鳶が鷹を生む①
ウルサリオン族の長、アンカへの営業が成功し、ウルサリオン族への流通経路ができた。そのことで村は大きく発展する見込みが立って村は歓喜に沸いていた。
キエティは、エンチャントロープの発明、それを使った新漁業の開発、その漁法による新魚の発見、それら魚を新鮮に保つための睡眠魔法の利用、最終的に販路を構築した。これらの功績は大きく村民達は彼女を敬愛し始めていた。
ただ、キエティには多忙による疲労も見え始め、彼女はある日、料理をしている時にめまいで倒れそうになった。
「そ、村長、お疲れですか?」
「椅子でしばらくお座りになってください」
近くにいたスハイルとアスピディは彼女を支えると椅子に座らせた。
「ふふふっ、ありがとう。もう平気よ。それにしても田舎言葉がすっかりなくなったわね」
「村長のお陰で……ではなくて……私達よりもお身体大丈夫なのですか?」
「村長だけが魔法を使えるので……。もう少しお休みになってください……」
「そうねぇ、そろそろ私以外にも魔法が使える人が欲しいわね。あの子の勉強は進んでいるのかしら?」
二人はキナーンの事だと分かると少し困惑したようだった。
「あぁ、面談で選ばれたキナーンですか?」
「残念ですが、あの子は役立たずって言われてますよ……」
「そうなの?」
キナーンは、キエティが商売を始める前に村民達と面談するときに目を付けた少年だった。彼はダビと同じぐらいの年齢だった。一般的に三ツ目族は魔力が低いが、面談の時に彼女はキナーンにわずかではあったが魔力を感じたので商売の主要メンバーに選んだのだった。
「う~ん、でも、まずは文字を覚えないと話しにならないからダビに教えさせているんだけど」
「う~ん」
「どうでしょう……。あの子、少しは覚えたのかしら……」
二人の話を聞いて不安を感じたキエティは、その夜、ダビに状況を確認した。
「ん?キナーン?僕が教えなくても文字を覚えてたよ」
ダビは素っ気なく答えたが、キエティは理解出来なかった。
「えっ!そうなの?それなら今までどうしていたの?」
「え~、魔法書を読んでるよ」
「ま、魔法書を読んでる?それってまさか……」
「お母さんがお城から借りた魔法書だよ~」
「はぁっ?あ、あれを?」
「駄目だった?」
「いずれ読ませるつもりだったから良いけど……あんな難しい本を読めるの?」
「うん、面白いって言ってた。あいつ僕よりも頭が良いと思う」
「面白いって……。どういうことかしら……」
キエティは漁村で育った子どもが文字を読めるとは思ってなかった。まして魔法書を読んでいるとは思ってもなかった事態だった。
「わ、分かったわ。明日、キナーンを家に呼んで頂戴」
「うんっ」
「今日はもう寝なさい」
「は~い、おやすみ~っ!」




