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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の二:サダク編:キュンキュンブーメラン
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宇宙の神秘

 その夜、城の一部にあった会議室のようなところにレイラ達はキャンプを張った。この城にはノラ魔族達が居たとはいえ、食事も多少残っていた。それらを料理して皆で食べた。


 皆が寝静まった頃、見張りをしていたイェッドは、空を見上げた。水晶に映される一つの青く光る星を眺めていた。


 すると彼の元にサダクがやってきた。昼間の惨事で服がなくなった彼は、残されていた貴族用の戦闘服を着ていた。


「イェッド……」


「やぁ、眠れないのかい?」


「聞きたいことがある……」


「うん」


 イェッドは、サダクの不安を感じ、聞きたいことも何となく分かっていた。


「昼間のあれだ……お、俺は……俺はどうしちまったんだ?」


「どうして僕に聞くんだい?」


 自分の事をどれだけ分かってしまったのだろうかと、イェッドは少し試すようにそう聞いた。


「お前たち全員……魔族じゃないだろ?本当はどこか別の場所からやって来ている。身体は魔族だが魂は違う……俺は昼間の"あれ"でお前らの本当の姿を知ってしまった……」


「あはは……。そっか、そりゃそうかも……。困ったなぁ……」


 擬似的でもあれ、宇宙即我によって惑星や宇宙、そして他者と大きくなったサダクは、イェッド達の本当の姿を知った。


「ポリマもそこそこだが、特にお前の本当の姿は……巨大すぎる……巨大な大きな光にしか見えなかった……。お前は何者なんだよ」


「この星域の問題解決のために来ている……詳しくは言えないんだけど……ごめん」


「問題解決ねぇ……」


 何を解決するためにいるのか、サダクは理解出来なかったがこれ以上の詮索は止めて、本題を聞くことにした。


「まぁ、良いけど。教えてくれ、昼間のあれは一体何だったんだよ」


 サダクは自分が経験した事が知りたかった。自分が見たものは何だったのか知りたかった。彼の知識では経験したこと、見たことを理解することが出来なかった。


「ちょっとした三ツ目の暴走だよ……」


「ちょっとしただって?」


 あれがちょっとした経験で片付けられる内容とは到底思えなかった。


「イェッド、俺は……、俺は見てしまった。違う、見たんじゃ無い、自分だったんだ。世界と一つになったんだ……だから、あれがまやかしでも魔法でもないって分かっている。事実だ、本当のことだったんだ……」


「うん」


「この世界は何なんだ?……何を言ってるかって思うかもしれないが、理解が出来ないんだ」


 サダクの真剣な眼差しにイェッドは答えなければならないと感じた。


「一時的に魂が広がってしまったんだ。理解出来ないのも無理はない」


「広がった……か……。確かにそうかもしれない」


 少し前だったら信じられなかったイェッドの言葉も今のサダクは素直に受け入れることが出来た。


「しかし……、しかし……、ここは丸い何かの中に浮かぶ泡のようだった。その外は真っ暗な空間で……。丸いものが黒い世界に浮いていた。遙か遠くには巨大な炎の丸いものが浮かんでいた。お、おれは分かった……。あれが俺達を生かしている……。どうして分かったのか理解出来ないが……」


 混乱するサダクにイェッドは少しずつ答えていった。。


「それはこの星域の恒星だよ。この星域の中心神がいらっしゃる」


「コウセイ?そういう名前なのか……。あ、あれは真っ黒な空間に沢山あった……か、数え切れないぐらい……」


「恒星は、光り輝き星域の魂達にエネルギーを与えている。それは宇宙の至る所に存在してお父様の光を分け与える役割をしている」


「お父様……?またよく分からん事を言う……。まさか、神だって言うのか?いや、そうだな……あの時、俺を包み込む者がいたから分かる……。そうか神か……」


「そうだね、宇宙のね」


「ウチュウ……?あの真っ黒い空間か……」


「局所的にお父様の光が満ちてるから、真っ黒に感じたかもしれない」


「はぁ……ますます混乱してくるな……。んじゃ、ここは何なんだ?丸い何かに俺達は住んでいるだろ?」


「丸いものは惑星と呼ばれている。人類が魂修行をする場所だよ」


「た、魂修行……?」


「ある程度、惑星で環境が整うと人類が魂の一団として移住してきて新しい経験を積んでいくんだ……あ、混乱しているね……」


「ワクセイか……」


 イェッドは困惑しているサダクを見つめて話を一旦止めた。しかし、サダクはもっと自分が経験したことを聞きたがった。


「お前が言ったこのワクセイってやつに俺達が住んでいるこの空間があるのは分かった。だが、"空間"はここだけじゃなかったんだ……。他にもいくつかあるのを感じた……、あれは何なんだ?」


「確かにこの惑星にはここと同じような居住空間がいくつかあるね」


「そ、そこには何が……」


「ほとんどノラ魔族って呼ばれる生物か、植物や微生物がいるだけだね。まぁ、一応、つながってはいるんだけど……」


「そうなのか……」


 サダクはつながっているならそこに行けば、安住できるのではないかと思った。レイラやスウド、そして、国民達と。そう思うと急に現実に引き戻された。スウドや国民は今は何処にいるのだろうかと気がかりだった。

 考え事を始めたサダクに気づいたイェッドは苦笑いしながら眠って記憶の整理を勧めた。


「あはは……。まずは休むんだ」


「あ、あぁ、そうだな。戻るよ……教えてくれてありがと……すまんが見張りを頼む」


 お礼を言ったサダクを見てイェッドは、彼の心の成長を感じた。


「うん、了解。この身体は睡眠を余り取らなくても良いので助かる」


「はっ、身体ね……」


 イェッドが身につけた服のように"身体"と言ったのでサダクは少し可笑しく思った。


「ほらレイラも心配してるよ」


 イェッドが言ったとおり、彼の目線の先にはレイラが不安そうにこちらを見つめていた。


「サダク、大丈夫……?」


「レイラ……すまん、心配を掛けた……、ありがとう」


 サダクはレイラに寄り添って一緒にテントに戻って行った。イェッドは二人を見送るとまた空を見上げて青い星を見つめた。


「早く帰りたいなぁ……」


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