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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の二:サダク編:キュンキュンブーメラン
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サダクビア・スアリ・エクア その8

 レイラに包まれていた俺はいつの間にか眠ってしまったらしい。

 しかし、翌朝、とんでもない奴の訪問で目が覚めた。


「サダクぅ、おはよぅ」


「ん……、あ、朝か……って、ポポ、ポリマッ!?何でお前が居るんだよっ!!」


 あろうことかポリマが俺のベッドの上に座っていた。しかも上半身はブラだけだった。


「そんなこと言わないでぇ、会いたくなっちゃったのぉ」


「な、何言って……。そ、それより、ふ、服を着ろぉぉぉっ!!!……公園の時といい、今といい、お前は何なんだよっ!!」


「やだぁ、つれないのね」


「はぁ~……ったく……、あ"っ」


 しかも、最悪のタイミングでレイラが扉を開けた。


「お~い、サダクッ!起きろ~。エジテクさんが朝ご飯作ってくれたよ~。開けるね」


 俺はこの時のレイラの顔を二度と忘れないだろう。


「ポ、ポリマッ!?……あ、あんた達っ!何やってるのよっ!」


「レイラッ!な、なんでっ!?」


 徐々に真っ赤になっていくレイラの顔は、驚きとも怒りとも思えない表情だった。何故か分からなかったが髪の毛も逆立っていった。


「何でじゃないっ!あんたを起こしに来たのよっ!!」


 俺の言い訳なんてレイラの耳には入る余地も無く、あっという間に魔法で凍らせられた。何とか念力で氷を壊したが、三ツ目が開いてなかったら死んでいたかもしれない……。


 一階に急いで降りたがレイラの怒りは収まってなくて、今度は爆発魔法を唱え始めた。あの時、エジテクさんが押さえなかったら、家が無くなっていただろう……。


 てか、イェッドとギエナまでやって来やがって、何食わぬ顔で朝食を取ってやがった。ほっとにこいつらには呆れた。もしかして、三人はグルなんじゃないかとさえ思った。


 エジテクさんに挨拶して学校に帰ることになったんだが、帰り際までポリマは俺にまとわりつきやがった。

 うざったかったので俺はレイラと付き合うと宣言した。


「ポリマ、俺はレイラと付き合うことにしたんだ。もう止めてくれ」


 ……のだが、俺は何を言ってしまったのかと恥ずかしくなった。


「サダク……」


「あら、二人は付き合うことにしたのね。でも、サダク、あの夜の思い出はどうすればいいのかしら?」


「な、なんだよ、その思い出ってっ!!んなのないぞ、レイラッ!大体、種族間の恋愛なんてあり得ないんだからな」


 レイラが急に押し黙ってしまった。また、怒ったのかと俺は冷や汗が流れた。


「ふふふっ!何か考え込んでいて怖い、怖い。凍らされる前に離れないと駄目ね」


 そう言うとポリマは俺から離れて、イェッドとギエナと一緒になって俺達の後ろを歩いた。まぁ、それはどうでも良いのだが、三ツ目の能力で三人の話が聞こえていた。しかし、その内容は意味不明だった。実験女とかお父様とか進まないとか……、一体、どういう話だ?


 その後、レイラはしおらしなって、俺にくっついてきた。これは付き合うってのはOKって事だよな?とはいえ、恐るべし禍族……。俺は二度とレイラを怒らせないと誓った。あれ?俺はこいつを愛してる?恐れてる?まぁ、いいか。この暖かさがあればどうでも良い。


----- * ----- * ----- 


 その日の放課後、寮に戻ってから鏡で自分の三ツ目を確認した。

 親父よりも青い色をしていると分かった。そのためか、念力は強く、自分の三倍の岩も動かせた。


 剣技の授業ではキノスラが俺の剣の素振りを見つめていた。また何か言われるのかと身構えていたら思ってもいないことを言われた。


「迷いが消えたな……」


「三ツ目のせいかもな」


「違うな……。剣筋がぶれなくなった……。腕に迷いが無くなったのだ……」


「……そ、そうかよ」


「その調子でやれば良い……」


 何でもお見通しかよ。相変わらず油断できない奴だ。


----- * ----- * -----


 レイラもあの日以来、魔力が貯まるようになって強力な魔法を使えるようになった。とんでもない爆発音が聞こえたらあいつの魔法だ。それに伴ってあいつを恐れる奴らが多くなった。


 よくわからんが、あいつをモデルにした禍人形を作った奴がいた。初めて見たときは吹いてしまったが、どういう仕組みか分からんが、この人形の前で喧嘩が始まると眼が光った。その光を見ると魔族達は恐れて喧嘩を止めちまう。


 恐るべし、レイラ人形……ぷっ、駄目だ。見る度に笑っちまう。


----- * ----- * -----


 また、それからしばらくして弟から手紙が届いた。


┌───────────────────┐

│兄さん、ダビが……して、お父さんも  │

│……戻って来て            │

└───────────────────┘


 手紙は赤い血が染みついていて所々読めなかった。

 何があったのだろうか……。弟に問題が起こっているのは確実だった。俺はいても立ってもいられず寮を後にして、そのまま国を目指した。


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