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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の三:サダク編:それは誰のためか
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鳶が鷹を生む④

 翌日からキエティは、キナーンの活躍の場を見つけようと画策し始めた。彼女は村から出て行こうとしている二人を見つけると声をかけた。


「ダビ、キナーン、ちょっと待って」


「どうしたの、お母さん?」

「……?」


「あっ、水を汲みに行こうとしていたのね」


「そうだよ、キナーンの魔法で運べるしさ~」

「桶を空中に浮かべるのです……」


 キナーンは、魔法を使った能力差を気にしているのかまだ少しはにかんでいた。しかし、彼女のしたいことと彼らの作業が一致しているためか特に気にせず話を進めた。


「丁度、良いわ」


「丁度?水が欲しかったの?」

「す、すぐにお持ちします」


「水が欲しいわけではないのよ」


「えっ、違うの?なんだよぉ」

「それって、どういう?」


「あなた達に水を作って欲しいのよ。みんなが困っているでしょ?」


「水を作るぅ?水は作れないよっ!」

「水、水を作る……、作る……う~ん」


 この村で特に困っているのは飲料水だった。村から近くの泉から水を汲みに行ってたが往復すると、我々の時間で二時間ほどかかった。しかも不衛生な水だったため、煮沸してから利用せざるを得ず、不便極まりなかった。

 よって、水汲みが楽になれば、村の生活が楽になるのは確実だった。しかも、キエティは次のアイデアにも生かそうと考えていた。


「やり方は二人で考えてみなさい」


「えぇっ!!無理だよぉ~……、教えてよぉ」


「駄目よ、自分で考えなさい」


「ぶ~っ、なんだよぉ」


 彼女はエンチャントロープを使って寒天海を水に変えれば良いと考えていたが、自分が作ったエンチャントロープでは水に変わる範囲が狭く、水は少ししか採れず失望していた。しかし、キナーンの魔力があればその問題は解決できると考えた。


 だが、そのアイデアについては特に触れず、キエティはダビとキナーンに飲料水を"作る"事だけを命じた。

 キエティは息子のダビが少し甘えすぎであると感じていた。そこで問題を解決させることで成長を促したかった。


「あぁ……そうかぁ……村長はさすがです。ダビ、僕、村長のやって欲しいことが分かったよ」


「そうなの?すげぇな、お前」


「う~んとね……」


 キエティは、わいわいと子ども達が話すのを聞いて頼もしいなと微笑んだ。ダビが思いつかなかったのは残念だったが、彼が王になったときはキナーンがダビの参謀になることを期待していた。


「じゃあ、お願いね」


----- * ----- * -----


 キエティの考えを鑑みたキナーンのアイデアはこうだった。

 まず、ダビに材木のように堅いキノコの中をくり抜かせ、水道管を作らせた。その水道管にキナーンは水化する魔法をエンチャントした。これでキノコ水道管に寒天海を通せば水ができると考えた。


 二人は海岸に井戸すると、ダビがキノコ水道管を縦に持って上からドロッとした海水を流してみた。


「キナーン、すげぇっ!水になるぞっ!」


 キナーンが思った通り、水道管の下から水が流れていた。しかし、何回か繰り返していてダビは腕が疲れてきてしまった。


「段々疲れてきた……。毎回上から注ぐのかぁ?大変じゃない?まぁ、これでも良いかぁ……」


「いやいや、それはね……」


 最終的には風で回る水車を二人は作った。それで寒天海をくみ上げ、"エンチャント水道管"を通した。


「おぉっ!いいじゃんっ!キナーン、やったなっ!」


「うんっ!ダビの力が無かったら作れなかったよっ!」


 この寒天海に塩分は溶けておらず、水になれば多少汚れはあるが煮沸すれば飲むことが出来た。二人は大口を上げると水を思いっ切り飲み込んだ。服はずぶ濡れになった。


「う~まいっ」


「だねっ!!」


 二人はビショビショになった服を脱ぐと水を頭から浴びだして、騒ぎ始めた。


「あははっ!冷てぇぇっ!」


「ひゃひゃっ!気持ち良いねっ!ガブガブッ」


 その声に村人達も集まり始めた。貴重な水を頭から浴びている二人を見て驚きつつ、無尽蔵に出てくる水流に感激していた。

 キエティも二人のところに来ると、満面の笑みとなった。


「二人ともよくやったわっ!」


「えへへっ」

「やっただね、ダビッ!冷たっ!!」


「それじゃぁ、次はね……」


「お、お母さん、まだあるの……?」

「ゴ、ゴクリ……」


 二人はまだあるのかと身体が固まった。水は二人の頭を容赦なく濡らし続けていた。


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