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異端を狩る者の詩は誰も歌わない  作者: 大嶋コウジ
ワールド弐の二:サダク編:キュンキュンブーメラン
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サダクビア・スアリ・エクア その6

 俺はイェッドの助言を参考にして、ある日、レイラを依頼に誘うことにした。

 剣技授業の専攻と魔術授業の専攻とで授業が分かれるようにもなっていた。その日は剣技の授業も無く、素振りをしながらあいつが掲示板に向かうのを中庭で待ち続けた。


「あっ!サダク」


「……レイ……、んだよ、ギエナか」


「あたしで悪かったなぁっ!……まぁ、それは良いとして君はまだ素振りをやってたのかいな?かれこれ数時間はやってないかい?」


「う、うっせぇな」


 そいえば朝一でギエナに見つかったのを思い出した。


「レイラを待ってるのかいな」


「ち、ちげぇ……」


「ふ~ん、ニヤニヤ……。魔術授業が終わる頃だからもうすぐじゃまいか?」


「……そ、そうかっ!」


「はぁ~、嬉しそうな顔をしてからに。分かりやすいな君は」


「ちっ、あっちいけって」


「あぁ、イタタタタァ……」


「ど、どうしたんだ、急にお腹を押さえて」


「……サダク君、あたしは掲示板でレイラと待ち合わせてるんだよ」


「そ、それがどうした」


 くそ、今日は無理か?


「すまんが、お腹が痛くなったから一緒にバイトは出来ないって伝えまいんか?」


 出た、アラクネ語……。伝えろって言ったのか。


「は、はぁ?何で俺が」


「その方が都合が良いんじゃまいか?……じゃないか……へ、へへへ~、ニヤニヤ……。あぁぁぁ、イタタタタァ……、う~ん、どうしたんだろうなぁ……。んじゃねぇ……ニヤニヤ」


「お、おう……。お大事に……」


 お腹が痛いと言いながら変な笑い方をしてギエナは何処かに行った。気持ち悪い奴だ。

 んで、しばらくすると、ギエナの言った通り、レイラが通りかかった。


「お、おい、レイラ」


 声を掛けるのは普段と変わらないはずなのに、心臓がバクついてすげ~緊張した。国民達の前で始めて挨拶した時よりも緊張した。んだよ、これって思った。


「な、なあに?」


「い、一緒に魔物退治に行かないか……。北西部の森でトレント退治って依頼だ……。お、お、お前的には、"ばいと"だっけか……」


 "ばいと"って言ってみたのはレイラに合わせるためだ。ギエナもそう言ってたな。まぁ、意味なんて分かってない。


「いつ?」


「こ、これからだよ」


「フムアルとかシェラとかイェッドは?」


「い、いないよ」


 くそっ!んで、そんな事を聞くんだよ。俺だけじゃイヤだってのかよ!


「二人だけ?私はポンコツ魔道士だよ?」


「お、おれが守ってやるから大丈夫だ」


 安心しろ、分かってるぞ。魔法回復薬をがぶ飲みしてゲロを吐くに決まっている。水だけは大量に用意しておいた。


「ふ~ん……」


 正直言うと、二人で行動するのを躊躇するレイラを見て弱気になり始めていた。


「んだよ、駄目か?い、忙しいなら、ま、また別の時に……」


「いいよ~」


「おっ!!おぉ、そうかっ!!」


 だからさ、一緒に行くって言ってもらってすげ~嬉しかった。素振りの速度が1.5倍ぐらいになった。後で思ったが、これはデートだなって。デートって、こういうもんなのか?


「ちょっと待ってね。魔法回復薬を買ってくるから。この杖があっても油断できないからね」


「おう、北の校門で待ってるっ!」


「そうだ、ギエナに伝えないと」


「あいつは急にお腹が痛くなったって言ってたぜ?」


「そうなの?ふ~ん、分かった」


----- * ----- * -----


 依頼は、トレントを脅して逃がすだけのすぐ終わるような内容だった。

 実際、俺が剣を振れば勝手にトレントは逃げていった。レイラも魔法回復薬を飲む必要も無く、変な杖を振り回すだけで問題なかった。


 しかし、アルラウネが出て来て状況が一変した。こいつが依頼主の子どもを食べたと言った時は寒気が走った。一時はどうなるかと思ったが、レイラを守らねばと強く思った時、どういうわけか俺の三ツ目が開いた。俺は親父がやっていた剣に念を込めて振り下ろして風圧で敵を切る風切でアルラウネを真っ二つに切り裂いた。レイラも何故か魔力が貯まるようになったのか、教師しか使えないような強力な魔法でアルラウネを燃やした。


 結局、レイラはゲロを吐きまくってトレントはその匂いで散っていった。レイラは洗脳が解かれたとか言ってたが、みな気持ち悪そうな顔をしていたから違うと思うし、実際、すげ~臭かった……。だが、本当に変だと思ったが、ゲロを吐いているこいつを見て嫌気が指すどころが可愛いとさえ思ってしまった。守ってやらねぇとと思ったし、俺はレイラが好きなんだと確信した。


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