燃える宇宙②
サダクが広がる意識の中で自分が消えていくのを感じたその時だった。サダクは自分の中にレイラが居るかが分かった。
"お、俺の中にレイラがいる……のか……?レイラ……?レイラ……"
自らの一部に存在するレイラの意識を感じると、彼女の存在を認識した。
"あ、あぁぁぁっ……レイラ……お、お前は、本当は俺達の世界で生まれたのではない……のか……。お前の本当の姿は……"
彼女の本当の姿を意識から"感じる"と、転生前の姿をも認識できた。
"青い……空が青いっ?!白い建物が見える……そこのベッド……黒い髪……あれが本当のお前か……。は、はははっ……。そうだ、そう言っていたな……。自分はいつの間にかここに居たって……アレは本当だったのか……何てことだ……すまん、レイラ……。俺はお前を信じていなかった……。そうだよな、お前は不思議な存在だったもんな……。もっとお前に聞けば良かったんだ……。お前をもっと知れば良かったんだ……"
サダクは、この状態では存在してはいけないことを認識していた。やがて、どうなるかも分かった。
"わ、分かるんだ……。これは正しくない……。俺はこのまま広がり、このくらい世界の一部になるんだ……。すまなかった……レイラ……愛してる……"
しかし、その瞬間、優しさに満ちた声がサダクに響いた。
「戻って、サダクッ!!!」
"レ、レイラっ!?"
彼は耳で聞いたわけでもなく、それを身体で感じた。
「私はここにいるっ!ここに戻ってきてっ!!!」
"あぁ、感じている……分かっているんだ……。お前を知っているんだ……"
「戻って来てっ!!!サダク、愛してるのっ!あなたが必要なのっ!」
その声はあの安らぎの声であり、暖かさでもあった。それが自分を探し、求めていた。戻って来て欲しいと呼んでいた。
その声が自分の耳から聞こえている"音"であることを知ると、サダクは自分に戻っていた。
「はっ!!レ、レイラっ!?」
彼が戻ると周りの強風は落ち着き、残骸も落ち始めた。レイラは、サダクの身体を強く強く抱きしめていた。
「レ、レイラッ!!!お前なのかっ!」
「サダクッ!!……やっと戻って来てくれた」
自分を抱きしめているレイラのぬくもりを感じるとサダクは冷静さを取り戻した。
自分が起こした異常事態のため、周りには何も無くなっていた。ただ、遠くに見える岩肌の空と自分が見た炎の丸い物体から照らされる光を透過する水晶の岩肌、そして、遙か遠くまで続く海が見えた。
「お、俺は……何をしていたんだ……」
自分を抱きしめているレイラの腕や顔は火傷を負っていることに気づいた。それは自分のせいだと理解し、悔恨の念に襲われた。しかし、それ以上に愛おしさが胸の奥から湧き上がった。
「レイラ……お前……火傷が……。す、すまない……」
「ううん、いいの……。私、悪い子だもの……」
「……悪い子?違う……お前は俺にとって大切な存在だ……」
「サダク……」
「ありがとう……、ありがとう……」
二人はやがて壁のなくなった城の頂上に降り立った。周りは何も無かったかのように静まり返っていた。彼女らにギエナとポリマ、そして何処かに飛ばされて戻って来たボロボロのイェッドが近づいた。
「二人とも……。まぁ、今は良いわ……」
ポリマはそう言うと回復魔法を唱えて、レイラの火傷を治し始めた。
「レイラ、少し跡が残るわよ……。全く無茶をするんだから……」
「ありがとう、ポリマ」
ギエナはすでに大泣き状態だった。
「ぶぇぇぇんっ!サダクゥゥゥ、レイラァァァ、あたしは何もできまんだららぁぁぁ。ごめんよぉぉぉ……」
「わ、悪かった……ギエナ、泣くなって」
「大丈夫だよ、ギエナ。ほら涙を拭いて」
「う、うん……。グチュッ、グチュッ……」
サダクは落ち着いたとは言え、身体中が火照ったままだった。ギエナは彼にちょこんと触った。
「サダクが熱いぃぃぃ、しかも素っ裸ぁぁぁ、ぶぇぇぇんっ!」
「あっ」
自分が裸であることを知ってサダクは下を慌てて押さえた。
「あはは……」
苦笑いのイェッドは上着を彼に貸した。
ひとまずサダクの暴走は止まったが、レイラはサダクを抱きしめたまま離れようとしなかった。それは彼も同じだった。二人の心は一つになり、互いを感じ合った。




