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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の三:サダク編:それは誰のためか
142/183

一人目

 全てが自分の思い通りになった

 全てが自分のために動いた


 これは私が神だから

 私は神の化身としてこの地に生まれた


 私は何をしてもいい


 だって神が私なのだから

 だってみなが私を称える

 だって神の声が聞こえる


 全ての"準備"が整ったと


----- * ----- * -----


 キエティは、既に憎むべきメリクリス王の正妻シュアトとその子ども達の排除を開始していた。


(まずはあの王家の弱いところ、無能王子から……ククク……)


 正妻の子どもを排除するためにキエティは、まずはいつまで経っても三ツ目が開かないサダクを狙うことにした。


 数ヶ月前のある日、彼女は小さな木の棒を取り出し、何事かの呪文を唱えた。

 これは端から見えれば小さな杖にしか見えなかったが、リモートで声をやり取りする魔法がエンチャントされていた。無論、これはキナーンに作らせた魔道具だった。


 杖の一部が小さく光るのを見つけ、キエティからの会話を聞いていた女はその内容に絶句した。


    ┌───────────────────┐

    │え、そんな噂を……?         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そうよ、広めて            │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │で、でもそんな恐ろしいこと      │

    │王に知れたら……           │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そうよね               │

│恐ろしいかもしれない         │

│だから、やらなくても良いのよ     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │そう、それなら……          │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│でも今までのことをバラすだけ     │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │キ、キエティ!そんなの酷いじゃない! │

    │あなたのことを思って私達は情報を   │

    │流していたのに!           │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そうよね、ありがとう感謝しているわ  │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │……だ、だったら           │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│う~ん、今まで宝石とか食事とか    │

│色々なものを送ったはず、そうよね?  │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │そ、それはあなたの気持ちだったのでは?│

    │あなたがメイドだった頃から面倒を見て │

    │いた私達対する……          │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│気持ち?やだ!            │

│た・い・か!対価よ、諜報活動のね!  │

│だって王にバレたら死罪ですものね?  │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │ちょ、諜報活動?           │

    │そんなつもりではなかった、酷いわ!  │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│……あなたの子どもはもうすぐ学校よね │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │そ、それがどうしたの         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│いいえ、別に?ふふふ         │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │ど、どういう意味よ!         │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│ご両親も病気だとか、大変よねぇ    │

│今後も入り用でしょ?         │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │……あ、あぁ……           │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│いつも協力してくれて本当に      │

│感謝しているのよ           │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │あ、あなた……どうしてそんな風に…… │

    │いえ、何でもないわ……        │

    └───────────────────┘

┌───────────────────┐

│そうよね!そうよね!         │

│これからもよろしくね、メイド長    │

│本当にみんないい人達!愛しているわ! │

│悪いようにしないから安心してね    │

└───────────────────┘

    ┌───────────────────┐

    │……                 │

    └───────────────────┘


 スアリ・エクア城で働くメイド長マルケブは、手に持った杖の光が消えた確認すると、力を無くして杖を落とした。そのまま膝を落とし両手で顔を覆った。


(あの純粋で可愛らしかったキエティがこんな事を考えていたなんて……。あの村を大きくして、それで私達も安心していた。だ、だけど、まだ王家を恨んでいたなんて……。わ、私が協力しなければこんな事にはならなかった……。あぁぁぁぁ……)


 マルケブは、自分達が彼女に協力していたことを後悔した。それは引き返せない罪であることも知って絶望し、肩をふるわせた。


「う、うぅぅぅ……。何て恐ろしいことを……」


----- * ----- * -----


 キエティは元は仲間だったメイド達を使って王の配下の者達にサダクの悪い噂を徹底的に広めた。メイド達だけではなく、時には大臣達に賄賂を送り同じように噂を流し、時にはわざと本人の耳に入るように仕掛けた。

 この陰謀は成功し、サダクは劣等感に苛まれると自ら城を去った。


 キエティは余りにも上手くいったので笑いが止まらなかった。


「あははははっ!ヒヒヒヒッ!そうか、そうか、城を去ったかっ!魔導学校に逃げたのかっ!弱者弱者弱者弱者っ!今日は宴会だよっ!ヒャヒャヒャッ!」


 その日は、スナーコ・リプキャで突然宴会が開かれたが住民達は理由が分からなかった。


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