと言ったのに│

│全然連絡しないんだから        │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │連絡してるじゃんか~         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│これのこと?             │

│はぁ~……私からかけたんでしょ?   │

│着いたばかりの頃に一回だけ連絡して  │

│あれからどれぐらい経ったと思ってるの?│

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │え~、メイドって忙しいんだもん    │

    │夜は疲れて寝たいんだもん       │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│もんもんって……           │

│それで仕事はどうなの?        │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │メイドの仕事は慣れてきたよ、だけど  │

    │あぁ~もうほっとに疲れる!      │

    │この仕事をよくやってたね       │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│最初に話したじゃない         │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │帰りた~い              │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│駄目よ、分かっているでしょ?     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │分かってるけどさぁ~         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│仕事はそれなりにやってるのね     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │それなりって何だよ~         │

    │すご~く頑張ってるって!       │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│それで、シュアトはどうなの?     │

│邪魔されたり、意地悪されてない?   │

└───────────────────┘


 シュアトの存在は、キエティにとって大きな懸念だった。彼女がプリマを快く思うことはあり得ず、何らかの問題を起こすだろうと危惧していた。

 だから、自分がどうにか助けてやらねばならないと考えていた。


    ┌───────────────────┐

    │あのおばさんもめんど~だよね~    │

    │いちいち、こっちを睨んでくるしさ~  │

    │意地悪もたくさんしてくるよ      │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│や、やっぱり……、クソ!!      │

│ど、どんなことをされるんだい?    │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │目の前で食べ物落として吹け~とか   │

    │部屋の隅が汚れてる~とか       │

    │自分で汚した服を私が汚したって言うし │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│腹が立つ!              │

│私がどうにかしてやるよ!       │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │え、別に良いよ            │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│え!?いい?どうして??       │

└───────────────────┘


 自分の出番だと意気込んだキエティだったが、あっさり断られて通信ワンドを落としそうになった。


    ┌───────────────────┐

    │あのおばさん、やり方がワンパターンでさ│

    │対策が楽なんだよね          │

    │発想力がなさ過ぎて笑えるって~のw  │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│な、何か対策したということ?     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │え~っとね……            │

    └───────────────────┘


 プリマは食事を目の前で落とされると、念力を使って素早く拾い上げ、床を汚すことなく元に戻した。

 掃除の際も念力を駆使し、隙間や部屋の端に積もった微細なホコリまでも逃さず除去し、完璧なまでの清潔さを保った。

 汚れた服は、一度彼女自身が洗濯した後、誰にも気づかれぬよう密かに汚されたものだった。


 さらに、シュアトへの報復は念入りだった。階段に巧妙な罠を仕掛けて足を滑らせたり、机の引き出しに虫を忍ばせて驚かせたり、隠れた場所から細い針を放ち鋭く突き刺したり――プリマは、叱責の代償として必ず何かしらの反撃を行った。


 その結果、シュアトは得体の知れない復讐劇に怯え、次第に何も仕掛けることができなくなっていった。


    ┌───────────────────┐

    │私の念力を舐めんなって~の!     │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│……あなた強いわね          │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │お母さんの子だもの          │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そ、そう……             │

└───────────────────┘


 キエティの狙いは、プリマを利用して城の情報を収集することだった。

 メイド長にも諜報活動を任せてはいたが、彼女が裏切る可能性を考えれば、プリマはキエティにとって独自の"保険"となる存在だった。


 しかし、それ以上に驚かされたのは、プリマがシュアトへの攻撃を巧妙に織り交えていたことだ。キエティは自分の娘ながらその手際に感心せざるを得なかった


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