疑念
レイラ達はサダクのいる町の中央に位置する城に向かった。ここから城へや一直線だったが、街の人々は全く見かけず、野良魔族が徘徊していた。野良魔族は、ゴブリン、トレント、巨大コウモリ、ラットにスライムと思考能力を持たない、謂わばこの世界の動物のような魔族だった。
「ゲーム通りだなぁ……」
レイラの"ゲーム通り"という言葉を聞いても不思議に思うものは、この場にはいなかった。
「えぇ、そうなん、レイラ……。んじゃま、倒しながら進まないとだめかぁ。幸いあいつの通った後は分かるぞ……」
ゲームと異なっているのは、サダクが通ったところは蹴散らされた魔族達の死体が転がっているところだった。しかし、生き残っている魔物達は、レイラ達を見ると立ちはだかって襲いかかって来た。
「ほら、来るわよ、ギエナ」
「ポリマ、わかりんこっ!」
ギエナは武器を構えた。ポリマもそれに続いて強化魔法を唱え始めた。
<< ナネロ・カレ・テケ・ノ >>
更に魔力無尽蔵のレイラは、強力な魔法を連続で詠唱し続けた。
<< ワ・ルユユ・ヤ >>
その度に魔族達は蹴散らされた。
<< ワ・ア・ルノ・ソ >>
そのためか先頭にいたギエナとイェッドは仕事がほとんどなかった。
「……レ、レイラ、凄いんじゃまいかっ!あたしらはお仕事なっしんぐ」
「急がないといけないから……」
「んだねっ、すっすめぇ~」
レイラの真剣な眼差しにギエナは両手斧を改めて構え、詠唱しているギエナを守った。
しかし、イェッドはレイラをじっと見つめたままで剣もぶら下がったままだった。それをポリマは茶化した。
「どうしたのよ、出番無しでだらけてるの?あんたは役立たずって言ったでしょ?」
「……」
ポリマは冗談を言ったつもりだったが、イェッドは真顔のままだった。
「ちょっとっ!何か言いなさいよっ!」
「レイラの魔力が大きすぎる……」
意外な事を言われてポリマは眉をひそめた。
「はぁ?そうかしら?いつも通りだと思うけど」
「毎回、強くなっているけど、今回は特別に大きい……」
「気にしすぎよ。サダクが心配なんでしょ?……あなた昨日から少しおかしいわよ?」
「サダクも気になるんだ……」
「サダクも?何でよ」
「彼の念能力も大きすぎる……。巨大な岩を動かしていたけど、あんなに大きなものは動かせなかった」
「二人して強くなっているってこと?良いことじゃない、愛の力よっ!」
自分の知っている愛とは異なる事にイェッドは違和感を覚えた。
「あ、愛……愛ねぇ……。恋愛の愛でしょ?それでここまで強くなれるのかい?」
「なるんじゃない?現にそうだし……」
「この星から……、いや、太陽から力が流れているかもしれない……。ともかく、魂の器を超える力が注ぎすぎると制御出来なくなる……」
レイラが連発する魔法を後ろから二人で見ていたが、ポリマはイェッドの言葉がオーバーすぎないかと思った。
「二人がお父様の力と同調しているということ……?それなら尚更良いことじゃない」
「……」
しかし、イェッドは黙ったままだった。
「ハァ~、何を心配しているのよ。考えすぎよ」
「(そうだと良いけど……)」
イェッドは小さな声でそう言った。
「ん?何か言った?」
「いいや……、急ごう」
「やっぱり変よ……あなた……」
前衛のサダク抜きパーティーだったが敵う敵はいなく、彼の残した足跡に沿って進んでいった。
ナ あなたの
ネ 身
ロ 体に
・
カ 光が
レ 降り注ぎ
・
テ 血液と
ケ 筋力に
・
ノ 合わさり強化せん




