エジテクさんに怒られる
そのまま扉を思いっ切り閉めて部屋に戻るとさっさと着替えた。そのまま帰ろうとしたけど、エジテクさんが作ってくれた食事を思うと無碍にも出来ず、一階に降りて食卓に着こうとした……んだけど、またも訳の分からない状況……。
「レイラ~ッ!おはよ~っ!おいしいぞ」
「おはよう」
食卓には、ギエナとイェッドが居た。……私は転びそうになった。
「あ、あなた達どうしているのよっ!!!」
「あぁ~……、なんだっけ。そ、その二人が気になったというか……、どうしようかと」
イェッドがなにか話そうとしたけど、ギエナがすぐに遮った。
「君はしゃべるでな~いっ!雑魚ジム演技なんだからっ!」
「えっ?!ジ、ジム……、ゴミじゃなかった?言ってて悲しくなった……」
「ともかく、話すなってことっ!」
「……グスン」
私は何を見せられているんだろう……。
「レイラ、二人が戻ってこないから探してくれって寮長から言われたんだぞっ!」
「そうそう、そんな感じだった……、ギエナ、睨まないで」
イェッドは変な感じだったけど、確かにギエナの言った通りだったかもしれない。寮に戻れないことを寮長に伝えられなかったから。
「そうだったの……。もしかしてポリマも?」
「そだよ。サダクを起こしに行ったけど……、あぁ、うん……、あたしはこれ以上何も言えん……」
そしたら慌てるようにサダクが降りてきた。あの氷はどうしたんだ?
「レイラ、違うんだっ!!聞いて……、ギエナとイェッド?お前たちなんで居るんだよ……。じゃないっ!レイラ、こいつが勝手に入ってきたんだっ!」
シャツのボタンがズレてるし、ズボンのチャックも閉まってないで何を言っているんだ、こいつは。
「さっきも聞いたわよっ!知らないっ!」
そしたら、しれっとサダクの後ろにポリマがいて、こっちを流し目で見ていた。
「私は起こしに行っただけよ?レイラさん、ふふふっ」
その不敵な笑いはなんなんだ~!
「起こしに行っただけ?は、半分、裸だったでしょっ!!!」
「あら、そうだったかしら?」
目線を逸らしながら言うなぁぁ!人を小馬鹿にしおって!
プチプチプチ……
「あぁ~、エロインのエロエロでレイラが激おこだぁぁ、イェッド何とかして」
「は、はぁ?ぼ、僕?ギエナ、都合が良いところだけ出番を作るなんて酷い……」
私はもう頭に血が昇って、我を忘れてまた呪文を詠唱し始めていた。
<< ワ・ア・ル…… >>
「レ、レイラ、お、俺が悪かった……。ま、魔法は止めてくれっ!!」
ところが魔法を唱えている途中、エジテクさんが大声を上げた。
「レイラッ!止めなさいっ!!!」
「はっ、はいっ!!!!」
凄く声で身体に響くような低い声……私はビックリして詠唱を止めた。みんなも声を失った。でも、すぐにいつもの優しい声に戻った。
「何があったのか知らないが学校の友達だろう?仲間を傷つけるのは良くない事だ」
「はい……シュン」
その時、エジテクさんは自分の息子の映像を見つめた。そうか、亡くなっていなかったら私達と同じぐらいだった?
「さぁ、みんな座りなさい」
その声に従うように席に着いたけど、みんな黙ってしまっていた。
でも、私はサダクのだらしない格好が気になって仕方が無かった。
「サダク……」
「お、おう……」
「シャツとズボンのチャックをどうにかしてっ!」
「あっ!」
なんとも言えない緊張感があったけど、私の指摘が面白かったのか、みんな苦笑してやがて大きな笑い声に包まれた。
「ぷっ!あははははっ!」
「あははっ!」
「ふふふっ!」
そんな私達をニコニコしながらエジテクさんは見つめていた。急に学生が増えて五人になってしまったけど、エジテクさんは怒りもせず、朝食を追加で用意してくれた。
「さぁ、食べなさい。これから学校なのだろう?」
この農地で取れた小麦もどきで作ったパンと飼育している牛もどきから搾ったミルクは美味しかった~。




